マクロ経済・公共政策

40代前半が20代前半よりも子供を産む時代の到来

上級研究員 小池 理人

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 6月4日に厚生労働省から公表された人口動態統計によると、2024年の出生数は68万6,061人と初めて70万人を下回る結果となった(図表1)。一人の女性が生涯に産む子供の数を表す合計特殊出生率も1.15と過去最低を記録した。
 出生数の減少自体は程度の差こそあれ予測されていたことだが、驚くべきは子を産む母親の年齢の変化だ。人口動態統計で母親の年齢別の出生数を確認すると、20代前半の母親から生まれる子供の数が急速に減少する一方で、40代前半の母親から生まれる子供の数は横ばいで推移し、2024年には両者が逆転している(図表2)。
 ここで、国立社会保障・人口問題研究所が公表する出生動向基本調査1を確認すると、「夫婦が理想の子どもを持たない理由」として、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」を挙げる回答が35歳未満に多く、35歳以上で少なくなることが指摘されている。
 若年層においては経済的な余裕が少なく、経済的基盤を整えるために時間がかかっているものと推察される。とりわけ、都市部においては家賃をはじめとする生活コストが高く、子育てを行う余裕が生まれにくい。キャリアを重ねて余裕ができる頃には年齢も高くなっており、20代前半の母親から生まれる子供の数が減少しているものとみられる。
 もちろん、ライフスタイルの選択は個人の自由であるが、経済的な基盤の弱い若年層への支援を手厚くすることは少子化対策の一案となり得る。子供を産むタイミングの遅れとして経済基盤が整うまでの時間が要因となっているのであれば、政策的な支援を強化することで、子供を複数持ちたいと考えている人の出産時期を早めることを可能にし、第二子、第三子を出産するための時間的な余裕が生み出されることが期待される。

  • https://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou16/JNFS16_Report04.pdf

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