世帯の小規模化・多様化と住まい
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2024年11月に、国立社会保障・人口問題研究所から「日本の世帯数の将来推計(以下、世帯推計とする。)」が公開された。これによると、2050年にかけて、単独世帯(約4割)、夫婦のみ世帯(約2割)、ひとり親世帯(約1割)が約7割を占め、夫婦と子世帯は約2割と少数になっている≪図表1≫。その背景には、高齢化に加えて非婚化、晩婚化に伴う単独世帯の増加と、結婚を巡る状況の変化による夫婦のみ世帯、ひとり親世帯の増加がある。全体として世帯の小規模化の進展が見てとれる。
≪図表1≫世帯の推移と、将来推計

一方で、その他世帯が減少している主因は、3世代世帯の減少であり、兄弟姉妹のみからなる世帯等、その他の類型はむしろ増加している。 今回の世帯推計では、将来予測はしていないものの、「その他世帯」の内訳について報告書内で言及している点が注目されよう。
≪図表2≫は、世帯の推移と増減を、1995年から2020年比で比較したものである。これを見ると、核家族世帯では、夫婦と子供から成る世帯が減少する一方で、夫婦のみ世帯、ひとり親世帯が増加している。核家族以外の親族世帯は、兄弟姉妹から成る世帯、他に分類されない親族のみ世帯、夫婦、子供と他の親族(親を含まない)から成る世帯へと続く。また、非親族世帯や単独世帯の増加率は最も顕著に見られる。先で述べた世帯小規模化に加えて、今後、世帯の多様化の進展を丁寧に見ていく必要があるだろう。
≪図表2≫世帯の推移と増減

世帯の多様化は、住まいへのニーズの多様化にもつながる。既にさまざまなところで事例紹介がされるものの、一望できる統計は限られている。今年9月に公開された住宅・土地統計調査では、高齢者の住まいについては調査項目を追加するなど、高齢化社会に対応した調査の改良が見られる。それに対して、若い世代の住まいについては、一部シェハウスに関する実態把握が必要との声が上がるものの、具体的な調査項目として落とし込まれることはなかった。現在、唯一把握できる資料として、持ち家、借家などの所有状況と、借家の種別(公営、民営、公社・都市再生機構等)に関するものが住宅・土地統計調査の中に一部ある。この統計を使って、先に紹介した世帯の多様化との対応関係を以下で見てみたい。
核家族世帯では、女親と子供から成る世帯で若干低いものの、全世帯の平均持ち家率(約6割)と比較して高い。核家族以外の世帯のうち、子供がいる世帯についても同様である。これに対して、単独世帯や 非親族を含む世帯での借家率は5割以上を占め、圧倒的に高い。
単独世帯で借家率が高いのは、学生を中心とした若年世帯によるものと思われる。また、中年単独世帯のライフスタイルと住宅ニーズの多様化が、機動力の高い借家を好む傾向も見て取れる。一方で、高齢単独世帯は配偶者の死後、持ち家に住むケースが一般的であるため持ち家率が半数弱占める結果となった。
非親族世帯を含む世帯では、シェアハウスに代表される居住形態をとることもあり、これらは借家であることが多い。しかし、その全容は明らかではなく、今後、実態を明らかにする必要がある。
≪図表3≫世帯と住まい(所有状況)

人口、世帯、住宅・土地に係る国の調査結果が刻々と公開され、そこから見える世帯の小規模化・多様化が住まいのニーズをどのように変えているのか、その動向は時代の変化を映し出す鏡とも言えよう。
<参考文献>
・国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)(令和6(2024)年推計)-令和2(2020)~32(2050)年-」