【Vol.82】5.気候変動の自然科学的根拠はこの20年でどう変化したか ~これまでのIPCC評価報告書を量的テキスト分析で比較する~

上席研究員 小林 郁雄

Ⅰ.はじめに

IPCCによる評価報告書は世界の気候変動政策の道標となってきた。数次にわたるこれまでの報告書の比較分析を通じて、気候変動に関する科学的根拠の時流変化の一端を明らかにできれば、政策の現在地と今後の行方を知ることに役立つ。本稿では量的テキスト分析の方法を用いて報告書の分析を試みる。

Ⅱ.IPCC評価報告書の概要と形態素解析

気候変動の自然科学的根拠を扱うIPCC・WG1の政策決定者向け要約(SPM)のうち、直近の約20年間に作成された4つのSPMについて形態素解析を行い、単語の出現頻度を分析した。

Ⅲ.頻出語から変化を読む

4つのSPMから頻出語を抽出して、ワードクラウドと共起ネットワークを作成し、各SPMの内容を視覚的に表現した。その結果をもとに、SPMの内容変化を分析した。

Ⅳ.専門用語から変化を読む

4つのSPMから専門用語を抽出して、各SPMでの出現パターンを分析し、気候変動研究の時流変化を読み取る手がかりとして専門用語の分類を行った。その結果をもとに、SPMの内容変化を分析した。

Ⅴ.可能性や確信度の表現から変化を読む

IPCCによる評価報告書の特徴でもある可能性や確信度に関する統一的な表現を抽出して、各SPMでの表現の数や評価ランクの数量からSPMの内容変化を分析した。また、可能性や確信度に関する評価結果の中からSPM間で評価ランクを比較可能なものを抽出して、SPMの内容変化を分析した。

Ⅵ.まとめ

量的テキスト分析による視覚的な表現や数量変化の分析により、自然科学的な不確実性が全体として低減していることを裏付ける結果が得られるとともに、研究の停滞を示唆する結果も得られた。このような分析は、企業をはじめとした専門家以外にも、気候変動対応への理解と予見性向上に資する情報になると考えられ、企業等が先見性の高い合理的な気候変動対応を進めていく上で役立つ可能性がある。

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