【Vol.80】5.デジタル・プラットフォームとコンテンツ

フェロー 隅山 正敏

Ⅰ.はじめに

デジタル・プラットフォーム上で流通する「コンテンツ」に焦点を当て、それに起因するトラブルにプラットフォーム運営者(DPF運営者)が巻き込まれた事例を時系列に沿って概観する。

Ⅱ.検討の視点

各事例の比較・分析に用いる「3つの対立軸」、すなわち、自分のコンテンツと他人のコンテンツ、コンテンツの発信と流通、リアルの世界とデジタルの世界について整理する。

Ⅲ.他人の権利を侵害するコンテンツ

紙媒体で生じていたトラブル(名誉毀損、知的財産権侵害)が1990年代にデジタル媒体でも再現され、各国は、最低要件だけ遵守すれば責任を問われることがないという「責任制限立法」を講じた。

Ⅳ.取引を不正に誘引するコンテンツ

電子商取引市場では商品情報の不正表示(2000年代)や「広告だと分からない広告」による不正な販売促進(2010年代後半)が問題となった。リアルの世界(ショッピングモール)では「販売者の責任」が議論され、デジタルの世界では「DPF運営者の責任」にまで議論が広がっている。

Ⅴ.プライバシーを侵害するコンテンツ

リアルの世界で見られなかった「忘れられる権利」や「閲覧履歴の追跡」が2010年代に入り問題になった。前者ではリアルとデジタルとで異なるルールが適用され、後者では流通させない仕組み作りが民間主導で進んでいる。

Ⅵ.情報拡散力を悪用するコンテンツ

SNSが普及して情報拡散力を増すと、それを悪用したヘイトコンテンツ、テロ関連コンテンツ、フェイクニュースが問題となった。欧州では発信規制(コンテンツ発信の違法化)と流通規制(違法コンテンツの削除の義務付け)が採用された。「違法でないが有害である」コンテンツ対策が残課題である。

Ⅶ.DPF運営者とコンテンツ

プラットフォームの影響力の増大に連動してDPF運営者の責任が拡大されてきた。規制面でも責任の「制限」から「拡大」に転じ、自主規制→共同規制→市場監視と変遷している。

Ⅷ.おわりに

技術が進歩すればコンテンツ管理の精度も高まり、DPF運営者の責任水準を引き上げる余地が生じる。規制の目標(望ましい姿)を機動的に変えられる規制を考えるヒントとなる。

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