エネルギー政策に係るアンケート調査結果(2025)

SOMPOインスティチュート・プラス株式会社(本社:東京都新宿区 取締役社長:司波 卓)は、「エネルギー政策に係るアンケート調査」を実施し、その結果を取りまとめました(アンケート調査は株式会社マクロミルに委託し、2025年1月に実施)。前回調査はこちら

1.サマリー

  • 国民の社会問題への関心は高く、エネルギーの安定供給に対しても全体の67%が関心を示している。
  • しかし、国のエネルギー政策に対しては賛否の判断を保留(「わからない」と回答)する層は3~4割以上と多く見られる。
  • その背景にはエネルギー政策に関する知識や、政府の意思決定プロセスに関する認知の不足と、政府への不信感が根底にあると見られる。
  • 政策について判断を保留にする層は、全体と比較して関心度(関心がある計=非常に関心がある+やや関心がある)は低い。
  • 政策について判断を保留にする層は、日本政府の政策全般に対する信頼度や、エネルギー政策に関する情報発信の評価(エネルギーの安全保障に関する情報が正確、エネルギー政策に関する議論の透明性が確保されている、国民との対話の場が設けられている)についても判断を保留にするか、否の意向を示す傾向にある。
  • 全体として、政府のエネルギー政策に関する意思決定プロセスの認知度(第7次エネルギー基本計画の議論が進められていること、意見箱の設置によって意見を募集していること、第7次エネルギー基本計画のパブリックコメントが実施されること)やイベント参加の割合は低いが、政策について判断を保留にする層は全体と比較しても著しく低い。

2.アンケート調査結果の概要

(1)国民の基本認識・政府への信頼度

①低い政府への信頼とコミュニケーション評価

  • 政府が発信する政策への信頼度は低く、「信頼している」層は20%に留まり、「信頼していない」層(44%)を大きく下回る。
  • 過去調査との比較では、特に20~40代で「信頼していない」と回答する割合がいずれも10pt以上増加している。
  • 国のエネルギー政策の情報発信に対する評価においても、特に「議論の透明性」(15%)や「国民との対話の場」(11%)が確保されていると考える国民はごく少数である。

②生活に根差した高いエネルギーへの関心

  • 一方、国民の社会問題への関心は高く、特に「エネルギーの安定供給」は67%と、「高齢化社会」(72%)や「防災対策」(71%)に次いで関心が高い。
  • また、「地球温暖化」(78%)や「気候変動」(74%)といったマクロな環境ワードへの関心も高い水準にある。

③「認知」の欠如

  • こうした国民の高い関心と裏腹に、エネルギー基本計画の議論や意見箱、パブリックコメントといった、政府の意思決定プロセスの認知度は全体的に極めて低い結果となっている。
  • 年代別の認知度を見ると、「第7次エネルギー基本計画の議論」の認知度は70代が、「意見箱」や「パブリックコメント」の認知度については20~30代が比較的高い傾向となっている。

(2)エネルギー政策の国民の受け止め

①国の重要政策には「判断保留」が多数派

  • 温室効果ガス削減目標(わからない:45%)、原子力の割合(同:36%)、再生可能エネルギーの割合(同:40%)、水素の活用(同:39%)などについて、「わからない」と回答する層が3~4割程度を占めている。
  • 意見を持つ層の中では、原子力や再生可能エネルギーの割合について総じて前向きな意見が多い傾向にあるが、原子力については、年代が上がるほど「推進するべきではない」との意見が増加する傾向も見られる。

②生活直結の施策には「明確な賛成」

  • 対照的に、国民の家計に直接影響する施策には、明確な賛成意見が集中しており、「電気・ガス料金の負担軽減策」(賛成:68%)、「ガソリン補助金の延長」(同:60%)、「ガソリン税の暫定税率廃止」(同:61%)といった施策は、いずれも6割を超える高い支持を得ている。
  • ただし世帯年収別でこの傾向を見ると、もっとも年収が低い層では「どちらともいえない」の割合が高く、他の層と比較して「賛同計(賛同する+どちらかといえば賛同する)」の割合は低い。生活に苦しむ低所得者向けの政策としながらも、低所得者に響いていないことが窺える。

(3)国民の環境・エネルギーに対する意識・認知度

①エネルギー源への冷静な評価と期待

  • 将来の技術としては「再生可能エネルギー」への期待が48%と最も高い。各エネルギー源の印象を見ると、再生可能エネルギーや水素エネルギーには「CO2削減につながる」といった環境面でのポジティブなイメージがある一方、原子力には「費用がかかる」「安全性が心配」といったネガティブなイメージが根強くある。
  • ただし、再生可能エネルギーについても、太陽光の「自然環境の破壊」や風力の「建設コスト」といったデメリットも冷静に認識されている。

②最優先は「安定・安価」という現実

  • 国民がエネルギー政策で最も重要視するのは「安定した電気・ガス料金」(86%)、「電力供給の安定化」(83%)、「安価な電気・ガス料金」(81%)であり、「脱化石燃料の利用」(53%)の重要度を大きく上回る。
  • この「現実」志向は省エネ行動にも表れており、取り組む最大の理由は「環境配慮のため」(32%)ではなく、「生活費を抑えるため」(66%)である。

③コスト負担への強い抵抗感

  • 国民のコスト意識は極めて厳しく、再生可能エネルギーに賛成すると回答した人(n=1,001)のうち、再生可能エネルギーの導入によって電気料金が上がる場合に許容できる上昇率は平均で9.8%に留まり、35%の国民は「0%(何%も許容できない)」と回答しており、家計への直接的な負担増には強い抵抗感があることが窺える。
  • ただし、世帯年収別でこの傾向を見ると、許容度の平均に大きな差は見られなかった。また、過去調査と比較すると、政府が発信する政策について「信頼していない」と回答する割合が増加しているにも関わらず、許容度の平均は全体で0.9pt、男性50~60代で約3~5pt増加している。再生可能エネルギー推進によるコスト負担に対し、むしろ理解は進んでいると見られ、単純に金額の問題ではなく、理念が問われている可能性がある。

④コミュニケーションの現状

  • 情報入手先は「テレビ」(60%)が最多だが、若年層は「SNS」(30%)を多用するなど、世代間のギャップが顕著である。また、エネルギー政策に関するイベントへの参加経験がある国民はわずか16%に留まり、直接的な対話の機会が不足していることも確認された。
【本件に関する問い合わせ先】
SOMPOインスティチュート・プラス株式会社
公共政策調査部長上席研究員 濱野展幸 050-5476-2854 nhamano@sompo-ri.co.jp
主任研究員 尾形和哉 050-5363-4390 kogata@sompo-ri.co.jp

本編

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