マクロ経済・公共政策

売れるエアコン、売れなくなる暖房

上級研究員 小池 理人

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 エアコンの購入数量が増加する一方で、ストーブ・温風ヒーターの購入数量が減少している(図表1)。温暖化に伴い、夏・冬共に気温が上昇していることが背景にあると考えられる。とりわけ、エアコンの購入数量の増加ペースは、目を見張るものがある。2000年時点から2024年の間で、約1.7倍にまで購入数量が増加しており、昨今の酷暑の深刻さを物語っている。
 こうした中、気がかりなのは家計への影響だ。エアコン価格の上昇幅は、他の品目と比較して大きい。昨今の物価高の中でも、その上昇ペースは突出していると言える(図表2)。エアコンは高額な商品であり1、価格上昇の中で購入を余儀無くされることで、ただでさえ物価上昇によって購買力が低下している家計を圧迫する要因となっている。
 また、地域別にみると、北海道におけるエアコンの購入数量の急増も注目される2。通常、気温の低い北海道において、エアコンの購入数量は少ない。これまで、北海道は全国と比較してエアコンの購入数量が低水準で推移する傾向にあったが、2024年には北海道のエアコンの購入数量が大きく増加し、全国のエアコンの購入数量を上回っている。(図表3)。2024年の北海道のエアコンの購入数量の水準は、過去の全国のエアコンの購入数量の水準を上回るものであり、これまでエアコンの必要性が比較的低かった北海道にまで深刻な暑さが及んでいることが示唆される。
 今夏のエアコンの動向について、景気ウォッチャー調査をみると、「今年もエアコンが売れている。3年連続の猛暑となりそうで、単価も上昇傾向にある(家電量販店)」など、エアコンの購入状況が好調であることを示すコメントが多くみられている。もちろん、家電消費が伸びること自体は消費の増加を示すものであるため、望ましいことである。しかし、気温が上昇傾向で推移する動きは今後も続くことが想定され、暑さ対策による支出が増加し、他の支出項目にしわ寄せがいく可能性には十分に注意を払う必要があるだろう。

  • 総務省「小売物価統計調査」によると、2024年(特別区部)のルームエアコン価格は92,292円(温風ヒーターは18,882円)。
  • 本稿では、家計調査における地域区分である「札幌市」を北海道として記載している。

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