増加する年収1000万円プレイヤー
本日、国税庁から民間給与実態統計調査が公表された。平均給与は478万円と増加傾向での推移が続いている(図表1)。働き方改革関連法の施行による残業時間の減少やコロナ禍での企業業績悪化などによって、平均給与が減少する場面もみられたものの、額面上の金額は均してみると増加傾向で推移している。
そうした中、増加しているのは年収1,000万円以上の給与所得者の増加だ。1,000万円以上の給与所得者の数は2024年に320万人となっており、10年前の2014年から約41万人増加している(図表2)。資本金10億円以上の株式会社に所属する正社員に限ると、18.9%、おおよそ5人に1人が1,000万円以上の給与を得ていることが示されている。1,000万を超える給与所得者の人数は確実に増加しており、かつてのような世間的にハイステータスと言われるような珍しい存在ではなくなってきている。
また、インフレの影響によって、1,000万円の価値も変化している。帰属家賃を除く総合指数を用いて、1,000万円の実質値を算出すると、2024年の1,000万円の価値は、10年前と比較して10%以上減価している(図表3)。とりわけ、近年の物価上昇によって実質的な価値の目減り幅は大きい。
一方で、所得税の累進課税におけるインフレ調整はほとんど進んでいない。物価上昇によって実質的な購買力が減少しても、名目金額で累進課税がなされるため、所得税負担が増加することになる。その他にも、配偶者控除・配偶者特別控除において所得金額が1,000万円以下であることが必要となるなど、所得制限のボーダーラインにもインフレ調整がなされていないものがみられる。インフレによる影響を放置し、過度な税負担に繋がることがないよう、累進課税や所得制限のラインに適切なインフレ調整を行っていくことが必要になるだろう。

