マクロ経済・公共政策

丙午は令和時代にも出生数を押し下げるか

上級研究員 小池 理人

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 来年2026年は丙午である。60年に1度巡ってくる十干十二支の組み合わせで、丙午の年に生まれた女性は気性が荒く、男性の寿命を縮めるという迷信が存在している。前回の丙午の年である1966年の出生数は前年比で25.4%と大きく減少しており、たかが迷信と軽んじることはできない(図表1)。迷信による出生数の減少が2026年にもみられるのであれば、少子高齢化に悩む日本に追い打ちをかける事態になりかねない。
 ただ、筆者は丙午による出生数への影響は極めて小さいものに止まると考えている。現代においては、当時と異なり、晩婚化・晩産化が問題となっているからだ。年代別の合計特殊出生率をみると、かつてよりも出産のタイミングが後ろ倒しとなっていることが示されている(図表2)。一般的に35歳以上が高齢出産とされており、出産のタイムスケジュールを考慮すると、丙午という迷信を信じて1年出産時期を遅らせる時間的なコストは、60年前よりも遥かに大きい。
 また、SNSの普及も丙午の影響を小さくする要因として挙げられる。例えば、X(旧Twitter)については10代から30代までの利用率が6割を超えており(図表3)、とりわけ子供を産むボリュームゾーンである30代の上昇が目立っている。コミュニティノートの機能や現在50代後半の丙午生まれに特に際立った不都合が生じていないことが広がることによって、迷信による出生率の低下を抑制することが期待される。
 60年前に出生数を大きく押し下げた丙午だが、現代においてはそれほど大きな影響は生じないとみられる。ただし、単一年での強い下押し圧力が回避されたとしても、日本が直面している少子化は非常に深刻なものである。引き続き、積極的な少子化対策を推進していくことで、人口減少に歯止めをかける必要があるだろう。

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