企画・公共政策

2025年の春節にインバウンドは盛り上がるか

上級研究員 小池 理人

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 正月休みも終わり、今日から仕事始めという人も多いかと思われるが、中国においては旧正月である春節が最も重要な祝祭日とされている。2025年における春節の連休期間は1月28日から2月4日までの8日間となっており、中国から日本へのインバウンドの増加も期待される。
 まず、中国人の訪日客数については、一定程度の増加が見込まれる。コロナ前の2019年比でみると、中国以外の訪日客が+56.2%と大きく伸びているのに対して、中国人の訪日客は▲27.3%と他の国と比較して遅れと停滞感がみられているが(図表1)、伸びしろは大きい。こうした中、日中両国によるビザ緩和を含めた日中関係の改善は訪日中国人数の押し上げ効果をもたらすと考えられる。昨今の日中の接近については賛否あるものの、少なくとも訪日中国人数の増加にとっては追い風になるものと考えられる。
 一方で、中国人観光客の消費単価について、大きな期待をすることは難しい。観光庁が公表するインバウンド消費動向調査によると、取得できる最新のデータである2024年7-9月期において中国人の1人当たり旅行支出は、2019年比で+26.6%に止まっている。伸びていることは事実であるが、円安の進行によって日本のモノやサービスが割安となる状況においては物足りない伸び率であり、伸び率自体も縮小傾向が続いている(2024年1-3月期:同+36.0%→4-6月期:同+26.7%→7-9月期:同+26.6%)。他国と比較してみても、中国の消費単価は、米国(同+51.1%)や英国(同+85.5%)、シンガポール(同+77.1%)における消費単価の伸びに大きく劣後している。背景にあるのは、中国経済の減速だ。不動産不況の強い下押し圧力等によって中国経済は低迷が続いており(図表2)、旅行消費に向かう余力が小さくなっているものと考えられる。とりわけ、旅行消費額の中での買い物代は2024年7-9月期で2019年比▲19.2%となっており、かつて爆買いという言葉が流行した時の中国の姿は無い。中国人訪日客の旅行単価上昇にはしばらく時間がかかるだろう。
 こうした中、懸念されるのが人手不足だ。日銀短観の雇用人員判断DIを確認すると、宿泊・飲食サービスにおいて人手不足が深刻化していることが示されている(図表3)。宿泊・飲食サービスはインバウンドにおいて需要が増加する産業の代表格であり、急速に需要が増加する中で、供給が追いつかず、受け入れは困難な状況だ。短期的には需要超過の中で単価を引き上げ、中長期的には省力投資や人材確保といった供給力増強によって収益を確保することが一つの対応策として考えられる。しかし、今の段階での中国人観光客の増加は、収益確保に結びつかない可能性が懸念され、オーバーツーリズムを悪化させることにもなりかねない。早急に供給力を増強し、需要増に対応する必要があるだろう。

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