【Vol.87】デジタル経済下の独占規制~GAFAM事案から紐解く~
Ⅰ.はじめに
デジタル経済では「勝者総取り」の傾向があり、独占規制の出番が多くなる。しかし既に確立した「独占状態」を前に、今更、独占規制を適用してどうなるのかという疑問も湧く。デジタル経済の下での独占規制について概観する。
Ⅱ.独占を規制すべきか
消費者にとっての独占のデメリットは「市場に競争があれば得られたであろう価格低下や品質向上を得られないこと」であり、既に独占市場を目の当たりにしている人々にとって実感し難いものである。また、独占規制は新たな産業の興隆を抑止する側面もあり、両立のために様々な制約が課されている。
Ⅲ.独占規制はどのように執行されているか
GAFAM に対して独占規制を適用する事案は、大きく①ある市場において独占を形成する際に不当な行為をとるケースと、②そうして獲得した独占力を不当に利用するケースに分かれる。①では初期の小さな成功を足掛かりに不当な行為を繰り出して「独占」を獲得するパターンが多い。②は、その市場の中で独占力を利用するケース(取引相手の搾取)と別の市場に参入する際に独占力を利用するケース(独占の梃子)とがある。また、データ支配力を不当に行使するケースもある。
Ⅳ.新たな規制はなぜ導入されるのか
独占規制には産業振興との両立の観点から様々な制約が課されており、それは「係争期間の長さ」に繋がっている。特に①独占しているのはどの市場なのか(市場画定)、②そこでの独占者は誰か(独占認定)、③どのような行為が不当とされるのか(不当行為)の 3 点の立証が困難であり、これらを予め法定し、対象事業者を予め指定しておく「事前規制」が各国で導入されている。
Ⅵ.おわりに
デジタルプラットフォーム事業者に対する独占規制の適用が本格化し、今後、どこまでが許容され、どこからが違法になるのかといった線引きが定まってくる。こうした実績は、新たなデジタル経済、例えば生成人工知能(AI)への応用が期待される。
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