酒税統一で強まるビール回帰
~ビール需要と発泡酒需要の明暗~
間もなく、ビール系飲料の酒税統一が完了する。酒税法改正に伴い、ビールと発泡酒との税率の差は段階的に縮小されてきたが、今年10月にビールと発泡酒の酒税が350ml当たり54.25円で統一されることになる(図表1)。
注目されるのは、税率変更前後での駆け込み需要とその反動だ。過去の税率変更前後では、税率引き上げ前に発泡酒・ビール風アルコール飲料1に駆け込み需要が生じ、税率引き上げ後に反動減が生じていた(図表2~3)。ただし、発泡酒・ビール風アルコール飲料の駆け込み需要とその反動減の規模は小さくなっている。背景には、発泡酒・ビール風アルコール飲料の存在感が低下していることが考えられる。発泡酒・ビール風アルコール飲料の消費数量は、2020年の改定時をピークに減少し、2023年の改定の後にはビールに追い抜かれており、かつての勢いは感じられない(図表4)。今年10月の税率変更においても、発泡酒・ビール風アルコール飲料の駆け込み需要と反動減が生じることが想定されるが、既に市場での存在感はかなり小さくなっており、駆け込み需要の規模は2023年よりも更に小さなものになることが想定される。
そして、ビールと発泡酒・ビール風アルコール飲料との価格差が縮小することから、発泡酒・ビール風アルコール飲料からビールへの需要のシフトは一層加速することが見込まれる。こうした動きの中で、ビール各社も商品戦略を変化させている。サントリーは金麦を、キリンは本麒麟を新ジャンルからビールへと変更することを発表している。これまで低い酒税をテコに拡大してきた新ジャンルの商品がビールへと転換されることは、酒税統一に伴う市場構造の変化を象徴する動きと言えるだろう。
- 家計調査における分類。酒税法では発泡酒の税額は過去2回の改正で変わらなかった一方、新ジャンルは2段階の引き上げがなされ、2023年10月に発泡酒の区分に移行した。そして家計調査では、2025年1月に「発泡酒・ビール風アルコール飲料」という項目名が、「発泡酒」に名称変更された。本稿では、改定以前の時点を含むため「発泡酒・ビール風アルコール飲料」と表記している。