喫煙者の属性は低所得者から高所得者へ
5月30日に日本たばこ協会から公表された紙巻たばこの販売実績によると、2024年度の販売数量は828億本となり、9年連続での減少となった(図表1)。度重なるたばこ増税や原材料費の高騰を背景としたたばこ価格の上昇によって需要が減少したものとみられる(図表2)。
たばこ需要の減少について細かくみるため、家計調査を用いて年収階級別のたばこ購入金額を確認する。年収階級別にみると、低所得世帯におけるたばこの購入金額が減少する一方で、高所得世帯において購入金額が増加している様子が示されている(図表3)。喫煙習慣については、所得が低いほど高いとされている1が、たばこの値上げが続く中で低所得世帯における禁煙もしくは購入頻度の減少が進んだものとみられる。
たばこの購入金額を実質化して比較すると、2010年頃から年収五分位1(最も所得の低い階級)の消費数量が年収五分位5(最も所得の高い階級)の消費数量と同程度の水準にまで減少している(図表4)。2010年はたばこ1本あたり3.5円という大幅なたばこ増税が実施された年であり、大きな負担増加が低所得世帯のたばこ需要を押し下げたものとみられる。年収五分位1のたばこ消費数量はその後も減少傾向での推移が続き、2000年の3分の1以下の水準にまで落ち込んでいる。
一方で、年収五分位5のたばこ消費数量は2010年の増税の影響を受けてこそいるものの、足もとにおいても2011年と同程度の水準を維持しており、直近では年収五分位1を明確に上回っている。喫煙者の属性はかつて低所得層が中心であったが、度重なる増税やそれに伴う値上げによって、高所得層に変化しているものとみられる。
今後もたばこ増税の実施が予定されており、たばこの販売数量に対する下押し圧力が強まることが想定されるが、喫煙者の属性が高所得者中心になっている中で、たばこ購入数量の減少幅は限定的なものに止まる可能性がある。


- 厚生労働省「国民健康・栄養調査報告」