Introduction

 
人的資本経営をエビデンスをもって語れるように
  
従業員(人材)を価値創出の源泉である資本と捉え、人材という資本の価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる人的資本経営に多くの企業が取り組んでいます。従業員の専門性、知識といった能力とあわせて、やりがい、組織に対するロイヤルティ(loyalty)、健康状態なども人材の価値として重要視されています。従業員の業務や組織に対する意識をエンゲージメントという概念で測ろうとする取組みも進んでいます。
 
人的資本経営では、人的資本を構成する要素をいかに高め、人的資本の向上により生産性、企業価をどう改善するか、一貫したストーリーが重要とされています。
 
一般論は、十分に実証されていない
 
ところが、従業員のエンゲージメントなどが実際に労働生産性ひいては企業価値に影響を与えているのか、未だ十分に実証されていません。また、エンゲージメントを高めるためには、従業員にどのような働きかけを行えば効果的なのかについても実証は限られています。

当社は、2019年に関連する分野の研究者を委員として招へいし「生産性に関する研究会」を発足させました。そして、ある企業の協力により従業員アンケート、勤怠(休暇、労働時間、テレワーク)など従業員に関わるデータ、営業拠点ごとの売上などの業績に関わるデータの提供を受け、働き方、エンゲージメントを含めた従業員の意識、組織運営の状況などが組織の業績に与える影響の分析を行ってきました。本レポートは、約4年にわたる研究会での実証研究の成果の一部を紹介しています。主に対象企業の国内営業拠点(約500)に焦点を当てて、人的資本、組織運営が営業成績(営業目標の達成率)に与える影響を分析しています。
  
生産性の高い、成果を出す組織の特徴は
 
一連の分析からは、エンゲージメントの重要性が確認されました。メンバーのエンゲージメントが高い組織は、低い組織と比べて営業目標の達成率が高まるという結果が示されました。また、エンゲージメントが高い組織は、上司のサポート、同僚のサポートも高くなるという結果が示されました。これは、エンゲージメントが高いメンバーは、組織への貢献意欲が高く、上司、同僚へのサポートも積極的に行う実態を示唆していると考えています。やりがい、組織に対するロイヤルティも営業成績に対してプラスの影響を確認しています。
 
上司のサポートは、組織の生産性に対しても、メンバーのエンゲージメントに対してもプラスの影響を与えることが確認できました。組織運営の面では、公平感の醸成、仕事に対するコントロール度の改善の重要性が示唆されました。これらの結果は、因果推論を用いた実証により確認していますが、実証の強さは分析により異なります。因果推論など分析の詳細は、今後、別のレポートなどで公表していきます。

■目次
 ・ Introduction
 ・ エンゲージメントとは?
 Q1.従業員のエンゲージメントが高い組織は、営業成績も良いのか?
 Q2.従業員のやりがいが高い組織は、営業成績も良いのか?
 Q3.上司のサポートが組織に与える影響は?
 Q4.従業員が会社から大切にされていると感じている組織は、営業成績も良いのか?
 Q5.従業員の会社へのロイヤルティが高い組織は、営業成績も良いのか?
 Q6.メンバーが公平感を感じる職場の生産性は高いのか?
 Q7.仕事のコントロール度が高いと良いことがあるのか?

 
SOMPO インスティチュート・プラス 生産性に関する研究会
 
 ● 委員(五十音順、敬称略、◎印は座長)
    黒田 祥子 早稲田大学教育・総合科学学術院教授
    滝澤 美帆 学習院大学経済学部教授
    藤野 善久 産業医科大学教授
  ◎山本 勲 慶應義塾大学商学部教授
 ● 事務局
   SOMPOインスティチュート・プラス株式会社
 

 
■ 対象企業の概要
 
  ● 業種:サービス業
  ● 従業員数:約23,000人
  ● 国内営業拠点:約500
 
  ※ 国内営業拠点は全国に所在。顧客は個人から大企業などの法人まで多岐にわたる。
  ※ 分析対象期間 2016~2020年度
  ※ 分析により対象となる国内営業拠点数には相違がある。

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