【Vol.75】5.途上国におけるインクルーシブインシュアランスの動向

主任研究員 林 勝己

I.はじめに

インクルーシブインシュアランスは保険が十分に提供されていない市場を対象とした保険であり、経済活動を促し、経済的に不安定な状況を軽減するものである。途上国においては金融包摂の進展とともに、モバイルテクノロジー・マネーの発展と普及が原動力となって、インクルーシブインシュアランスを普及させる取組が進められている。

II.金融包摂

途上国では国家金融包摂戦略を策定し、金融サービスのアクセス改善に向けて様々な政策に取り組んでいる。近年ではモバイルテクノロジーの発達と普及により、銀行口座の非所有者がモバイルマネーを通じて金融サービスを利用できるようになった。

III.インクルーシブインシュアランス市場の概況

インクルーシブインシュアランスの市場規模は約20億ドルとされ、今後も高い成長が見込まれる。大手保険会社は、コンソーシアムの構成やInsurTech企業への出資などを通じて市場へ参入している。

IV.市場・保険の特徴

インクルーシブインシュアランス市場では低廉な保険料だけでなく、利用者の金融リテラシー・経験の乏しさに対応した商品性や販売網が必要とされる。移動体通信事業者を通じて加入するモバイルインシュアランスは、加入から保険金受取まで携帯端末で行えることで、今まで保険にアクセスできなかった層に低コストで保険が提供でき、規模を拡大している。

V.おわりに

インクルーシブインシュアランスの人口カバー率は10%を下回るものの、金融包摂に関する各国の様々な政策やモバイルマネーの普及の後押しを受けて保険が普及しつつある。一方で契約者保護等にかかわる問題も生じており、監督者・事業者が市場の発展に応じた役割を果たしていくことが求められる。

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