マクロ経済・公共政策

2025年~2026年の年末年始の旅行需要はどうなるか
~史上最高値のユーロ円や旅行単価上昇等が需要押し下げ要因に~

上級研究員 小池 理人

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 今年も残すところ2カ月強となり、年末年始の旅行計画を立てる人も少なくないだろう。2025年~2026年の年末年始は最大9連休と日並びも良く、日程的には旅行需要が増えそうに見える。
 ただ、筆者は年末年始の旅行需要は抑制的なものに止まるとみている。理由の一つとして、円安が挙げられる。為替レートは大きく円安方向に推移しており、ユーロ/円レートについては史上最高値を更新している(図表1)。円安が進行することで日本人にとっての海外旅行が割高となり、海外旅行の手控えが生じることが予想される。これまでも円安の進行によって、訪日外客数対比で出国日本人数の回復の遅れが目立っていたが(図表2)、円安が更に進展することで、こうした動きに一層拍車がかかることが見込まれる。
 海外旅行がコスト高となるのであれば、代替需要が生じることで国内旅行需要が活況を呈することになりそうだが、国内旅行にも旅行単価上昇の動きがみられている。旅行・観光消費動向調査でコロナ前の2019年対比での日本人国内宿泊旅行の動きをみると、外国人観光客の受け入れを再開した2022年6月以降、旅行単価が拡大傾向で推移し、それに伴って延べ旅行者数はほぼマイナス圏での弱い動きとなっていることが分かる(図表3)。円安によって購買力が増した外国人が大挙して日本を訪れることで旅行単価が上昇し、日本人旅行者が押し出される格好となっている。
 旅行のコストが上昇する一方で、実質賃金はマイナス圏での推移が続いており(図表4)、旅行に回せるほど資金に余裕のある世帯は以前ほど多くない。そして、実質賃金がプラス転化するにはまだ時間がかかるものとみられる。2025年~2026年の年末年始は良い日並びではあるものの、海外旅行・国内旅行ともに盛り上がりに欠けたものになることが予想される。

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