企画・公共政策

子育て期の働く女性に重い家事負担
~家事支援サービス利用の普及に向けて~

上席研究員 宇田 香織

我が国では家事の外部化はあまり進んでおらず、子育て期の働く女性を中心に家事の負担感が強い。今後の女性活躍推進に向けては、産前産後期に限らない、子育て期を通じた家事負担の軽減が必要である。
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1.はじめに

女性の労働参加が進み、第1子出産後も就業継続する女性は増加している。しかし、「男性は仕事」「女性は家庭」という価値観が根強く残る我が国において、子育て期の女性は、従来通りの家事・育児に加え、仕事でも活躍を求められ、その強い負担感から離職をせざるを得ない状況に追い込まれることも少なくない。出産・育児を機とした望まない離職を防止し、多様な人材が充実感を持ち働き続けることができる社会を実現するためには、家事支援サービス利用の普及がひとつの鍵となる。本稿では、家庭における家事の現状を確認するとともに、家事支援サービス利用の普及に向けた課題やその方策について検討したい。

2.重い家事負担

(1)根強く残る性別役割分担

我が国においては、有償労働時間が男性、無償労働時間が女性に大きく偏るなど1、依然として固定的な性別役割分担が残っている。2021年時点での、6歳未満の子供を持つ妻・夫の家事関連時間の分担割合を見ると、妻が専業主婦の場合は家事関連時間の84.0%(567分/週)、共働きであっても77.4%(391分/週) を妻が担っている2

また、生活時間の国際比較を行うと、我が国は、諸外国に比べて男性の無償労働時間は極めて短く3、無償労働の多くを女性が担っており、このことが女性の社会での活躍を阻害する一因であると指摘されている。

(2)子どものいる共働き世帯が家事に負担感

経済産業省が、20代~40代の既婚者を対象に世帯状況別に家事の負担感を調査したところ、特に、子どもがいる共働き世帯で家事の負担感が強い。

(3)家事が仕事に負の影響

35歳~54歳の就業者を対象に「家庭役割」と「仕事役割」の両立が困難となる事象の発生頻度について尋ねたところでは、30代後半及び40代前半の女性で「家庭から仕事への負の影響」が相対的に強く認識される傾向がある4。正社員の女性が子の育児等で離職したケースでは、「仕事を続けたかったが両立が難しかったため」という理由が最も多い5。家事や育児といった「家庭役割」と「仕事役割」の両立が困難になった結果、離職を選択せざるを得ない女性が少なくない。

3.家事支援サービスの普及に向けて

(1)家事の外部化のニーズ

家事の負担軽減を図るには、家事の外部化が一つの鍵になる。我が国では、家事の外部化はあまり進んでいないが、外部サービスを利用したいと考える層は一定数いる(図表3)。

既にサービスを利用している人は、利用した結果、「家事負担が軽減した」と感じるだけでなく、「プライベートの時間を確保できるようになった」「(自身や家族に)精神的な余裕が生まれた」といった効果も実感しており6、今後も継続して利用したいと考える人が多い。

(2) 利用拡大に価格の壁

近年、家事支援サービス業市場は、共働き世帯の増加等を受けた需要の増加を見込み、参入企業数は増加を続けている。しかし、現状では、価格が高いことが大きな障壁となり(図表4)、利用率は横ばいであり、業界としては、リピート需要の獲得や新規利用者の獲得が業界全体の課題となっている7

経済産業省が実施したアンケート調査8では、家事支援サービスの利用者が、同サービスにかける費用は1回あたり9000円以上との回答が約半数を占めた。価格が高い理由としては、家事支援サービス事業者の営業スタッフがサービス提供前に、利用者宅を訪問して行うコミュニケーションに、相応のコストがかかることが挙げられる。

(3)利用促進に向けた企業の動き

一部に、こうした家事支援サービスの利用促進に向けた動きもみられる。社員に子育て世代が多い企業等では、人材の定着を図る観点から、福利厚生サービスとして、社員が利用する家事支援サービスにかかる費用を助成する事例がある。サービスを導入した企業では、社員が低価格もしくは無料で家事支援サービスを利用できる。社員や家族の家事負担の軽減を通じて、社員のストレスが減り心身に余裕ができたことで、仕事にポジティブな影響があると評価する声も聞かれる。

4.政府の取組

行政による既存の家事支援事業としては、通常は1時間あたり3000円以上する家事支援サービスを1000円程度で利用できるよう、自治体が支援を行っている例がある。但し、これらの事業は産前産後の育児支援の一環として実施していることが多く、対象は3歳未満の子どもを育てる世帯に限定されていることが専らである。

政府は、「経済財政運営と改革の基本方針2023(令和5年6月閣議決定)」において、女性活躍を推進すべく「家事支援サービス利用の普及」を謳っている。昨秋に閣議決定した「デフレ完全脱却のための総合経済対策」(令和5年11月閣議決定)においても、家事負担が働き方の制約となっている従業員に対し、福利厚生として、家事支援サービス利用の機会を提供する事業者の取組を後押しすることを掲げ、令和5年度補正予算において「ライフステージを支えるサービス導入実証等事業」として事業費を計上している。

5.今後に向けて

多様な人材が育児・家事と仕事を両立しつつ働き続けるためには、産前産後の育児支援に限定することなく、子育て期を通じて育児・家事の負担軽減を図ることが肝要であることから、政府の取組は意義のあるものと言える。ただし、事業実施に当たっては、非正規社員は正規社員と同様の福利厚生が利用できないケースがあることに留意が必要である。家事支援サービスのニーズは、正規同様、非正規にも存在する。補正予算で措置された事業は、単発の予算事業であり、モデル事業的なものとならざるを得ないが、非正規の利活用や、女性のみならず男性の利用を促す等、モデル事業としてメッセージ性のある力強い取組としてほしい。

家事支援サービスを手がける事業者の中には、サービス提供前のユーザーとのコミュニケーションをDX化することにより、サービスの品質は担保しつつ、1回あたりのサービス利用にかかる費用を低く抑える取組もみられる。

福利厚生サービス等を通じたユーザーの増加や、家事支援サービスを提供する事業者の新たな取組によって、サービスを利用しやすい環境が整備されることで、多様な人材が充実感を持ち働き続けることができる社会の実現につながることを期待したい。

  • 有償労働時間は「仕事」「通勤」等の時間の合計、無償労働時間は「日常の家事」「買物」「世帯員ケア」等の時間の合計。
  • 総務省「社会生活基本調査」による。「家事関連」は、「家事」、「介護・看護」、「育児」及び「買い物」の合計。
  • 内閣府「男女共同参画白書」(令和5年版)による。OECDの生活時間の国際比較データを元に、北米、欧州、北欧、アジアの11か国を比較すると、日本の男性の無償労働時間は、北米・北欧の男性の3分の1以下であり、突出して短い。
  • 2023年12月労働政策研究・研修機構 個人パネル調査「仕事と生活、健康に関する調査」による。「家庭から仕事への負の影響」は、「家庭内の問題によって仕事に専念できる時間が減ることがある」等の項目に対する回答をスコア化し評価。
  • 厚生労働省「令和4年度 仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」仕事と育児等の両立支援に関するアンケート調査報告書による。
  • 経済産業省「令和4年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業報告書」による。
  • 矢野経済研究所「2022 生活支援サービスに関する消費者アンケート調査」による。
  • 出典は図表4と同様。

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