ワーク・エコノミックグロース

「インパクト志向金融宣言 プログレスレポート2024」の公表
~署名機関等の国内インパクトファイナンス残高を公表~

上級研究員 菅原 佑香

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 インパクト志向金融宣言が、2025年1月29日に、「インパクト志向金融宣言 プログレスレポート2024」を発行し、署名機関等による国内のインパクトファイナンス残高を公表した1。「インパクト志向金融宣言」とは、銀行や保険会社、運用機関、ベンチャーキャピタル等の複数の金融機関が協働し、金融を通じて環境・社会課題を解決するという考えのもと、インパクト志向の投融資の実践を進めていくイニシアティブである。2021年11月に発足し、21機関であった署名機関は、現在(2024年9月1日時点)では、80機関に増えている。

署名機関の行うインパクト投融資をレベルに応じて3種類に分け、このうちレベル1(「意図」「戦略」を持ち、アウトカムを測定している場合)とレベル2(測定に加えてインパクト創出にかかる 「マネジメント」を実施している場合)の合計をインパクトファイナンスの投資残高として集計している≪図表1≫。署名機関80 社および賛同機関1社によるインパクトファイナンスの合計残高は、2024年3月末時点で17兆407億円と、2023年の10兆7,240 億円から約1.7倍に増加した≪図表2≫。投資残高の国内と海外の内訳は国内53.2%、海外が46.8%とそれぞれ半分程度であり、アセットクラス別にみると融資(69.4%)の割合が最も多い。2023年から2024年にかけての増加の要因について、今までの署名機関の残高増加に加え、この1年で新しく署名した機関の数字が加わったことによるものと、本レポート内で言及されている。特に、融資を行う機関による増加が全体の残高の伸びを牽引しているという2

インパクト投資をめぐる議論は、近年、活発化している。2023年に発足した「インパクトコンソーシアム」では、2024年に公表された金融庁による「インパクト投資(インパクトファイナンス)に関する基本的指針」等を踏まえ、投資家や金融機関、企業、自治体等の幅広い関係者が参加し議論が行われている。今後、インパクトの評価方法や情報開示のあり方が進展することで、投資家等の金融機関や企業での取組みが、一層進展することが期待される。

  • インパクト志向金融宣言 プレスリリース(2025年1月29日)、「インパクト志向金融宣言 プログレスレポート 2024」
  • ①既存の大手金融機関が残高を拡大したこと(三井住友銀行、三菱UFJ 銀行、農林中央金庫、みずほ銀行、日本生命等)や②インパクト投資の残高が大きい大手金融機関(ゆうちょ銀行)がこの一年で新たに署名をしたこと
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