【Vol.84】世帯の小規模化から見た空き家動向

副主任研究員 宮本 万理子、上席研究員 岡田 豊

I.はじめに

世帯の小規模化が住宅事情に与える影響として、空き家の大量発生が挙げられる。一方、全国の住宅 (約 6,240 万戸)は、総世帯数(約 5,400 万戸)を上回り、量的には充足しているにも関わらず増加し 続け、住宅循環を停滞させる。本稿では、世帯の小規模化に着目し、空き家が増加する背景を考察する。

II.人口・世帯と住宅動向

過去 20 年間で、人口は都道府県ごとに増減が見られるものの、世帯数は増えている。その原因とし て 3 世代世帯から核家族世帯、単独世帯へと移行する世帯の小規模化がある。高齢単独世帯の増加は、 空き家の増加に繋がる一方で、新設住宅の増加は、中年単独世帯の増加が要因のひとつになっている。

III.世帯の小規模化と住宅動向

東京圏都心部である東京都は、少子高齢化や未婚化を背景に中高年単独世帯が増加している。一方、 大阪圏近郊部にある和歌山県は夫婦と子どもからなる世帯が多いが、今後、東京都に遅れて単独世帯が 最も多くなる。高齢者が保有する築古の一戸建ては、中年単独世帯の需要に合わないことから、両者の ミスマッチが起き、空き家化が進展しているものと思われる。

IV.単独世帯の居住地特性

世田谷区(太子堂)において、高齢単独世帯の多くが有する築古の木造一戸建ては質的課題があり、 中年単独世帯向けの新設住宅に置き換わることが推察される。一方、和歌山市(中心市街地)において、 高齢単独世帯が多く住んでいる中心エリアの築古の一戸建ては更新が難しく、中年単独世帯だけでなく 子育て世帯のニーズの需要に合致しない。このことが、住宅循環の停滞をもたらすものと思われる。

V.まとめ

世帯の小規模化は、大都市圏都心部とその近郊において空き家の大量発生と新設住宅の建設を促進し ている。このような現象は、世田谷区(太子堂)、和歌山市(中心市街地)の両地区内に万遍なく分布し ており、空き家の撤去や居住地誘導による集約化が今後求められるだろう。

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