保険・金融・デジタルテクノロジー

組込型金融と決済領域における新たな動向 (Buy Now,Pay Later・クレジットカード発行)

主任研究員 廣岡 知

近年、金融サービスの提供方法や主体が大きく変化してきている。アンバンドル化された金融サービスがシームレスにまとめて提供され、組込型金融と呼ばれている。組込型金融により決済領域が大きく拡大すると見られており、米国ではBNPLやクレジットカード発行プラットフォーマーなど注目される動きが出現している。金融機関にとってみると、GAFA等巨大IT企業の金融サービス参入に続き、Fintechとどう向き合うかということと言える。Fintechとの提携に積極的な銀行もおり、収益力が増すというデータもある。否定的な面だけではなく、新たな可能性とも捉えることができ、ますます注目される。

1.はじめに

Fintechの勃興、クラウドやAPIの活用により、近年、金融サービスの提供方法や主体が大きく変化してきている。2019年には、GAFA等の巨大IT企業が大手金融機関と提携する形で、相次いで金融サービスに参入した1。ここで起きていることは、銀行機能のアンバンドル化であり、Fintechや巨大IT企業といった既に顧客接点を持っているプレイヤーが銀行機能をBaaS(Banking as a Service)として提供することである。ユーザーにとってみると、あたかもアンバンドルされた金融サービスがシームレスに、まとめて提供されることから、Embedded Finance(組込型金融)と呼ばれるようになってきた。

Embedded Financeにより、金融サービスの中でも決済関連の市場が大きく拡大すると予測されている。本稿では、決済関連で注目する動向として、ユーザー向け(BtoC)のサービスの中からBNPLを、事業者向け(BtoB)のサービスの中からクレジットカード発行プラットフォーマーを紹介する。特にBNPLに関しては、直近、米国におけるAmazonとAffirmの提携、SquareのAfterpay買収、日本におけるPayPalのPaidy買収と立て続けに大きな動きがあり、注目を集めている。併せて、こうした動きをどのように見ればいいかをまとめる。

2.BNPL

(1)BNPLとは、広がる背景

BNPLとはBuy Now, Pay Laterの略称で、後払い決済のことを指す。主にECを中心に活用されている新たな支払い手法で、ここ数年、欧米を中心に市場が拡大してきた。グローバルには2020年で910億ドル、2030年には3.98兆ドルに拡大すると予測されている2。コロナ禍でのオンライン、EC拡大が大きく寄与している。

米国では、BNPLは若年層の利用をきっかけに注目を集めており、若年層のトレンド・嗜好が背景にある。若年層の多くは学生ローンを抱え、十分な信用力がないため、3割しかクレジットカードを持っていない。また、若年層は米国で一般的なリボ払いによる手数料を支払いたくないと考えている3。このほか、若年層は銀行を信頼しておらず、幼い頃から様々なウェブサービスを利用し優れた顧客体験に慣れており、従来型の金融機関のサービスを敬遠していることも挙げられる。

(出典)Morning Consult, “How ‘Buy Now, Pay Later’ Consumers Differ From Credit Card Users”

若年層を中心に広がったが、ミレニアル世代4にも広がりを見せており、また、後払いという特性上、低所得者層を中心に利用されている(図表1)。

(2)利用方法、クレジットカードとの違い

ユーザーはEC等での決済時に、外部事業者(BNPL事業者)が提供するBNPLを支払い方法として選択する(支払い画面で、BNPL事業者のサービスが組み込まれている)。一般的なBNPLは4回払いであり、初回は購入時に、以降の残回数は等間隔で、IDと紐づけられた銀行口座やデビットカードから決済される。

(出典)オーストラリア準備銀行を元にSOMPO未来研作成

クレジットカードとの違いは、BNPLでは原則としてユーザーに利息や手数料等(支払い遅延の手数料を除く)が課されない点にある(図表2)。与信審査もクレジットカードほど厳しくなく、信用力が低くとも、少額からの利用が可能となっている。従来のクレジットカードは、ユーザーの勤務先や年齢、性別、年収、居住地等の情報を元に、信用力を測り、FICOスコアと呼ばれるクレジットスコアで過去の支払い状況、遅延の有無に関するデータから、金利を提示してきた。BNPLの場合、こうしたデータではなく、現在の利用状況や購買情報から判断し、最初は少額ではあるが徐々に利用可能額を引き上げていく。

一方、事業者にとってみると、BNPLの手数料は3~6%とクレジットカード(2.5%程度)よりも高く設定されている5。高い手数料率を払ってまで導入する理由として、ユーザーからの支持以外に、ユーザーが新規顧客の場合、クレジットカード情報の入力と比べ、BNPLは入力項目が少なく離脱防止、成約率が上がることが挙げられる。また、BNPL事業者は膨大な顧客データ、トランザクションデータを蓄積しており、どの顧客がどの商品を購入しているかを把握、こうしたデータを小売事業者に提供している6。小売事業者は、BNPLによって収集されたデータを、在庫管理やマーケティングに使える点が魅力的とも推測される。

(3)主なプレイヤー、金融機関の動向

米国における主なプレイヤーは、BNPL専業のAffirm、Afterpay、Klarnaで、2021年第1Qのアプリダウンロード数ではこの3社で約8割を占める。上記以外にも様々な新興事業者が出現しているほか、VISAやMasterCardといったクレジットカード、PayPal、CitiやJ.P.Morgan、Barclaysといった大手金融機関も相次いで参入しており、競争が激化している。大手金融機関は、発行するクレジットカードにBNPLの機能を追加したり、BNPL事業者と提携したりと提供手法はまちまちであるが、決済全体に占めるボリュームが2%に過ぎないBNPLを脅威と認識しているというよりも、ユーザー獲得・タッチポイント収集の新たな手段として魅力的に感じている7

3.クレジットカード発行プラットフォーマー

(1)サービス概要、仕組み

クレジットカードの発行に関するサービスを提供する事業者(発行プラットフォーマー)も出現してきている。従来は、イシュアと呼ばれる銀行等の発行事業者が介在し、会員の募集、カードの発行、利用額の引き落とし及び利用状況管理、不正利用監視等を行っていた。企業がクレジットカードを発行するには、こうしたイシュアに委託する必要があった。

プラットフォーマーとしてMarqetaがおり、クレジットカード発行の民主化を謳い、企業が容易かつシンプルにクレジットカードを発行できることを目指している12。MarqetaはAPIにより、提携企業のシステムに組み込む形で、カード発行・利用管理・決済機能をパッケージ化したサービスを提供している(図表3)。クレジットカードは物理・バーチャルの双方に対応しており、提携企業は自社ユーザー向けに、ニーズに合ったクレジットカードを発行できる。VISAとMasterCard等のクレジットカードネットワーク13とも連携しており、ユーザーの利用額を引き落とす。2021年3月末時点で、Marqetaは3.2億枚のクレジットカード発行を支援してきている。

(出典)Marqeta S-1にSOMPO未来研加筆

主な提携企業としては、UberやSquareが挙げられる。例えば、Uberはユーザー向けとドライバー向けのそれぞれにクレジットカードを発行している。ユーザーは、発行されたカードでライドシェアの代金を支払い、また、Uberは発行したカードを通してドライバーにライドシェアの報酬を支払う。Uberは一連の決済における金額の一部を手数料としてMarqetaに支払う。Marqetaの収益は、決済金額による従量課金であり、トランザクションが増えるほど、収益が増す。

(2)マーケット等への影響

MarqetaはBNPL事業者のAffirmとも提携14しており、BNPL拡大の一助となっている。

発行プラットフォーマーとしては、Marqeta以外には事業者はおらず、まだまだ途上の動きと言える。理由としては、クレジットカードネットワーク及び銀行等のイシュアとの提携・関係性構築が重要であり、プレイヤーが限られることも一つ挙げられる。

決済の裏方における動向であり、今後どのような影響があるかは未知数と言える。

4.金融サービスのあり方の更なる変化

巨大IT企業の金融サービス参入では、銀行と提携することで金融インフラを活用、銀行側としてもプラットフォームの有効性に着目していた。上述の動きは、Fintechが新しい・顧客のニーズにあったサービスや機能を開発し、支持を集め、顧客接点を有するプレイヤー及び銀行と提携、両者の間にたち、新たな機能をシステムとして媒介する役割といえる(図表4)。顧客接点を有するプレイヤーはシステムを開発する必要がなく、様々な金融サービスを自社のサービスに組み込み、あたかも一体として一連のサービス体験が提供可能となる。AmazonとAffirmの提携に見られるように、巨大ITでもこうした機能は自前ではなく、各分野で特化しているFintechを活用する必要がある。

(出典)各種資料を元にSOMPO未来研作成

米国では、異業種への銀行機能提供に活路を見出す銀行も増えてきている。Fintech等との提携銀行は、2017年の13行から、2020年には30行超にのぼっている15。Green dot(1999年設立)はいち早く、銀行機能のみの提供を開始してきた。支店網を持たず、約9万の小売店とのネットワークを構築し、プリペイドカードの発行や口座管理サービスの提供していた。Walmartとの提携をきっかけに、顧客接点を持つプラットフォーマーへの決済アプリケーションの基盤構築を行っている。このほか、Cross River Bank(2008年設立、BNPLで上述のAffirmが提携)は、2010年よりパートナシップ路線を進んでおり、15のオンライン融資事業者と提携を行っている。

こうした銀行においても、網羅的に金融インフラのサービスを提供するわけではなく、様々な特徴があり、商業銀行に強みのある銀行もあれば、融資業務に強みのある銀行もある16。また、こうした銀行の収益力は、通常の銀行の2~3倍と高いというデータもある17。銀行の生き残り策として、大きな可能性を秘めている。

5.さいごに

金融サービスを取り巻く状況は、ここ数年で激変している。今後もFintechは次々に勃興し、新たなサービスが提供され続けていく一方で、銀行はライセンスが必要であり、次々と勃興するわけではなく、事業者の数も限られる。競争環境という意味で異なると言え、銀行に求められる機能も、Fintechのように移り変わりがあるものではなく、金融インフラの堅牢性・セキュリティ・迅速性等の根幹は変化しない。

銀行にとってみると、プラットフォーマーまたはFintechと提携する、プラットフォーマーとFintechの双方と提携する等、様々な選択肢があり得る。そのためには、APIを構築・開放し、クラウドを含めたデジタル化の取組が前提であり、その上で最終ユーザーを意識しながら、提携先に合致したサービス・機能を提供できるかがカギとなり、柔軟な対応が求められる。戦略次第で、銀行には収益力向上の余地があり、また、各行の勝ち残りをかけた動きが見られる。

金融サービスにおいて、どのようなサービス・機能が、どのようなプレイヤーに提供されていくのか、また、それに対して銀行はどのように提携、機能提供していくのか、ますます目が離せない。

  • SOMPO未来研トピックス 2020 Vol.7「巨大IT企業参入で加速する銀行業務のアンバンドル化」
  • Allied Market Research, “Buy Now Pay Later Market Outlook – 2030”
  • 2021年3月の米国18歳以上の消費者2,000人を対象とした調査では、BNPLを使う理由として、「予算以上の買い物ができる」(45%)、「クレジットカードのように金利が発生しない」(36.9%)、「審査なしで利用できる」(24.7%)となっている。
  • 1980年から1995年の間に生まれた世代
  • “How Banks Can Ride the BNPL Trend”, Aug 24, 2021
  • AfterpayはAfterpayiQと呼ばれる新しい分析プラットフォームを立ち上げている。AIを活用し、人口統計・チャネル・実店舗の場所・その他のパラメータによって小売事業者の業務を分析し、売り上げと収益性の向上に向けた具体的な洞察を生み出すことを目的としている。
  • “Why financial institutions want their share of Buy Now, Pay Later transactions”, Feb 1, 2021
  • “The ‘buy now, pay later’ trend could be the next hidden source of consumer debt, analysts warn”, Aug 10, 2021
  • “72% of Americans saw their credit scores drop after missing a ‘buy now, pay later’ payment, survey finds”, Feb 8,2021ある調査によれば、支払い遅延したユーザーの72%がクレジットスコアが下がったとの結果となっている。
  • “Buy Now Pay Later regulation imminent: ‘FCA very keen to be on front foot’”, Oct 20, 2021
  • “Nascent BNPL Sector Faces Old Challenges”, Apr 28, 2021
  • Marqeta S-1
  • VISAとMasterCardが同社に出資している。
  • Affirmは BNPL専用のカードを発行しており、利用額の管理や引き落とし等の一連の業務をMarqetaが担っている。
  • Andreessen Horowitz, “The Partner Bank Boom”
  • 同上
  • 同上

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