ネイチャーポジティブと自然関連リスク対応のギャップは埋まるか~自然・生物多様性の測定・予測における課題と新展開~
こうした中、Nature Positive Initiative は 2025年1月、自然・生物多様性の統一的な測定指標「State of Nature Metrics」の試行版を公表し、5月から検証作業を開始した。測定段階でのギャップ解消が期待される一方、遺伝的多様性や生態系サービスの指標化がスコープ外となっているなど課題もみられる。
さらに、2025年4月には国立環境研究所などが、生物群集組成の変化をエネルギー地形解析により予測する新たな手法を発表した。長期の観測データが乏しい場合でも、ある時点のデータから将来の状態を予測できる特徴があり、予測段階でのギャップを埋める技術的なブレークスルーとなる可能性を秘めている。
はじめに
本稿では、ネイチャーポジティブの実現に向けた企業の自然関連リスク対応に焦点を当て、以下の3つの視点から検討を行う。
- 「1.ネイチャーポジティブ実現に向けた自然関連リスク対応の現状と課題」では、ネイチャーポジティブという目標と、企業における自然関連リスク対応との間に存在するギャップに着目し、その解消に向けた主要な課題を整理する。
- 「2. 自然・生物多様性の測定指標統一化に向けた動き」では、自然・生物多様性の「測定」段階における課題に対応する動きとして、国際的な測定指標の整備(State of Nature Metrics)に関する動向と、今後の課題を概観する。
- 「3.自然・生物多様性の新たな予測技術」では、「予測」段階におけるブレークスルーとして期待される新たな技術的アプローチ(エネルギー地形解析の生物多様性への応用)を紹介し、その可能性と今後の展望について述べる。
1.ネイチャーポジティブ実現に向けた自然関連リスク対応の現状と課題
(1)高まるネイチャーポジティブへの期待
世界経済フォーラム(WEF)によれば1、「生物多様性の喪失と生態系の崩壊」は、今後10年間におけるグローバルリスクの第2位に位置付けられ(第1位は「異常気象」)、自然資本の損失が社会経済活動に深刻な影響を与えるとの認識が定着しつつある2。自然資本への直接的な依存が小さい企業であっても、サプライチェーンを通じた間接的な依存を考慮すれば、国内外の自然関連リスクと無縁ではいられない。
生物多様性条約に基づき2022年に採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」では、2030年までに生物多様性の減少傾向を食い止めるだけでなく回復軌道に乗せるという、野心的な目標「ネイチャーポジティブ(自然再興)」が掲げられた。
ネイチャーポジティブは、自然関連リスクへの対応のみならず、新たなビジネス機会の創出という観点からも注目されている。日本では、ネイチャーポジティブ経済への移行により、2030年時点で年間47兆円規模のビジネス機会が創出されるとの推計もある3。実際、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)アダプター数4は、2025年3月時点で543社に達し、そのうち日本企業は世界最多の147社を占める5など、国内企業の関心も高まっている。
ネイチャーポジティブへの期待は、自然資本や生態系との直接的な関わりが強い企業で特に高い。一方で、ネイチャーポジティブには、カーボンニュートラル(CN)やサーキュラーエコノミー(CE)といった他の主要な環境目標と比べて、幅広い企業が注目すべき特徴がある《図表1》。

図表1は、これら3つの環境目標を、①環境へのインパクトの方向性(ネガティブ要素の抑制/ポジティブ要素の創出)、②社会的視点・地域性(グローバルサウスの積極的な関与・役割/先進国主導、地域特異性の大小など)という2つの評価軸から整理したものである。これをみると、ネイチャーポジティブでは、自然の再生や生物多様性の回復といったポジティブな側面をもつ取り組みが多くある。また、グローバルサウスが単に被害者という立場にとどまらず、生態系の管理者や資源国として積極的な役割を担う点において、他の環境目標とは異なる特徴をもつ。これは、リスクと機会の両面で、CNやCEとは異なるアプローチが可能なことを意味しており、企業による戦略的な自然リスク対応と価値創出に向けた視点の1つとなる。
(2)ネイチャーポジティブと実際の自然関連リスク対応とのギャップ
通常、事業活動に伴う環境リスクへの対応は、次のようなプロセスを経ることが多い。
- プロセス1:現状把握
環境の状態を測定・把握する
- プロセス2:目標設定
望ましい環境の状態を明確にし、目標として設定する
- プロセス3:計画
目標達成に向けた取り組みによって環境がどのように変化するかを予測し、必要な行動を計画する
- プロセス4:実行・評価・改善
取り組みを実施し、その進捗(アウトプット)と環境の変化(アウトカム)を測定・評価して、必要に応じて改善する
ネイチャーポジティブを掲げる取り組みの場合も、形式的にはこれらのプロセスに沿ったものとなっているが、後述するとおり、実際には本質的に異なるアプローチが採られる場合が多い。
その背景にあるのは、企業の怠慢や不誠実さではない。自然・生物多様性の状態を正確に測定・把握し、変化を予測するための実用的かつ標準的な方法が確立されていないという、技術的な制約である。
①技術的な制約を生む主な要因
こうした技術的な制約には、自然・生物多様性の特性に関わる2つの要因が関わっている。
1つめは、自然・生物多様性が扱う空間スケールが極めて広いことである。生物多様性は、生態系の多様性、種の多様性、遺伝的多様性という3つのレベルを用いて語られることが多い6《図表2》。このことは、測定対象となる多様性のスケールが、マクロスケール(生態系)からナノスケール(遺伝子)まで、非常に幅広いことを意味する。スケールが異なれば、当然ながら測定手法も異なり、統一的な測定手法の確立は困難になる。また、異なる手法で得られたデータは単純に比較できないため、複数の測定手法があれば測定精度が向上するとは限らない。
2つめは、自然・生物多様性には多面性があることである。生物多様性は、構造的観点(形態的・空間的な構造の違い)や機能的観点(生態系内での役割や他の生物等との関係性の違い)から定義されることもある《図表2》。近年では、生物多様性がもたらす生態系サービスやその経済的価値といった観点、さらには生態系サービスに代わるものとしてNature’s Contributions to People(NCP)7という概念も重視されている。どの視点を採るかによって自然・生物多様性の評価軸が異なり、それに応じて測定方法も変わってくる。

このように、自然・生物多様性の捉え方自体が多様であることが、測定や把握を困難なものとし、技術的な制約を生む要因となっている。
以下では、こうした背景を踏まえ、ネイチャーポジティブの理念と実際の企業による自然関連リスク対応との間にあるギャップを、具体的に整理する。
②自然・生物多様性の測定におけるギャップ
ネイチャーポジティブは、「自然の状態を好転させる」という概念であり、その実現には、上記のプロセス1(現状把握)、プロセス2(目標設定)、プロセス4(実行・評価・改善)において、自然の状態を正確に測定・把握することが前提となる。
しかし、前述のとおり、実用的かつ標準的な測定方法は確立されていない。このため、多くの企業の取り組みでは、自然の状態そのものではなく、いわゆるアウトプット指標に基づいて現状把握や目標設定が行われている。
たとえば、地下水という自然資本(TNFD開示提言では「環境資産」という概念に相当する)の場合、企業は事業所での取水量や揚水量を指標として現状を把握し、それらの削減量や削減率(アウトプット)を目標として設定することが多い。一方、それらの取り組みが地域の地下水賦存量や水質の再生・回復にどのように、どの程度寄与するか(アウトカム)を示している事例は限られている8。
森林生態系に関しても、社有地内の森林管理面積や植栽本数などを指標(アウトプット指標に該当する場合が多い9)とする事例は多いが、当該地点での種の多様性(アルファ多様性)や、当該地点と周辺地域との間の種の多様性(ベータ多様性)、地域全体での種の多様性(ガンマ多様性)といったアウトカム指標への貢献度を明示した事例は少ない。
なお、自然・生物多様性の測定・把握の難易度は、それをどう捉えるか、どの評価軸を採るかによって異なる。図表2に示した分類を例にすると、生態系の多様性はマクロスケールで観察できる場合が多く、景観としても識別しやすいため、種の多様性や遺伝的多様性と比べて測定しやすい。同様に、構造的観点からの多様性も、空間構造や形態が測定の指標になるという点で、機能的観点の場合に比べて測定が容易である。このため、生態系の多様性や構造的観点からの多様性では、測定技術に関する技術的課題よりも、どのような指標を採用するかが論点となりやすい。
③自然・生物多様性の予測におけるギャップ
プロセス3に関しても、理念と実態の間にはギャップがある。繰り返しになるが、企業の取り組みによって自然・生物多様性の状態が将来にわたり、どのように変化するかを予測できる技術は確立されていない。したがって、仮に自然・生物多様性の状態を正確に測定できたとしても、目標達成に必要な取り組みを精緻に設計することは難しい。このため、実際の対応はどうしても試行錯誤を伴うものとなり、「実行してみないと、どれだけの成果があるかわからない」という要素を払拭することは難しい。
さらに深刻なのは、ある種の取り組みが、意図せずに他の生物や生態系にネガティブな影響を及ぼしかねない点である。たとえば、ある絶滅危惧種の生息域拡大を目指す取り組みが、結果として他の種や生態系の衰退をまねくようなケースも起こり得る。この意味において、予測におけるギャップは、測定におけるギャップ以上に深刻な問題となる。
本論の主題からやや逸れてしまうが、生物多様性クレジットの信頼性確保がカーボンクレジットに比べて格段に難しいとされるのも、こうした背景がある。
生物多様性クレジットについては、
- 自然・生物多様性の測定・把握の難しさ(上述②)
- 共通単位の欠如(カーボンクレジットには二酸化炭素換算重量などの共通した単位がある)
- 代替性10や追加性11の検証の難しさ
が課題として指摘されることが多い。しかし、将来の効果や成果を事前に高い精度で予測できないことが、より本質的な問題だと考えられる。なぜならば、このことは「将来の成果を事前に価値化する」という、クレジットが備えるべき信頼性の要件を満たしていない可能性の存在を意味するからである。
(3)企業活動を通じたネイチャーポジティブの実現に向けた課題
ここまで述べてきたように、現状把握や目標設定には、植栽面積や樹種数、水資源や鉱物資源の使用削減量など、取り組みそのものを示すアウトプット指標が用いられているケースが多い。一方で、取り組みによって生じる自然・生物多様性の変化(アウトカム)を明示した事例は限られている。
このような状況は、気候変動対策に例えるなら、温室効果ガスの排出量や削減目標を明示しないまま、冷房温度の調整温度やグリーン調達の拡大率を設定して、取り組みを進めている姿に近いともいえる。森林による二酸化炭素吸収量を予測しないまま、植栽面積のみを指標として掲げるような、表面的な取り組みにとどまるリスクもある。
こうしたギャップは、企業による取り組みに限らず、国単位の取り組みにも共通する。たとえば、昆明・モントリオール生物多様性枠組は、2030年までに各国が陸と海の30%以上を保全するという「30 by 30」を2030年のターゲットに掲げている。これは、ネイチャーポジティブの実現の鍵を握る目標の1つだが、アウトプット目標に該当し、アウトカムとはいえない。また、同枠組の進捗評価のためのモニタリング指標の体系も、生物多様性の回復状況(アウトカム)だけでなく、アウトプット指標を含めた選択的な構成となっている12。
以上のような現状を踏まえると、企業活動を通じたネイチャーポジティブの実現を確かなものとする上で、次の技術的課題の克服が不可欠である。
- 課題①:自然・生物多様性の状態を実用的かつ標準的に測定・把握できる方法の確立
- 課題②:取り組みによって生じる自然・生物多様性の変化を予測する技術の確立
このうち課題①については、TNFDをはじめとする自然関連情報開示の枠組みの普及を背景に、社会実装を見据えた国際的な取り組みが進展しつつある。次項ではその動向と今後の課題を整理する。
一方の課題②については、古くから学術的な研究対象として数多くの研究が行われてきたものの、現実の自然に広く適用できる実用的な知見・技術は確立されていない。そうした中、2025年4月30日に、国立環境研究所と理化学研究所から注目すべき研究成果が発表された13。次々項では、その概要と活用の可能性について紹介する。
2.自然・生物多様性の測定指標統一化に向けた動き:State of Nature Metrics
自然・生物多様性の測定・把握のための指標には、数は限られるものの、すでに国際的に確立されているものもある。それらは昆明・モントリオール生物多様性枠組のグローバルレビューにおいて活用が予定されており14、代表例として、Living Planet Index(LPI)や Biodiversity Intactness Index(BII)15などがある。LPIを例にすると、5,495種の脊椎動物(両生類、鳥類、魚類、哺乳類、爬虫類)における約3万5,000の個体群の長期的変動を指数化し、生物群集の相対的な個体数の変化と現状を定量的に示す指標となっている16。ただし、LPIは特定の地域と個体群を継続的に観測することで有用性が発揮される指標であり、企業の取り組みに直接活用できるケースは限られる。
また、近年では現地調査による生態学的なデータに加えて、リモートセンシングによって間接的に推定される生態学的指標もある。さらに、生態学的データと気候・土地利用等の空間情報を組み合わせ、特定の生物種の分布域や分布可能性を推定する手法(たとえば、生物種分布モデル17:Species Distribution Models (SDM))など、さまざまな技術の開発も進んでいる。上述したとおり、一部の先進的な企業による自然関連リスク対応では、こうした技術が積極的に活用されつつあるものの、コスト面や新たな技術・指標の乱立といった課題もあり、自然・生物多様性の状態を測定・把握する手法や指標の標準化には至っていない。
(1)State of Nature Metricsの概要
こうした状況の中、Nature Positive Initiative(NPI)は、2025年1月、State of Nature Metrics の試行用(for Piloting)のドラフトを発表した18。NPIは、ネイチャーポジティブの定義や指標の統一化、ツールや事例の共有を目的に、IUCN(国際自然保護連合)やTNFDなどの様々な団体や企業が連携して設立された組織である。
State of Nature Metricsは、自然・生物多様性の状態に関する統一的な指標を目指して、NPIが中心となり2024年から開発が進められてきたものである。NPIは、指標開発の背景として、これまで提案されてきた自然・生物多様性の状態に関する指標が600種類を超えており、それらが組織の意思決定や資源配分に異なる影響を与えるという状況が続けば、ネイチャーポジティブの進展が妨げられてしまうと説明している。
State of Nature Metrics は、TNFD19、GRI、SBTNなどの主要な情報開示・目標設定フレームワークへの将来的な反映を意図して設計されており、今回のドラフトは、陸域の自然・生物多様性を対象としたものとなっている(海洋と淡水系に関する指標は別途作成中)。
図表3に、NPIの公表資料20 21をもとに、State of Nature Metrics(試行用)の全体像を整理した。なお、現段階は試行用という位置付けのため、ネイチャーポジティブの評価や主張には使用しないよう注意喚起されている。すでに2025年5月から11月までの予定で、32カ国の30以上の企業や金融機関による実用性の検証作業が開始されており、その後の最終版の作成に続き、TNFDなどのフレームワークでの採用に向けた準備が2026年に整う見通しとされている22。

図表3をみると、指標体系はシンプルな構造となっており、測定項目にも、特に目新しい内容や測定に困難が伴うものはみられない。追加指標を適用すべき条件(図表には示していないが、優先すべき生態系や集約的土地利用バイオームに該当する要件がいくつか提示されている)に該当しない場合、適用されるのは4つの共通指標のみとなり、企業にとっての実用性と導入のしやすさが重視されていることがうかがわれる。
今後、各フレームワークへの採用が進めば、企業の規模を問わない広範な活用が期待でき、1(2)で示したプロセス1(現状把握)、プロセス2(目標設定)、プロセス4(実行・評価・改善)に関する信頼性の向上を通じて、自然・生物多様性の状態の測定・把握におけるギャップの解消につながることが期待される。
(2)ドラフトに関する今後の課題
今回のドラフトは、企業での活用を前提に簡潔さが追求された点において画期的である一方、実務面や企業ニーズの高度化を見据えると、以下の3点が課題として挙げられる。
①指標の利便性と信頼性の両立が今後の課題
今回示された指標体系では、簡便性が重視された結果、各指標や測定項目の定義・内容に解釈の余地が大きい。たとえば図表3に示した共通指標のうち「生態系の範囲」では、面積の増減をha単位で示すことになるが、ここでの「生態系」とはどのようなスケールが望ましいのか、どのような生態系の区分や粒度が求められるのかは明示されていない。「生態系」といっても、微生物生態系や土壌生態系などと、森林生態系や海洋生態系ではスケールが全く異なる。同じ「森林生態系」でも、熱帯林、熱帯常緑広葉樹林、アマゾン熱帯常緑広葉樹林などのように、分類の粒度にはさまざま階層がある。また、共通指標の1つである「サイトの状態」についても、対象とする地点や状態区分、データソースや測定手法などは具体的に示されていない。
したがって、指標の簡便性の確保と、信頼性の担保が両立するかどうかは、今後作成されるガイダンスに委ねられる部分が大きいといえる。
NPIは、試行版のドラフト公表の2か月後(2025年3月)に、4つの共通指標に関する詳細な補足を加えており23、その内容が今後のガイダンスのベースになるとみられる。図表3の最下段に、その一部を共通指標の詳細として整理したが、こちらについても解釈の余地が大きい表現が含まれている。すでに情報開示に先進的に取り組んできた企業の場合は別だが、そのような経験が少ない企業にとっては、解釈の余地の大きさが、かえって利便性を損なう原因となる懸念もある。
現在行われている検証作業を通じて、測定結果の比較可能性をはじめとした信頼性の担保と、企業にとっての利便性とのバランスが保たれるような、指標の改善とガイダンスの内容が期待される。
②生物多様性のスケールの広さや多面性が十分にカバーされていないこと
今回のドラフトでは、追加指標を含めた9つの指標のうち7つが「生態系の多様性」に関する指標となっており、「種の多様性」については、追加指標を含めて2つの指標にとどまっている。さらに、「遺伝的多様性」に関しては、実用的で広範に使える測定方法が整備されていないとの理由から、対象外となっている。
また、State of Nature Metricsのフレームワーク自体が、構造的観点(形態的・空間的な構造の違い)を中心に設計されており、生態系内での役割や関係性といった機能的観点に基づく多様性については、指標や測定項目となっていない。
このような案となった背景には、測定のコストやデータの入手しやすさといった実用性への配慮があったとも想像されるが、生物多様性のスケールの広さや多面性と比べると、今回の指標が対応する生物多様性の範囲は一部に過ぎない。
上記①の課題に比べて解決には時間を要するが、生物多様性の空間スケールや多面性に応じた、多様な企業の取り組みを阻害することにならないよう、種の多様性や遺伝的多様性に関する指標の追加や、生物多様性の機能的観点を考慮した指標体系の見直しが中長期的な課題として求められる。
③自然のプロセスや生態系サービスが指標化のスコープ外となっていること
水循環や栄養塩の循環、土壌形成などの自然のプロセス(natural processes)については、地下水かん養の効果検証に向けた地下水流動シミュレーションによる精緻な評価の取り組み事例24がある。生態系サービスについても、森林がもたらす生態系サービスの経済価値を定量化し、情報開示に取り組んだ事例25がある。
自然のプロセスは生物多様性の「生産工程」にあたり、生態系サービスは生物多様性の生む「付加価値」に相当する。いずれも、企業にとってビジネス機会の創出と結びつきが強く、これらを指標体系に組み込むことは、企業による自然リスク対応の幅を広げ、ポジティブインパクトを可視化する意味で有用性が高い。
このように、自然のプロセスや生態系サービスの見える化・指標化に対するニーズはすでに存在するだけでなく、目標設定や情報開示の実務における有用性を踏まえると、今後のニーズの高まりが見込まれる。
しかしながら、今回のドラフトでは、この領域の指標化は作業スコープ外という位置付けとなっている。上記②と同様に中長期的な課題ではあるが、指標の乱立や恣意的な指標の選定によるグリーンウォッシュを抑制する意味でも、自然のプロセスや生態系サービスを対象にした指標の統一化・標準化に向けた取り組みが望まれる。
3.自然・生物多様性の新たな予測技術:エネルギー地形解析の生物多様性への応用
自然・生物多様性の予測に関して決め手となる技術が待たれる中、国立環境研究所と理化学研究所が公表した研究成果26(以下、「今回の研究」という)が注目される。エネルギー地形解析という、あまり耳慣れない方法が用いられており、プレスリリース自体は平易な文章で書かれているものの、学術的な研究成果ということもあり、内容を理解するためのハードルは低くない。
そこで、次節にて自然・生物多様性の変化を予測する方法の全体像を説明した上で、今回の研究成果を、エネルギー地形解析の概要とともに紹介し、ネイチャーポジティブ実現に向けた意義について言及したい。
(1)自然・生物多様性の予測における科学的アプローチとは
①予測のための3つのアプローチ
自然・生物多様性の「変化」というと、「時間的な変化」のことが真っ先に頭に浮かぶが、場所ごとに自然・生物多様性が違っていることを「空間的な変化」ということもできる。以降の説明では、特に断らない限り、「変化」には「時間的な変化」と「空間的な変化」の両方を含むものとする。
この場合、自然・生物多様性の変化の予測には、大まかに3つのアプローチがある《図表4》。

理論型の予測では、自然・生物多様性が変化する仕組みを数式で表現する(この数式のことをモデルと呼ぶ)。モデルが観測結果をうまく再現できる場合、それを用いて予測を行う。最大の特徴は、理論に基づいて予測を行う点であり、理屈の上では観測データがなくてもモデルを構築できる場合がある。
統計型の予測では、自然・生物多様性の状態と、環境条件(気候の温暖さや湿潤さ、土地利用の違いなど)との関係を統計的に推定する(一般的に統計モデルと呼ばれる)。モデルに、環境条件の観測データを入力し、自然・生物多様性の観測結果に近い推定値が得られる場合、それを用いて予測を行う。この場合、十分な観測データの存在が前提となる。
学習型の予測では、自然・生物多様性の状態や環境条件に加え、一見無関係にみえるさまざまなデータも含めて、予測に使える特徴や規則性を大量のデータから抽出・学習する(AIモデルなどと呼ばれる)。モデルに検証用の観測データを入力し、自然・生物多様性の状態を高い精度で再現できる場合、それを用いて予測を行う。この場合も統計型の場合と同じく、十分な観測データの存在が前提となる。
②3つの予測アプローチの特徴
次に示すとおり、アプローチごとにモデル化の対象は異なる。
- 理論型の予測は「その結果をもたらす原因」をモデル化する
- 統計型の予測は「その結果が生じやすい条件」をモデル化する
- 学習型の予測は「その結果を最も高い確率で当てるためのデータの使い方」をモデル化する
また、各アプローチにおける観測データの役割は、次のように整理できる。
- 理論型の予測では、観測データは主にモデルの「検証」に用いる
- 統計型の予測では、観測データは主にモデルの「構築」に用い、「予測」の条件入力にも用いる
- 学習型の予測では、観測データはモデルの「構築」「検証」「予測」の全段階で活用される
さらに、各アプローチには次に示すような明確な特徴がある。
- 理論型の予測は、根本的なメカニズムを記述するモデルであるため、モデル構築は難しい反面、将来の予測や地理的に異なる地域にも適用できる可能性がある
- 統計型の予測は、観測データ(経験的データ)に基づいてモデルが構築されるため、中長期の予測への適用や、観測データの得られていない条件下での適用には一般的に限界がある※ほか、クラスター分析のような手法では結果の解釈が難しいこともある
※統計型のモデルでも、「生物種分布モデル: Species Distribution Model (SDM)」では、気候シナリオのような将来の環境条件を説明変数にあてはめることによって、特定の生物種の将来の生息域などを予測することが可能27。
- 学習型の予測は、得られた結果の理由や背景の解釈が難しい面はあるものの、学習に用いたデータが十分に広範かつ大量であれば、将来の予測や、観測データに含まれていない地点・条件下の推定にも適用できる可能性がある
③「理論型の予測」の代表例とその限界
今回紹介する「エネルギー地形解析」という手法は、上述の分類では、理論型の予測に該当する(実際の解析では、統計型の予測で使われる統計学的な手法も活用されるため、正確には統計型とのハイブリッドといえるかもしれない)。
次節にて、エネルギー地形解析の特徴や従来の方法にはない利点を紹介するが、その前に、同じ理論型の予測の中でも従来から数多く研究されてきた、「数理モデル」の特徴についてふれておきたい。
一般に、生物の個体数の変化は、他の生物との関係(捕食-被食など)や気候・土地利用といった環境条件に左右される。このため、ある生物の個体数などが、他の生物や環境条件との関わりの中で変化する仕組みを数式で表現したいわゆる「数理モデル」が、古くから研究されてきた。
その中でも、生物種間の捕食-被食関係だけをモデル化した、最もシンプルで基礎的な数理モデルがロトカ・ボルテラモデルである《図表5》。

手法の概要については図表5を参照願うが、このモデルに関して重要なことは、わずか2種類の生物種の個体数の変化を予測するために、たくさんの観測データや実験データが必要になることである。式に含まれる4つのパラメーターの値を決めるには、観測や実験が必要になる。加えて、作成した数理モデルが現実を再現できるか検証するためにも、個体数の観測データが欠かせない。
さらに、現実の自然は、このモデルで表現されるような、異なる生物種間の捕食-被食関係だけで決まるものではなく、種内での生存競争や、気候等の自然条件、土地利用履歴などの人為的な環境要因による影響も受ける。それらの要因をすべて数式で表現することは難しく、仮にできたとしても、たくさんのパラメーターの値を決めること、モデルの有効性を検証すること、そのために膨大な観測データを揃えることのいずれにも、相当な労力と困難が伴う。
すなわち、数理モデルの場合、自然・生物多様性の変化の仕組みを精緻にモデル化するほど、それを用いた予測が困難になるという、ある種ジレンマが実用化を妨げる要因となってきた。
(2)エネルギー地形解析とは
「エネルギー地形解析」(エネルギーランドスケープ解析とも呼ばれる)は、元々物理学や脳科学の分野で発展してきた手法である。たくさんの構成要素(たとえば脳内の神経細胞)がそれぞれ異なる状態をとると、その組み合わせは膨大な数になり※、データとして非常に複雑で扱いにくいもの(空間的・時間的に多次元なデータ)になってしまう。そのようなデータは、そのままでは図やグラフを使って可視化することが難しく、異なる組み合わせの間に潜む関係性やパターンを分析することすら難しい。エネルギー地形解析では、そのような膨大な組み合わせの中で、どの組み合わせが安定して現れやすいかを明らかにすることができる28 29。
※物理学分野での例:たくさんの電子がある中で、個々の電子をみると上向きか下向きかのどちらかのスピンの向きを持っているが、電子ごとのスピンの向きの組み合わせには、膨大な数のパターンがある。
※脳科学分野での例:たくさんの神経細胞がある中で、個々のニューロンは発火か非発火のどちらかの状態にあるが、ニューロンごとの発火/非発火の状態の組み合わせには、膨大な数のパターンがある。
この手法の特徴は主に次の2点であり、複雑な状態やパターンの可視化・分析に活用されてきた。
- 多数の状態や構成要素の組み合わせに対して、それぞれの出現しやすさ(安定性)を「エネルギー※」と呼ばれる指標で表現・推定する点(エネルギーが低いほど出現頻度が高く、安定した状態とみなされる)
※ここでの「エネルギー」とは、運動エネルギーや位置エネルギーのような物理学的なエネルギーのことではなく、ある状態の出現のしやすさを数値化して、状態の安定性や頻度を示す指標である。
- 推定されたエネルギーの値を地形の高低差になぞらえて可視化することによって、状態の安定性や、ある状態から別の状態への遷移のしやすさなどの情報を、直感的に捉えることができる点(それぞれの組み合わせ同士の複雑な関係性や遷移の可能性を視覚的に理解しやすくなる)
近年になり、従来の手法では扱うことができなかった環境因子を含めた解析ができるよう手法が拡張され、微生物の群集組成(複数の生物種の組み合わせ)の安定性を評価するための応用が可能になるなど30、生態学分野への応用が広がっている。
この手法は、複数で多様な生態系にも適用できる柔軟性と拡張性があり、長期的な観測データがそろっていない場合でも、ある時点のデータ(スナップショットデータ)を用いて解析できるという、(1)で示した従来の数理モデルにはあまり見られない特徴を備えている。
エネルギー地形のイメージを図表6に示したので、手法の詳細はそちらを参照願う。エネルギー地形は、実際の地形のように3次元上の曲面として立体的に表現することもできるが、この図では横軸に生物群集の組成をとり、縦軸に推定されたエネルギーの大きさをとって、エネルギー地形を曲線で表現している。

ここで、ある地点における生物群集の組成は、特定の生物種がいる場合に1、いない場合に0とするなど、生物種ごとに1か0のどちらかの値を与え、それを生物種ごとに繰り返して、たとえば、1101001…のような、1か0の数字の羅列(バイナリーデータと呼ばれる)で表すことができる。仮に、モデル化する生物群集を構成する種が2種だとした場合、生物群集の組成には、00、01、11、10という4通りの組み合わせがありうる。この2種の生物を数多くの地点で観測すると、観測される頻度が大きい組成(たとえば01)とそうでない組成(たとえば11)がみられるはずである。この場合、前者(01)の組成はエネルギーが低く、安定した状態であると評価され(図6では状態Aや状態Cに相当)、後者(11)の組成はエネルギーが高く、不安定な状態であると評価される(図6では状態Bに相当)。
生物群集を構成する種が少なければ、それほど複雑に感じないが、生物群集の構成種をN種だとすると、群集組成の組み合わせは2N 通りあることになる。たとえば、構成種を15種とした場合の群集組成の組み合わせは3万通り以上という膨大なものとなる。
(3)今回の研究成果の特徴とネイチャーポジティブへの貢献について
①今回の研究成果の特徴と新たな予測手法の強み
今回の研究の最大の成果は、「エネルギー地形解析」という手法を、これまでに有効性が確認されていた微生物群集に限らず、より幅広い生物群集に適用して、実際の群集組成がエネルギー地形の「高低」に沿って変化する傾向にあることを明らかにした点である。このことは、図表6の下段に示した仮説が、今回の研究対象となった鳥類、淡水魚類、淡水貝類、植物プランクトンなど、多様な生態系でも成り立つことを意味している。
図表7には、実際の生物群集組成データから推定されたエネルギー地形の例を示す。図表6に示すように、ある環境条件下での実際の群集組成をもとに推定したエネルギーは、曲線で表現することができる。これを異なる環境条件ごとに繰り返すことで、複数の異なるエネルギーの曲線が得られることになる。最終的に、それらの曲線を環境条件の変化に沿って並べて、それらの間を補間すると、図表7のように、エネルギーを高低のある曲面として描くことができる。

この手法には、少なくとも2つの強みがある。
はじめに、利用可能なデータが増えるほど、エネルギー地形の推定精度が向上する点である。近年では、環境DNA31やリモートセンシングなど、さまざまなスケールで生物多様性を観測する技術が進展している。従来の手法による観測データに、新たな技術により得られるデータが加わることで、本手法による解析精度の着実な向上が期待される。
もう1つの強みは、長期の観測データが乏しい場合でも、群集組成に関する十分なデータがあれば、推定されたエネルギー地形から、将来の状態を予測できる可能性が高い点である。これは、長期の観測データが前提となる統計型の予測などと比較して大きなアドバンテージであり、実用性という点で高く評価される。
②ネイチャーポジティブへの貢献への期待
将来的に、本手法による解析がより多様な生物群集に対して全国的に実施され、その結果が自然・生物多様性の将来を予測するための情報基盤として整備されれば、企業による自然関連リスク対応をはじめとした、ネイチャーポジティブの実現に向けた取り組みへの活用が期待される32。
特に、今後はAIを活用した学習型の予測の進展も見込まれる。エネルギー地形解析と、AI等による先端的な予測手法を組み合わせることで、予測技術の高度化と社会実装が一層加速することも考えられる。
今後、生物群集の変化の予測する技術が実用化されれば、企業は自らの事業活動が生物群集に与える影響を見通すことができ、科学的根拠に基づいたアウトカム指標の設定や、アウトプット指標だけでなく、アウトカム指標を用いた進捗評価が可能となる。
今回の研究成果は、企業における自然関連リスク対応や情報開示のインテグリティの向上に大きく貢献し、自然・生物多様性の予測段階におけるギャップを埋める技術的ブレークスルーとなる可能性を秘めている。
おわりに
ネイチャーポジティブの取り組みは、リスク対応にとどまらず企業価値向上にも資するため、戦略的な対応が望まれる。しかし、その理念と実際の取り組みとの間にはギャップがあり、これを埋めるには、企業の対応をアウトプット重視から、自然・生物多様性の回復を目指すアウトカム志向へと転換する必要がある。そこで鍵となるのが、自然・生物多様性の状態を「測定」し、その変化を「予測」できる手法や指標である。
本稿では、こうした課題への対応として、国際的な測定指標の整備に向けた動き(State of Nature Metrics)と、新たな予測手法として期待されるエネルギー地形解析の生物多様性への応用を取り上げた。いずれも社会実装への課題は残るが、自然関連リスク対応の信頼性と実効性を高める基盤となりうる。
自然への依存が避けられない経済社会において、企業がネイチャーポジティブの実現に関与することは、ごく自然な流れである。測定指標や予測手法の確立の進展により、こうした動きの加速が期待される。
- World Economic Forum, “Global Risks Report 2025” < https://www.weforum.org/publications/global-risks-report-2025/in-full/ >
- 2024年版では、「異常気象」、「地球システムの危機的変化(気候の転換点)」に次ぐ第3位であった。
- 環境省ほか「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」p10(令和6年3月)< https://www.env.go.jp/content/000213033.pdf >
- 2025年度までの会計年度にTNFD提言に沿った開示を行う意向があることが登録された企業
- 環境省「ネイチャーポジティブ経済の実現」(令和7年3月)p4 < https://www.env.go.jp/content/000299700.pdf >
- 一般的に、生態系の多様性とは、森林、湿原、干潟など多様な生態系の存在を指し、種の多様性は、魚類、哺乳類、植物、細菌など生物種の豊富さを、遺伝的多様性は、同一種内での遺伝子レベルの違いに伴う個体ごとの特徴の多様さを意味する。生物多様性条約第2条ではこれら3つの多様性を生物多様性の構成要素としている。
- 生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)が、2019年に、生態系サービスに代わるものとして提唱した概念(出典:環境省「生物多様性及び生態系サービスの総合評価 2021・付属書」p3)。
- サントリーホールディングス株式会社では、水源涵養の取り組みの指標と目標に関して、地下水流動シミュレーションを実施して地下水資源への効果の検証に取り組んでいる(出典:林野庁「森林に関するTNFD開示の手引き TNFD開示事例集」令和7年4月)。ただし、このような先進的な取り組みは、コスト、技術の両面からみて、現状では実施可能な地域や企業は限られる。
- ただし、森林資源という「環境資産」の「構造的多様性」の保全・回復を主たる目的とした取り組みにおいては、保全対象の森林面積がアウトカム目標として適切な場合もある。
- 代替性があるとは、ある生物多様性クレジットが他のクレジットと同等の価値を持ち、相互に置き換え可能であること指す。生物多様性は個々の地域や個々の自然ごとに特異性が高いため、生物多様性クレジットの代替性はカーボンクレジットに比べて一般的に低いとされる。
- 追加性があるとは、クレジットによる収益等がなければ、その取り組みが新たに実施されなかったであろうことを指す。生物多様性クレジットの場合、土地利用に関する法的な規制(例:自然公園、保安林)や、CSR等の観点による独自の企業活動などのように、既存の取り組みと地域や活動内容が重複するケースが多い。そのため、「クレジットがなければ実施されなかった」という主張がしにくいケースが多く、カーボンクレジットに比べて追加性の証明が難しいとされる。
- CBD COP16, “Decision adopted by the Conference of the Parties to the Convention on Biological Diversity on 27 February 2025” < https://www.cbd.int/doc/decisions/cop-16/cop-16-dec-31-en.pdf >
- 国立研究開発法人国立環境研究所、国立研究開発法人理化学研究所2025年4月30日プレスリリース「生物群集はエネルギー地形の高低に従い変化する?データ駆動型の生物多様性の変化予測を実現?」< https://www.nies.go.jp/whatsnew/2025/20250430/20250430.html >
- 前掲注12
- 生物多様性が自然改変前の状態に比べてどのくらい残されているかを割合で示したもの。
- WWF「生きている地球レポート2024」< https://www.wwf.or.jp/activities/data/20241010lpr_j.pdf >
- 国立研究開発法人国立環境研究所など2023年10月4日プレスリリース「生き物の分布推定ツール「オープンSDM」の公開?誰もが生物種分布モデルを学び使うことを支援するツール?」< https://www.nies.go.jp/whatsnew/2023/20231004/20231004.html >
- Nature Positive Initiative, “NEWS- State of Nature Metrics: ready for testing”, 18 Jan 2025 < https://www.naturepositive.org/news/latest-news/state-of-nature-metrics-ready-for-testing/ >
- TNFDは、生態系の状態と種の絶滅リスクを、正式な指標が確立されるまでの暫定的な「プレースホルダー指標」と位置づけており、State of Nature Metricsの将来的な正式指標化を視野に入れてNPIと連携している旨を表明している。
- Nature Positive Initiative, “Draft State of Nature Metrics for Piloting”,17 Jan 2025 < https://www.naturepositive.org/app/uploads/2025/01/Draft-State-of-Nature-Metrics-for-Piloting_170125.pdf >
- Nature Positive Initiative, “Four key indicators in the draft State of Nature Metrics”,20 Mar 2025 < https://www.naturepositive.org/news/blog/four-indicators-state-of-nature-metrics/ >
- Nature Positive Initiative, “Nature Positive Initiative launches global piloting programme”, 07 May 2025 < https://www.naturepositive.org/news/latest-news/pilot-launch/ >
- 前掲注21
- サントリーホールディングス株式会社「2024サントリーグループサステナビリティサイトPDF版」 < https://www.suntory.co.jp/company/csr/data/report/2024/pdf/suntory_csr_2024.pdf >
- 王子ホールディングス株式会社「王子グループ TNFD REPORT 2024」 < https://ojiholdings.disclosure.site/Portals/0/pdf/top/tnfd_report_2024_ja.pdf >
- 前掲注13
- 前掲注17
- 国立研究開発法人理化学研究所2021年5月18日プレスリリース「微生物生態系の安定性を俯瞰できる新手法-腸内細菌叢の変動予測や制御への応用に期待-」 < https://www.riken.jp/press/2021/20210518_3/ >
- 東京大学国際高等研究所渡部准教授2021年11月30日プレスリリース「前頭葉は意識の揺らぎの原因なのか、結果なのか??少なくとも3つの前頭葉領域が意識の揺らぎを制御していた?」 < https://ircn.jp/pressrelease/20211130_takamitsuwatanabe >
- 前掲注28
- 生物が水や土壌などの環境中に放出したDNAを指す。採取した水や土からDNAを抽出して解析することによって、生物を直接捕獲せずとも、採取地の周辺地域における生物の存在や多様性を効率的に調べることができる。高速かつ大量のDNAを解読できる次世代シーケンサーの普及が進んでおり、環境DNAの活用が今後一層進むと期待されている。
- 前掲注13には、「今回の研究成果は、データ駆動型の生物多様性予報とでも呼ぶべき、生物多様性分野における次世代型の将来予測の基盤となりうる」との記載がある。
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