省力化投資促進プランは中小企業の賃上げを促すか
6月6日に公表された骨太の方針原案において、中小企業の賃金向上策として、省力化投資促進プランが明記されている。同プランにおいては、飲食業や宿泊業などの人手不足が深刻な業種を念頭に、官民で60兆円規模の投資を実現することが掲げられている。
省力化投資に関して日銀短観をみると、大企業と中小企業との間に大きな差が生じていることが示されている。大企業が2000年以降にソフトウェア投資を大きく伸ばしたのに対し、中小企業についてはソフトウェア投資を2020年頃までむしろ減らしており、足もとでは増加傾向で推移するものの、大企業に対して20年近く出遅れている(図表1)。
こうした動きは、人件費高騰に対する対応力の差となって表れている。人手不足に伴う賃金上昇が続く中、人件費が増加傾向にあることは大企業・中小企業共に共通である。しかし、売上高人件費率をみると、中小企業において上昇傾向での推移がみられる一方で、大企業においては横ばい程度での推移が続いている(図表2、3)。省力化投資によって、大企業が1人当たりの生産性を高めて人件費高騰の悪影響を緩和する一方で、中小企業においては人件費高騰の影響が直接的に経営を圧迫しているものとみられる。
生産性の向上によって少数の人数で業務を処理することが可能になれば、それによって賃上げの原資が生み出されることになり、持続的な賃上げを実施することが可能になる。昨今では、労働集約的な産業においても配膳ロボットやタッチパネル、自動レジなど、省力化投資による生産性の向上が進んでおり、生産性が高まっていることが身近にも感じられる。省力化投資促進プランが省力化投資に出遅れた中小企業を後押しすることで、中小企業においても賃上げを実行しやすくなることが期待される。

