【Vol.80】4.財政健全化に向けて ~社会保障の改革がカギ~

統括上席研究員  濱野 展幸

1.はじめに

財政に対する危機感は、国民の間で共有されているように見受けられる。一方で、具体策については踏み込んだ議論に至っていない。本稿では、歳出の最も多くを占める社会保障を取り上げ、財政健全化に向けた考え方、打ち手を紹介する。

Ⅱ.財政健全化に向けた概論

社会保障は、「制度」に基づいて運営されていることから、機動的に増減できない。したがって、財政は構造的・慢性的な課題となっている。現在の状況を改善するには、「経済を成長させる・労働生産性を上げる」「社会保障支出の伸びを抑制する」「税や社会保険料収入を引き上げる」といった、3 つの手段を組み合わせて対応せざるを得ない。

Ⅲ.全世代型社会保障改革のメニュー

社会保障改革の各論については、様々なメニューが挙げられるが、本稿では岸田政権発足時にクローズアップされたテーマに絞って取り上げる。

年金については、岸田総理が勤労者皆保険を政策課題として打ち出している。「皆保険」とは言え、政府は「全ての勤労者」と考えているのではなく、厚生年金・健康保険の対象者をどこまで拡大するかが課題である。対象者の拡大は、税・社会保険料の収入増に資する。

医療については、コロナ禍を通じて、「低密度医療」が課題となった。需要に比して病院数が多すぎることの弊害が指摘されているが、対応策としての地域医療構想の進捗は芳しくない。そこで、経済財政諮問会議で提案されている一入院包括払い制度を取り上げ、期待される医療費抑制効果と留意点を解説する。

介護については、岸田総理が掲げる「公的価格の抜本的見直し」(介護職の収入の引き上げ)について、財政問題との両立を図る方策として、ICT 化等による生産性向上を通じた人員配置基準の見直しを取り上げる。

Ⅳ.おわりに~議論から実行へ向かうために~

財政健全化については、正反対の主張がぶつかるが、「議論」を「実行」に進めるため、「効率的な資源配分を考える」というアプローチを提案する。

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