データで見る東京マンション市場の実像ー外国人投資家は本当に地価高騰の主因か?ー
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東京23区のマンション価格高騰が止まらない。2025年上半期では平均価格が1億3,000万円超と過去最高値となった[1]。その背後には、建設資材や人件費の高騰によるマンションの供給不足、東京23区内への人口流入による需要拡大、投機目的のマンション購入・転売など複数の要因があると言われている。近年は、外国人投資家によるマンション購入が地価高騰に拍車をかけるとして、報道されることが多くなったが、実はその動向はよく分かっていない。

TRUSTART社では、東京23区内の海外居住者によるマンションの所有動向を、不動産登記情報から先駆けて掴んでいる[2]。調査結果によると、相対的に海外居住者の所有率が高い港区・新宿区・渋谷区・千代田区・中央区でも、5%内外に留まっており、海外投資家の動向が地価高騰の主因とは言い難い。
例えば、晴海フラッグの場合は、登記上のデータによると実際に住んでいる人の割合は53%に留まる一方で、国内居住者が42%、海外居住者が4%となっている。国内居住者のうち一定数は、転売や賃貸収入を目的とした投資だと考えられ、価格高騰が必ずしも海外投資家によるものではないことを示唆している[3]。
千代田区は、投機目的のマンション購入による過度な住宅価格・賃料の高騰、居住実態がない住戸の増加による管理組合運営への支障などを懸念し、一般社団法人不動産協会を通じて不動産会社に次の要請をしている。再開発等の事業で販売するマンションについては、「購入後から5年以内の転売禁止」「同一建物内で同一名義による複数物件購入の禁止」に関する特約を付すというものである[4]。ただし、千代田区の要請は主に海外投資家を念頭に置いた措置であるが、晴海フラッグのように、国内投資家による需要が一定割合を占める実態を踏まえると、海外投資家のみを対象とする規制が必ずしも投機抑制につながるとは限らない。従って、まずはその実態を精緻に調査する必要があるだろう。
国土交通省では、海外投資家によるマンション購入動向の実態を掴むべく、調査に乗り出しており、今年中に公表が予定されている。公表に当たっては、①海外・国内別の投資目的購入の実態、②地域別・物件タイプ別の詳細分析、③転売サイクルと価格形成メカニズムの解明についても踏み込む必要があるだろう。現時点での暫定的知見としては、海外投資家のみを対象とした規制では十分とはいえず、国内投資需要を含めた総合的な住宅・土地政策の検討が必要と考えられる。
- [1]不動産経済研究所「首都圏マンション市場動向2025年上半期」
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[2]TRUSTART「不動産ビッグデータこぼれ話、都内マンションの海外居住者による所有割合を集計(東京23区・TRUSTART調べ)」
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[4]千代田区「千代田区内の投機目的でのマンション取引等に関する要請について(令和7年7月18日配信)
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