【Vol.86】父子家庭の現状と課題 ~「必要な支援」を「届ける」ことに注力を~

上席研究員 宇田 香織

Ⅰ.はじめに

父子家庭はこれまで、母子家庭に比べ収入が高いことが多く、課題を抱えていても世帯数が少ないことからクローズアップされにくかったが、足元では、母子家庭に遅れて国の支援施策の対象と位置付けられている。国の基本方針の見直しに際し、父子家庭の現状と課題を確認し、今後着目すべき点を探る。

Ⅱ.ひとり親家庭に対するこれまでの国の支援策

ひとり親家庭に対する国の支援は、戦後、経済的に厳しい状況にある母子家庭を対象に、支援策が講じられてきたが、 2010年に児童扶養手当が父子家庭に対しても支給開始され、父子家庭に対する支援は徐々に拡大してきた。 2014年には、父子家庭も母子家庭と同様に法律の支援対象として明確に位置づけられ、近年は子ども家庭庁の発足を受け、父子家庭も含めたひとり親家庭への支援が強化されている。

Ⅲ.父子家庭の現状

父子家庭の父親は、母子家庭の母親に比べ平均収入は多いが、非正規の場合は母子家庭の母親と同様、就労収入が低い。公的支援を知らないことも多く、その利用は低調である。養育費の取決め率も低い。

Ⅳ.父子家庭の課題とそれへの対応

父子家庭の父親は、精神的なゆとりや物理的な時間のない状況に置かれており、ふたり親家庭に比して収入が低く、「家計」や「子どもの教育・進学」に苦労しており、課題への丁寧な対応が求められる。

Ⅴ.ひとり親家庭をめぐる政策動向

「母子家庭等及び寡婦の生活の安定と向上のための措置に関する基本的な方針」の改正案が示された。相談体制の強化、就業支援、養育費の確保など、現状の課題に則した見直しが行われる一方、「子どもの進学」に関しては、改正案での位置づけやその検証の仕方に課題が残る。

Ⅵ.おわりに

これまでひとり親支援策は拡充されてきたが、必要な支援が行き届いているとは言い難い。相談体制の強化等により、必要な支援を必要なところに届ける施策の実施と、「子どもの進学」等ひとり親が抱える課題に対して、的確な実態把握と実施した施策についての丁寧な評価・検証が必要だ。

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