マクロ経済・公共政策

夏休みの小学生~自宅以外にも居場所を~

上席研究員 宇田 香織

夏休みを小学生はどのように過ごしているのだろう。
 当社では2024年1月に、小学校の子を持つ親を対象に子どもの居場所についてのアンケート調査を行った。その中で、小学生の夏休みの過ごし方を調査している 1 。本稿では、このアンケート調査を基に、特に小学4年生以上の夏休みの過ごし方に着目し、そこから示唆される課題について考察する。

アンケート調査において、夏休みに、両親以外と過ごす(または子どもが一人で過ごす)時間帯がある日に、どこで誰と過ごしたかを聞いたところ、小学校低学年では公立の放課後児童クラブ(以下、「公立学童」という。)の利用が多くなっている。他方、小学校高学年では、自宅で一人だけもしくはきょうだいと過ごすことが多い。

共働き家庭の場合、小学生の子どもの預け先として、低学年のうちは公立学童があるが、小学4年生になると、多くの自治体で公立学童の利用ができなくなる。そのため、小学校高学年の児童は自宅で過ごさざるを得ない状況となっているのだろう。

また、小学校高学年の児童について、自宅以外での過ごし方としては、約2割が「習い事先で過ごす」と回答している。小学校高学年で習い事を利用する理由について尋ねると、「子どもが希望したから」「子どもの将来に役立つと思ったから」という子どもにとっての意義の他に、2割以上が「仕事をしている間、子どもの面倒をみる人や場所がない」という親にとっての意義を挙げている。共働き家庭の親は、仕事をしている間の子どもの居場所として習い事を活用している側面もある。

子どもの居場所を求める親のニーズを受け、昨今では子どもの居場所と習い事の両面を兼ね備えた民間学童サービスも活況で、特に小学4年生では公立学童に入れないために民間学童を利用する家庭も少なくないが、民間学童は費用が高くなりがちで誰もが利用できるものではない。 こうした状況から、小学4年生以上の児童にとっては、夏休みの期間中、自宅以外で公立学童のように安心して生活できる居場所が極めて少ない状況と言える。

本来、児童に健全な遊びの場を与えることを目的として設置されている児童館の利用は低調だ。児童館は、1960年代後半から1980年代にかけて、児童に健全な遊びの場を与えるという目的で、交通量の増加を背景に交通事故の危険から児童を守ることや、共働き家庭のいわゆるかぎっこ対策として、各地に設立された。しかし、利用に強制性がないことから、利用経験がなく親や子どもが児童館を知らないことも少なくない。また、地域の自主性が高い故に活動が低調な児童館もある。

昨今の暑さのために思うように屋外で遊ぶことができない状況も踏まえ、夏休み等の長期休暇の際、小学4年生以上の児童が自宅以外の居場所として、児童館を気軽に利用できる状況の実現が望まれる。児童館における活動内容の見直しや充実に向けた取組とともに、保護者や学校関係者等への周知を通じた認知度の向上が求められる。

  • 小学生の子を持つ親から2023年の夏休みの過ごし方について回答を得た。

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