日本経済新聞(2025年8月21日付)の紙面「テスラ、一般道で検証~日本でAI自動運転、安全懸念払拭目指す」に、新添上級研究員の取材コメントが掲載されました。
日本経済新聞の紙面(8月21日付)「テスラ、一般道で検証~日本でAI自動運転、安全懸念払拭目指す」に、上級研究員:新添麻衣の取材コメントが掲載されました。
※Web版(8月20日付)はこちらです⇒「テスラのAI自動運転、8つのカメラで状況認識 日本の一般道で走行」
<記事のポイント>
テスラが日本の一般道で「Full Self Driving(Supervised)」の走行テストを開始したというニュースです。
FSD(Supervised)は、自動運転のレベル1~5の中で、安全運転支援機能に位置する「レベル2」に該当します。
システムが車両の操舵をサポートしてくれるものの、あくまでも人間のドライバーの責任で運転するレベルです。それゆえ 「Supervised =(人間に)監視された状態の」 という文言がついています。
テスラの台頭やそれを追いかける中国の新興EVメーカーによって「スマートEV開発」「車載AI開発」は激化しており、その結果、レベル2を高度化させて一般道でも使えるようにする機能の提供が、今、最もホットな開発領域となっています。通称「レベル2+」「レベル2.99」、中国では「NOA」と呼ばれる機能がそれです。今年5月の上海モーターショーでも、中国メーカーだけでなく、日系メーカーから中国市場へのレベル2+投入の発表が相次ぎました。
日本国内では、日産が英Wayveと組んで、2027年度を目標に市街地でのレベル2+導入を目指すと発表しているほか、ホンダも中国市場以外では自社開発を目指しています。
米国や中国で既に FSD(Supervised) の走行実績があるテスラの技術力は一歩先を行ったものになっているでしょう。しかし、テスラが日本で最初に型式認証を通せるのか、はたまた日系メーカーを日本初とするのか・・・このあたりは、政府の思惑にも左右されそうです。
「レベル2+」では、あたかも、システムが出発地から目的地まで自動運転してくれているかのような体験ができます。もちろん、事故が起こった際には、まずは人間のドライバーが責任を問われるわけですから、ドライバーはハンドルをいつでも握れる状態で座り、周囲への注意を怠ってはいけません。
しかし、人間の集中力はそう簡単にコントロールできるものではなく、ついついハンドルから手を放してしまったり、眠たくなってしまったりするものです。「人間が正しくシステムの機能を理解して使いこなすこと」「システムを過信させないこと」、そのための方策が安全性の面からは非常に重要で、これを欠くと安全のための機能がかえって事故を招きます。
大切なのは、車両を走行させる技術力の高さだけではありません。車内でドライバーの意識が運転操作に向くようなアラートの発信方法のほか、販売方法や車両受け渡し時のユーザーへの教育なども含めた安全性を担保する工夫がメーカー側に求められます。実際、テスラは当初「Full Self Driving 」という名称のみで商品化をするつもりでした。しかし、米国各州の規制当局や市民などから「それでは、市民に完全な自動運転だと誤認を与える!危ない!」という声が上がり、「Full Self Driving (Supervised)」=人間の監視が必要ですよ、という名称に改変させられた経緯があります。 ~以上~