【Vol.81】1.国境を越えるデータ 〜グローバルとローカルのせめぎ合い〜

フェロー 隅山 正敏

I.はじめに

国境の概念のない「データの行き来」において国境を人為的に設ける動きがある。

II.データ移転を意識させたLINE問題

LINE事案は「外国にデータを移すこと」と「国内データに外国アクセスを許すこと」に対する懸念を明らかにした。特にガバメントアクセス(現地政府のデータ入手)が危惧された。

Ⅲ.国境を越えるデータの現状

個人ではネット利用者が発信側に回り、企業では製造業のサービス化やデジタル・トランスフォーメーションがデータの行き来を増やす。個人・企業のみならずモノ(IoT)もデータを生み出す。これらがもたらす経済成長や社会的課題の解決を最大化するためには「自由な行き来」が重要である。

Ⅳ.欧米のデータを巡る対立

欧米間では個人データを欧州から米国に移すプラットフォームが問題となった。個人データが国境を越えるとプライバシーを保護できないため、切れ目なく政策目的(プライバシー保護)を実現するためにデータに「国境」を設ける必要があるが、それは「貿易摩擦」をもたらすことにもなる。

Ⅴ.米中のデータを巡る対立

米中間では企業データ(企業秘密)を米国から中国に移すことが問題になった。矢面に立たされたのは政府との一体化を疑われた中国企業である。米国は中国へのデータ流出を阻止する(自国企業防衛)ために、中国は国内秩序を維持する(国家安全保障)ために、データに「国境」を設ける。

Ⅵ.国際間のデータを巡る対立

デジタル貿易を阻害する各国規制の撤廃や最小化を図る貿易交渉が行われている。データの移転や処理において「国境」を設ける規制の外に、デジタル商材の取扱いが争点になっている。

Ⅶ.おわりに

データを最大限に活用するためには「国境を越えた自由な行き来」が望ましい。他方で、データの行き来が国内規制に穴を開ける場合に、各国は「国境」を設ける。「国境」をなくすことは困難であり、それを「低くする」努力が、国にとっても企業にとっても現実的な対応となる。

PDF書類をご覧いただくには、Adobe Readerが必要です。
右のアイコンをクリックしAcrobet(R) Readerをダウンロードしてください。

TOPへ戻る