エンゲージメントおよびJD-Rモデルの概要

 
■エンゲージメントの向上は、健康・組織アウトカムへの好影響が期待される

 
企業の人的資本を高め、その能力を最大限発揮できるようにするためには、エンゲージメント向上が重要な鍵を握ります。そして、企業が従業員のエンゲージメントを向上させるには、その仕組みの理解が欠かせません。学術的に確立されているワーク・エンゲージメントのメカニズムとして、仕事の要求度‐資源モデル(Job Demands Resources model: JD-R モデル)という産業保健心理学によるアプローチがあります。同モデルでは、ワーク・エンゲージメントは、仕事の資源(仕事の裁量、上司や同僚による支援、成長機会などの職場環境)と個人の資源(自己効力感、楽観性など)が充実していると高まるとされています。さらにその仕事の資源と個人の資源の充実は、仕事の要求度(仕事量、プレッシャー、精神的・肉体的負担など)によって生じる心理的ストレス反応もやわらげることが示されています。このように、仕事の資源・個人の資源の充実は、エンゲージメントの向上と心理的ストレス反応の軽減に寄与するとともに、健康・組織アウトカム(仕事のパフォーマンス、プレゼンティーズムなど)へのポジティブな影響が期待できます。

健康・組織アウトカムは、プレゼンティーズム、アブセンティーズム(欠勤等)、仕事のパフォーマンス、仕事の革新性・創造性、組織コミットメント、離職率・定着率など
 
(出典) 島津明人 「ワーク・エンゲイジメント:ポジティブメンタルヘルスで活力ある毎日を」 (2014年7月)をもとにSOMPOインスティチュート・プラス作成
※本レポートでデータ分析を行ったエンゲージメントはワーク・エンゲージメントではなく、eNPS(Employee Net Promoter Score)で測定されています。そのため本レポート内のデータ分析に係る説明では「エンゲージメント」と記載しています。

 
■エンゲージメント・サーベイで可視化し、PDCA で継続的な改善を図る

 
エンゲージメント向上の具体策を検討するためには、仕事の資源などの状態を組織の部署単位で可視化することが有用です。エンゲージメント・サーベイの実施により、感覚的に捉えてしまいがちな従業員と組織の関係性や状態を定量的に把握できます。さらにサーベイ結果の分析を通じて、職場のコミュニケーションやチームワークなど部署ごとに取り組むべき課題の優先順位付けがしやすくなります。継続的な現状把握と分析により、エンゲージメントに影響を与える要因を特定したうえで、理想とのギャップ解消に向けた施策を実行する、PDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルを回すことが大切です。

 
(参考文献)
島津明人 「ワーク・エンゲイジメント:ポジティブメンタルヘルスで活力ある毎日を」 (労働調査会、2014年7月)
島津明人 「産業保健心理学からみた持続可能な働き方」(RIETI Policy Discussion Paper Series 19-P-001、2019年1月)
Harter, J. K., Schmidt, F. L., & Hayes, T. L. (2002). “Business-Unit-Level Relationship between Employee Satisfaction, Employee Engagement, and Business Outcomes:A Meta-Analysis“. Journal of Applied Psychology, 87(2), pp. 268-279 .
Schaufeli, W. B., & Bakker, A. B. (2010). “Defining and measuring work engagement: Bringing clarity to the concept”. In A. B. Bakker (Ed.) & M. P. Leiter,
”Work engagement: A handbook of essential theory and research”, pp. 10–24. Psychology Press.
厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析-人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について」 (2019年)   ほか

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