ワーク・エコノミックグロース

上司と部下の関わり方
 ~従業員エンゲージメントを高める対話の重要性~

主任研究員 久井 環

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Gallupによると、米国で働く従業員の満足度(従業員エンゲージメント)は、直近、過去11年間で最低水準にある≪図1≫1。従業員エンゲージメント調査は、18歳以上の就業者を対象に毎四半期実施されている2。17,660人を対象とした2025年5月の調査(以下、本調査)では、仕事に意欲的で満足している状態(engaged)の割合は32%であり、前回より改善したものの、依然低い水準にある。従業員が仕事に意欲が持てず、消極的で満足できていない状態(disengaged)は生産性の低下に繋がり、これによる経済損失は年間2兆ドルにのぼると試算されている3

また、本調査に関連し、次の設問への回答結果も公表されている≪図2≫。

これらの結果の背景について、Gallupは、次のような根拠を挙げつつ、職場における上司の部下との関わり方に改善点がある、と指摘している。

本調査に並行し、従業員エンゲージメントに影響しうる要素を調査するため、Gallupは2025年のはじめに、米国の就業者7,542人を対象にアンケートを行っている。回答者の29%が「透明性があり、正直で、継続的な対話が上司との間で不足している」と答えている4。また、32%が「職場で孤独を感じ、心理的な繋がりを感じることができない」とした5

これらのことから、従業員エンゲージメントには、上司から部下に対する「こうあって欲しい」とする将来像に関する対話が影響すると解釈できる。どのような姿を理想・目標とするべきか、そこに近づくための取り組み、職場が掲げる方向性にどう一人ひとりが関与できるか、これらについての具体的かつ継続的な対話が、従業員の満足度を高めると考えることができる。

Gallupは、現場に関与し、“WHY”への明確な回答を示し、意見交換を促す上司を従業員は求めている、と指摘している6。なぜ期待されているのか、なぜ必要とされているのか、さらには、どのような場面で成長を見届けられているのか。上司と部下との継続的な対話によって、これらの回答から納得感が得られれば、従業員エンゲージメントは向上すると期待できる。

日本の従業員エンゲージメントは7%であり、中国、韓国、香港などの東アジア地域の平均18%と比較しても極めて低い7。採用力強化や離職予防の観点から、今一度、それぞれの職場においてこのような対話ができているのか、振り返る局面にある。

  • Gallupサイト (visited Oct.21,2025) <https://www.gallup.com/workplace/692954/anemic-employee-engagement-points-leadership-challenges.aspx>
  • 前掲注1
  • 前掲注1
  • 前掲注1
    原文では、”Twenty-nine percent (29%) say they lack clear, honest or consistent communication from leaders.” とある。
  • 前掲注1
    原文では、” Thirty-two percent describe their workplace as isolated or impersonal, lacking the conditions that help people feel emotionally connected to their teams.” とある。
  • 前掲注1
    原文では、”Employees want leaders who show up, explain “why” and invite input.” とある。
  • Gallup, ”State of the Global Workplace Understanding Employees, Informing Leaders 2025 Report” 2025

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