【Vol.81】3.企業価値に影響を与えはじめた自然資本 ~カーボンクレジットの活用と規制リスクへの備え~

主任研究員 大沢 泰男

Ⅰ.はじめに

自然資本はこれまで十分に理解されてこなかったが、その喪失は社会全体に甚大な影響を及ぼす可能性が指摘されている。企業経営の目線で考えると、自然資本の活用は価値創造の源泉でもあり、リスクにもなりうる。これからの企業価値を考えるうえで、自然資本の重要性が増してきている。

Ⅱ.自然資本と企業の関係

自然資本は動物や植物、水、土壌といったストック的な要素を持ち、社会に対して便益を与えるものと定義される。世界のGDPの約半分は自然資本に依存しているとされており、企業活動への影響も大きい。企業価値を評価するために、企業に多くの情報開示が求められる中、まずは自社の自然資本との関係を把握し、今後どのように活用していくか検討する必要がある。

Ⅲ.企業による自然資本の活用例

AmazonやAppleといった本業では自然と縁の薄い企業においても、自然資本に投資し、活用をはじめている。また、NestleやGSKは原材料などで自然資本に依存しているが、サプライチェーンに対する規制リスクや持続可能な原材料の確保に向けて、自然資本の保護・保全に動いている。

Ⅳ.自然資本と企業価値の展望

企業が自然資本に投資し、カーボンクレジットを獲得することは、企業価値を維持し、高めるうえでも現実的な手段となる。また、自然資本に対する規制強化の影響を最小化し、持続可能な原材料調達を目指すため、自然資本の保護・保全も重要となる。そして、自然資本の重要性が増すにつれて、その評価方法について、関係者の納得感の高める方法が求められている。

Ⅴ.おわりに

持続可能な社会を目指す中では、自然資本が企業価値に影響を与える要素になりつつあると、認識を改める必要がある。社会から必要とされる企業として評価され、企業価値を高めていくためにも、まずは自社の自然資本との関わりを把握し、迅速な行動をとることが肝要である。

PDF書類をご覧いただくには、Adobe Readerが必要です。
右のアイコンをクリックしAcrobet(R) Readerをダウンロードしてください。

TOPへ戻る