マクロ経済・公共政策

縮小する外国語教室

上級研究員 小池 理人

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 外国語教室の人気が低迷している。第3次産業活動指数をみると、コロナ前から低下傾向で推移していた外国語会話教室の活動指数は、コロナ禍で水準を大きく切り下げ、その後も低水準での推移が続いている(図表1)。AIをはじめとする翻訳ツールの発展や出国日本人数の回復ペースの弱さ(図表2)など、語学の必要性を感じる機会が減少したことが背景にあるものと考えられる。
 家計調査をみても、語学月謝への支出金額は減少している。とりわけ、目立っているのは高所得世帯での減少幅だ。もともと、語学月謝は低所得世帯で支出金額が小さく、高所得世帯になるほど支出金額が増加する傾向にあった。直近でもその傾向自体は変わらないが、主要顧客であるはずの高所得世帯で支出金額がかつての半分程度まで減少しており、語学学校の屋台骨を揺るがしている様子が示されている(図表3)。語学はキャリアアップに必須のスキルとして、高所得者層を中心に強い需要があったが、テクノロジーの発達等により需要が減少したものとみられる。
 ただ、年代別にみると別の姿が浮かび上がる。ほとんど全ての年代において語学月謝の減少がみられる一方で、29歳以下については2019年比で+65.9%と大幅な増加がみられている1。若年層の可処分所得は他の年代と比較して低いため、絶対額としては小さいものに止まるが、語学についての学習意欲の高さがうかがえる。
 翻訳スキルが翻訳ツールに取って代わられることで、語学学校に対する一部ニーズが縮小することはある種必然であるとも言える。しかし、翻訳ツールがいくら進化したとしても、タイムラグの無い自然なコミュニケーションを完全に再現することは困難であると考えられ、コミュニケーションスキルとしての語学の重要性は残り続けることが予想される。翻訳ツールに慣れている若年層がそこに価値を見出しているのであれば、行政や企業がリスキリング予算等を投じて彼らの学習を支援することは、生産性向上や人材獲得の一つの手段として有効な一手となる可能性があるだろう。

  • 消費者物価指数によると、2025年の講習料(英会話)の2019年対比での上昇率は+7.3%となっており、実質ベースでみても20代の語学月謝への消費は大きく増加していると言える。

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