【Vol.86】経済安全保障をどう捉えるか ~論議の土台を考える~
I.はじめに
各企業は経済安全保障に関する備えを求められている。議論が錯綜しがちになる「経済安全保障」をそこで想定されている「経済的脅威」に着目して概観する
Ⅱ.安全保障を規定する「脅威」
伝統的な安全保障領域で「経済」のウェイトが高まり、経済のグローバル化を逆手にとった「経済的威圧」が新たな脅威として加わるという状況の下で「経済安全保障」が議論されている。
Ⅲ.様々な安全保障
エネルギー安全保障や食料安全保障での脅威は「国民生活を揺るがす国民経済の混乱」である。用語として廃れた環境安全保障や人間の安全保障では「安全保障」を冠する必要性が問われる。
Ⅳ.米国の対中威圧
米国の対中制裁は経営資源(ヒト、モノ、カネ、データ)や業務プロセス(開発、製造、販売)といった企業活動全体を網羅的にカバーしており、経済安全保障の備えもこれに対応する必要がある。
Ⅴ.中国の対外威圧
中国の経済的威圧の引き金(トリガー)は主に①領土、②内政干渉の排除、③自国批判への対抗、④国防、⑤自国企業保護の5 項目であり、経済安全保障の備えもこれらを想定する必要がある。
Ⅵ.わが国の経済安全保障法制
わが国の安全保障の枠組みは①安全保障物資・技術の管理、②安全保障情報の保護という2つの分野で整備され、2022年には基本法である③経済安全保障推進法が制定された。
Ⅶ.経済安全保障論議のポイント
経済安全保障論議を読み解く際には①伝統的な安全保障との関係、②想定する経済的脅威、③概念の曖昧さへの対応という視点を持つことが有用であろう。
Ⅷ.おわりに
経済安全保障論議は錯綜しがちであり、企業が対応する際にも議論の混乱が生じ易い。想定される経済的脅威を特定・具体化し、議論の拡散に留意すれば建設的な議論が可能になろう。
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