預け先の確保だけではない!?「小1の壁」 ~送迎の苦悩~
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今春、小学校に就学した子どもをもつ共働き家庭の親は、学校や学童への送迎に追われた4月だったのではないだろうか。
「小1の壁」とは、小学校に登校してから下校するまでの時間が、保育園に預けていた時間よりも短いケースが多いことから、親の就業時間の調整が必要になることで就業継続が難しくなることを指し、この「壁」を打破するため、放課後の居場所の拡充の必要性が認識されている。
だが、学童など放課後の預け先を確保できた場合であっても、送迎にかかる時間や労力が「壁」として立ちはだかる場合が少なくないことにも留意が必要だ。
小学校までの距離や環境によって、送迎が必要な場合とそうでない場合があるものの、年度当初は、子どもが通学に慣れるまでの間、保護者による送迎を求める小学校も少なからずある。送迎に対応する場合の親の生活時間は以下のようになる。
朝の送りでは、親は子どもの小学校の始業時間にあわせて出発する必要があり、小学校が通勤経路の途中にある場合以外は、通勤するまでの時間が増えることになる。放課後、子どもが学童に向かうケースでは、小学校と学童が離れた場所にある場合、学童へ送りも発生しうる。この場合、親はこの時点で勤務を切り上げて対応せざるを得ない。学童が小学校の敷地内に開設されているケースなど、学童への送りが不要な場合でも、親は学童の終了時刻にあわせて、退社する必要がある。また、未就学の兄弟姉妹がいる場合、これに保育園等への送迎が加わることになる。
警察庁が2019年から2023年に起きた交通事故を分析したところ、歩行中の小学生の死者・重傷者は2011人に上り、小学校1年生の歩行中の死者・重傷者数は6年生の約2.9倍だ。
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小学校への登下校を集団で行っていても、多くの場合、集合場所から自宅への往復では一人で歩く時間がある。登下校時の痛ましい事故が後を絶たない中、子どもが安全に登下校できるようになるまで保護者による送迎を行う必要は言を俟たない。
共働き家庭で、親族など身近に頼れる存在がいない場合、預け先を確保できた場合であったとしても、4月の送迎を乗り切るには多大な困難が伴う。子どもが小学校に進学した年度当初に限った特有の事情で、就業継続を希望しているにも関わらずそれが困難になるとすれば、就業者にとっても不本意で、企業にとっても望ましいことではないはずだ。
送迎サービス付きの民間学童や行政のファミリー・サポート・センター事業の利用も選択肢になるが、前者は費用が高く、後者は需要に供給が追い付かずマッチングが成立しないケースもある等、多くの保護者の困難の解消につながっているとは言い難い。こうした民間や行政のサービスの拡充の視点も重要だが、共働き家庭の多くの保護者の負担軽減につなげるためには、子どもの送迎に対応しやすい在宅勤務など、柔軟な働き方を保護者が選ぶことができる環境の整備が重要だろう。