2025年の忘年会は盛り上がるか
2025年も残すところ2カ月弱となり、今年も忘年会の季節がやってきた。居酒屋等1にとってはまさに書き入れ時である。足もとの居酒屋等の動向を確認すると、コロナ禍が過ぎ、飲食業全体の客数がほぼコロナ前に戻る中においても、居酒屋等の客数は低い水準での推移が続いている(図表1)。客単価の上昇が続く中で(図表2)、居酒屋等に向かう客足が減少したものとみられる。収入の低い世帯から高い世帯へとそれぞれ20%ずつグルーピングした五分位階級で飲酒代への支出を確認すると、最も収入の高い第5分位階級で支出金額が増加する一方、第1~第4分位階級までは客単価が上昇する中においても支出金額が減少しており、高所得世帯を除いては飲酒代を切り詰めざるを得ない様子が浮き彫りとなっている(図表3)。
物価高は今年も継続しており、忘年会の向かい風となることが予想される。東京商工リサーチが2025年11月に実施したアンケート調査2によると、費用削減を理由に忘年会を実施しない企業が増加していることが指摘されており、物価高が忘年会の実施に影響を及ぼしていることが示唆される。総務省が公表する家計調査で12月の飲酒代について確認すると、物価が大きく上昇しているにもかかわらず、2024年の飲酒代支出はコロナ前の2019年と比較して減少している(図表3)。翌日が休日である金曜日と土曜日に支出が大きくなることは共通しているが、2024年は平日での飲酒代が低水準で推移しており、忘年会による支出増の様子が伺えない(図表4)。とりわけ、職場の忘年会がピークを迎える傾向にある12月第3週3において、かつてのような押し上げ効果がみられていない。2025年においても物価高を背景とした下押し圧力は強く、同様の動きが続くことが見込まれる。
コロナ禍に忘年会が一旦無くなったことで、職場の忘年会の開催自体が見直されていることも注目される。昨年の景気ウォッチャー調査をみると、「ハラスメントを気にして忘年会の開催を見送る企業が多い」や「忘年会や新年会を行わない企業が増えている」といったコメントがみられていた。昨年と今年とで大きな変化が生じているとは考えにくく、忘年会の開催を見送る企業は今年も少なくないことが想定される。飲食店にとって最大の書き入れ時の一つである忘年会シーズンだが、かつてのような賑わいが戻る可能性は低そうだ。
- 本稿では、一般社団法人日本フードサービス協会「外食市場動向調査」における「居酒屋」と「パブ・ビアホール」の合計を「居酒屋等」と記載する。
- 東京商工リサーチ「2025年11月「忘・新年会に関するアンケート」調査」
- ぐるナビ「「忘年会」に関する調査」(2024年)