マクロ経済・公共政策

賃貸マンションの住宅市況
東京23区の人口移動から見える、アフォーダブル住宅の必要性

主任研究員 宮本 万理子

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 東京23区の賃貸マンションの平均家賃が上昇している。その背後には、分譲マンションの建設資材や人件費の高騰、投機目的のマンション購入・転売などによる価格押し上げが要因と言われている。

 アットホームラボ調べでは、ファミリー向けマンション(50~70㎡)の平均家賃は、東京23区で239,492円/月(前年同月比+8.7%)、都下で129,649円/月(同+4.9%)である(2025年3月)。下図を見ると、都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)では、30万円前後/月と最も高く、離れるにつれ低くなる傾向はこれまでと変わらない。ただし、前年同月比を見ると、23区内北部と23区外の上昇が目立つことから、この地域への転居が増えていることが予想される。しかし、急速な価格上昇を受け、今後、都外に転居するケースが増える可能性があるだろう。

             図表 東京マンションの平均家賃と前年同月比(ファミリー向き50~70㎡)

(注)全国主要都市の「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向(2025年3月)より作成
(出典)アットホームラボ提供

 単身者向きマンション(30㎡以下)の平均家賃は、東京23区で99,083円/月(前年同月比+6.6%)、都下で59,819円/月(同+0.7%)となった(2025年3月)。都心5区では、10万円超/月と最も高く、離れるにつれ低くなるのは、ファミリー向き賃貸マンションの傾向と同様である。ただし、同年前月比を見ると、城東地区の上昇が目立つことから、この地域への転居が増えていることが予想される。23区内では家賃が低くおさえられているこのエリアにおいて、急速な価格上昇は単身者世帯が23区外に転居せざるを得ない状況を生み出すだろう。

             図表 東京都マンションの平均家賃と前年同月比(単身者向き30㎡以下)

(注)全国主要都市の「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向(2025年3月)より作成
(出典)アットホームラボ提供

 賃貸マンションの平均家賃上昇を受け、子育てしやすい環境を充実させ、子育て世帯の流出抑制にもつなげていくために、東京都は、中間層も対象に手ごろな価格で住むことができるアフォーダブル住宅の整備を進めている。都が合計100億円出資して複数のファンドを創設し、民間投資とあわせ、総額200億円以上を住宅支援に充てることを目指す。

 東京都では、これまでも低所得者層向けの公営住宅が整備されてきたが、アフォーダブル住宅は、中間層まで対象を拡張した点において評価できる。しかし、本施策は現在、主にファミリー層を対象としているが、単身者の多くが賃貸マンションに居住する実態を踏まえれば、対象を単身者層へ広げる議論も考えられる。ただし、東京一極集中が国の政策課題として挙げられるなか、東京都のアフォーダブル住宅の拡充は、結果として東京への社会流入を促す可能性もあり、その点も勘案した検討が必要になろう。

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