外国人政策の新たな方針は衆院選でアピール材料となるのか
衆議院が解散された1月23日に政府は、外国人政策の方向性を示す「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を新たにとりまとめた。高市首相は、一部の外国人による違法行為やルールからの逸脱に対し、「排外主義とは一線を画しつつも、毅然と対応する」と繰り返し述べてきたが、その意思を具体的な施策として形にしたことになる。
従来の総合的対応策は、在留外国人に対する生活支援や日本語教育など、共生社会の実現に向けた施策が全体の8割程度を占めていた。今回はこれを大幅に書き直して、在留管理の強化・適正化に係る施策が大きく厚みを増した。政府関係者によると、施策の内容は「秩序6割、共生4割」になったという1。
拡充された「秩序」の部分をみると、これまでなかった取組として、日本語や社会制度を学習するプログラムを創設する方針が示された。外国人が日本社会に溶け込むためには、一定の日本語能力や日本のルール・社会規範に対する理解が必要である。しかし、国が管理統制にかなり関与している技能実習や特定技能といった在留資格を除けば、こうした領域の対応は基本的に「地方任せ」であった。そのため、地域によって支援体制が異なるなど問題点も指摘される。国の責任で教育機会を提供しようという今回の学習プログラムは高く評価できよう。
「秩序」に係るその他の新たな取組としては、永住資格の許可要件に上記プログラムの受講を加える方針や、日本国籍を取得(帰化)するために必要な居住期間を現行の「5年以上」から「10年以上」とする方向性が盛り込まれた。外国人による土地取得等のルール検討も、これまでになかった項目である。
既存の施策についても、さらなる管理強化に踏み込んだ。例えば、医療費不払い対策として民間医療保険への加入を求める方針が追記されたほか、在留管理の適正化として特定在留カード(在留カードとマイナンバーカードを一体化したもの)の取得の原則化を検討するとされた。
一方で「共生」の部分については、日本語教育の充実や相談体制の強化など、基本的に従来の施策をほぼそのまま踏襲している。また、先述した学習プログラムは、共生関連の施策とも位置付けられるため、ここで再掲されている。このように、総合的対応策は「共生」のための土台となる「秩序」をより重視した建付け・内容となっている。
1月27日に公示された衆院選で、自民党は総合的対応策を高市政権の「成果」としてアピールするのではないかとみる向きもある。ただ、総合的対応策では、中長期的に外国人をどの程度受け入れていくかといった基本戦略までは示されていない。自民党は、日本維新の会との連立合意書に沿って、2026年度中に基本戦略を定める方針で、議論はまだこれからだ。
今般の衆院選では、参政党、日本保守党、そして与党である日本維新の会などが、外国人政策の転換を掲げる。もし、総合的対応策の「足らざる」部分が選挙戦の大きな争点となれば、高市自民党としては、アピールどころか防戦に苦しむことになるかもしれない。
- 朝日新聞「外国人政策 共生より秩序」(2026年1月24日)