カカオ高騰で「甘くない」2025年のバレンタイン商戦
来月14日はバレンタインデー。1年で最もチョコレートが購入される時期である。チョコレート購入金額のグラフを描いてみても、2月のチョコレート購入金額が他の月と比較して突出していることが確認できる(図表1)。菓子メーカーや小売店にとっては書き入れ時とも言える時期であるが、チョコレートの関連産業にとって今年は厳しい年となりそうだ。
理由として挙げられるのが、原材料費の高騰だ。他の食料品と同様にチョコレート価格も昨今の物価高の影響を受けて上昇している。とりわけ、チョコレートの主要な原料となるカカオ豆の先物価格は2019年比で約350%と上昇ペースは極めて早い(図表2)。そのような中でも消費者物価指数で示されるチョコレート価格の上昇率は同+50%程度に止まっており、価格転嫁が十分になされていない可能性が示唆される。バレンタインデーによって販売金額が大きく伸びたとしても、原価の高騰によって収益が圧迫されることになるだろう。
また、販売数量自体も伸び悩む可能性がある。販売価格の急上昇がチョコレートの買い控えを招くからだ。家計調査からチョコレートの購入数量を算出すると1、前年比▲20.1%とここ10年で最大のマイナス幅を記録している(図表3)。家計調査の数値についてはサンプル数の少なさによる振れが生じやすいことから、幅をもってみる必要があるものの、チョコレートの販売価格の上昇が家計による購入数量の減少に繋がっている可能性は極めて高いと言えるだろう。
加えて、義理チョコ文化の衰退も挙げられる。2月のチョコレートの日別購入数量2を確認すると、勤労者世帯の2月13日・2月14日のチョコレート支出数量がコロナ前の2019年対比で減少しており3(図表4)、コロナ禍におけるテレワークの普及を背景に、職場におけるチョコレートのやり取りが減少した可能性が示唆される。テレワークが普及し、職場で顔を合わせる機会が減少したため、義理チョコ文化が衰退したものと推察される。加えて、昨今のハラスメントへの意識の高まりも要因として考えられる。こうした傾向は2025年においても大きな変化は無いと考えられ、義理チョコ需要は停滞することが想定される。
以上のように、バレンタインデーにおけるチョコレート販売に関して、原材料費の高まりや値上げを背景とした買い控え、義理チョコ文化衰退によって、2025年は関連産業にとって甘くない年となりそうだ。


- チョコレート購入金額(総務省「家計調査」より取得)をチョコレートの価格指数(総務省「消費者物価指数」より取得)で除することで算出した実質値を、チョコレート購入数量とする。
- チョコレート日別支出(総務省「家計調査」より取得)をチョコレートの価格指数(総務省「消費者物価指数」より取得)で除することで算出した実質値を、チョコレート日別購入数量とする。
- 2019年・2024年共に2月13日・14日は平日であり、曜日の違いによる支出数量への影響は少ないと考えられる。