【Vol.82】6.労働移動の円滑化に向けて ~労働移動に関する論点整理と「出向起業」の可能性~

主任研究員 今岡 植

Ⅰ.はじめに

ポストコロナに向けて、労働政策をこれまでの雇用維持の支援から新たな段階に移行する必要性が生じていることや、物価高が進行する中で賃上げにつながる労働市場改革の重要性が改めて認識されたことを背景に、「労働移動の円滑化」に関心が高まっている。

Ⅱ.日本の労働移動の現状

データより、日本の労働移動の水準が過去横ばい圏内で推移してきたこと、一般労働者の方がパートタイム労働者に比べて労働移動が少ないこと、40~59歳において労働移動が少ないこと、大企業において労働移動が少ないこと、先進国対比で日本の労働移動の円滑度は低いことが確認できる。

Ⅲ.日本型雇用システムの本質・特性

先行研究を基に、日本型雇用システムが形成されてきた背景について明らかにする。その本質は、ジョブではなくメンバーシップに基づいて労使の関係が構築されているため、内部労働市場が雇用調整の中心的な役割を果たしてきたことにある。

Ⅳ.労働移動の円滑化の効果・課題・政策

労働移動の円滑化は、生産性の高い産業への労働投入を通じてマクロでの生産性向上に資することが複数の分析から指摘されている。ただし、円滑化に向けては、ポスト・人材に関する情報が不足しているなど様々な課題がある。これに対し政府は、2022年10月に労働政策のパッケージを取りまとめた。情報の可視化に向けたプラットフォーム整備など有効な取組も含まれるが、欧州のような産業・職種別コミュニティ形成を促進するための政策も検討する必要があろう。

Ⅴ.出向起業について

出向起業は、労働移動の少ない日本において、身分や収入など社員のセーフティネットを確保しながら、イノベーション人材を起業へと後押しする画期的な仕組みであり、今後の広がりが期待される。

PDF書類をご覧いただくには、Adobe Readerが必要です。
右のアイコンをクリックしAcrobet(R) Readerをダウンロードしてください。

TOPへ戻る