どうなる?住宅型有料老人ホーム
~介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見」を受けて~
厚生労働省は2025年12月25日(木)に第133回社会保障審議会介護保険部会を開催し、「介護保険制度の見直しに関する意見」(以下、「介護保険部会意見」)をとりまとめ、公表した。
介護保険部会意見では、2024年12月以降、18回開催された審議の結果を
「Ⅰ 人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築」
「Ⅱ 地域包括ケアシステムの深化」
「Ⅲ 介護人材確保と職場環境改善に向けた生産性向上、経営改善支援」
「Ⅳ 多様なニーズに対応した介護基盤の整備、制度の持続可能性の確保」
という4つのテーマに分けて整理している。
当記事ではこのうち、「Ⅱ 地域包括ケアシステムの深化」の中の「3.有料老人ホームの事業運営の透明性確保、高齢者への住まい支援」について取り上げ、
1.有料老人ホームについての見直しの概要
2.相談支援に関するケアマネジメントの新類型
3.実務面からみた課題
について、有料老人ホームに関心がある業界関係者に加えて、一般の消費者(入居検討者)にとっても分かりやすくお伝えする。
1. 有料老人ホームについての見直しの概要
有料老人ホームのあり方については、介護保険部会とは別に「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」でとりまとめ1が2025年11月5日に公表されている。このとりまとめも踏まえて、介護保険部会にて引き続き審議され、「介護保険部会意見」が取りまとめられた。その中に有料老人ホームに係る見直しの方向性も含まれている(図表1参照)。
見直しの方向性は、全体として有料老人ホームの事業運営の適正化等を通じて、利用者保護と利用者への支援を徹底し、健全な業界の発展を目指すものと考えられるが、その主要な柱のひとつとして、住宅型有料老人ホーム(以下、「住宅型」という)の入居者のための介護サービス計画(ケアプラン)作成と生活相談の費用負担の取扱いを見直す動き(「相談支援に関するケアマネジメントの新類型」の創設)が挙げられる(図表1⑹参照)。

これと関連して、いわゆる「囲い込み4」への対策として、ケアマネ事業所=居宅介護支援事業所(以下、「居宅事業所」)やケアマネジャーの独立性の担保等が盛り込まれている(図表1⑷及び図表2参照)。住宅型の中には、入居者獲得のため家賃を近隣相場より低額に設定し、一方で必ずしも必要の無い介護サービス(過剰なサービス)の提供を行うことで、介護保険からの収入で事業を成り立たせている事業者がいるのではと指摘されてきたことへの対策とみられる。

以下では、前述の「相談支援に関するケアマネジメントの新類型」の創設について詳細に見ていくこととする。
2. 相談支援に関するケアマネジメントの新類型
ケアプラン(介護サービス計画)の作成を含む以上、新類型は「居宅介護支援」から発展するものといえる。主として、居宅事業所が、住宅型への入居者への対応のために新たに指定を取ることが考えられる。
第131回介護保険部会資料3から、新たな相談支援の類型の要点を以下のとおり抜粋した。

注目されるべきは、これまでの住宅型の入居者のケアプランは利用者負担が無かったところ、今後は、利用者負担(原則1割)となる点である。
居宅事業所の作成するケアプラン有料化については、改革工程において、「第10期介護保険事業計画期間の開始(2027年度)までの間に結論を出す」とされていたところ、第9期では結論が見送りとなっている中で、結果的に唯一、住宅型の新類型では結論が出た領域とも考えられる。その根拠として介護付きホーム(特定施設入居者生活介護)との均衡、すなわち介護付きホームではケアプランは介護保険サービスに包含されている(=利用者負担あり)という点が理由に挙げられているが、新しい住宅型のあり方を「介護付きホーム(特定施設入居者生活介護)」に寄せたものとしてみるか、引き続き在宅型の介護サービス(訪問介護等)を利用する拠点としてみるかにより、評価が分かれるであろう5。

3. 実務面からみた課題
続いて実務面で見た課題について見ていきたい。例えば以下のような論点が考えられる。

⑴集金業務について、新類型の指定を取るのは多くが居宅事業所と考えられる。現状、居宅事業所では、ケアプランは10割給付(利用者負担無し)であることから、利用者に対する集金業務は行っていない。今後、住宅型の入居者について、従前には行っていない現金の集金・口座振替依頼書の取付・入金確認・督促など多様な業務が発生するため、零細な居宅事業所にとって負担は少なくない。新たに指定を取る手間も含めた業務負担が足かせとなり、小規模の居宅事業所で新類型の指定の取得が進まず、かえって併設・隣接の居宅事業所(相対的に大手事業者の系列が多いとされる)へ住宅型の利用者が集中する可能性もある。その場合は「ケアマネ事業所やケアマネジャーの独立性を担保する体制」の効果に疑問が生じかねないといえる。
⑵セルフケアプランについて、介護サービス計画(ケアプラン)については居宅事業所の介護支援専門員(ケアマネジャー)に作成してもらうほか、利用者みずからがケアプランを作成することも可とされている。利用者負担を嫌って、ケアマネジメントの質に問題のあるセルフケアプランが増える可能性が指摘されている6ほか、住宅型の運営事業者等が保険外サービスにより作成を代行し、サインのみ利用者が行って、形式上セルフケアプランとして提出することも考えられる。
さらに「生活相談」について、従前より住宅型やサ高住では「生活相談」が利用料に含まれる形で業務として行われているところである。住宅型については「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」において、サ高住においては、高齢者の居住の安定確保に関する法律に、状況把握サービスと生活相談サービスが基本サービスとして記載されている。
新類型の⑶「生活相談」が、既に利用者負担で実施されている、住宅型やサ高住で行われる生活相談と、どのように異なるのか、住宅型の運営者に対して新類型の事業所が相談の結果をどのように働きかけるのか、さらに利用者にとってどのような付加価値があるのかが見えていない7。
4. むすびに
有料老人ホームの在り方については、前述のとおり、事業運営の適正化等を通じて、利用者保護と利用者への支援を徹底するといった取組が必要とされるところであり、新類型の創設(ケアプランの有料化)だけではなく多面的にかつ慎重に検討をすすめなければならない。今後、令和9年度介護報酬改定に向けて、介護給付費分科会等でさらに検討が行われるところであるが、介護保険部会意見で目指している見直しの方向性や目的が実現されるか、関係者の建設的な検討がされるよう期待しつつ注目していきたい。
- このとりまとめは2025年11月10日に開催された第128回介護保険部会にて参考資料として共有された。
- いわゆる「紹介センター」の質の確保を推進する取組である。現状の高住連(高齢者住まい事業者団体連合会)の「紹介事業者届出公表制度」https://koujuren.jp/todokede/(アクセス日 2026/01/15)を基礎として発展するものとみられる。筆者の別なレポート(https://www.sompo-ri.co.jp/topics_plus/20250805-19572/)も参照されたい。
- 本件は、あり方検討会の議論に重ね合わせ、過去からの制度的課題として積み残されてきたケアマネジメントに対する負担のあり方を段階的に見直す選択肢の一つとして、「部分的な有料化」案が提示されたものとみられる。今後、詳細の要件や報酬設定等について介護給付費分科会等で議論することとされている。
- 「囲い込み」については、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)でも同様の議論がされてきた。本稿での「住宅型」には原則として、有料老人ホームに該当するサ高住を含む。
- 「住宅型有料老人ホームは、在宅サービスも外付けサービスであるなど、住まいと同様の仕組みであるところ、これに対して利用者負担を求める場合、住む場所によって取扱いが変わるということになり、仕組みとして不適当」とする意見があった。(第132回介護保険部会(2025年12月22日)資料1)
- セルフケアプランの利用率について、0.05%(平成30年度)という調査結果がある。(三菱総合研究所)
- この点は注2のとおり今後、介護給付費分科会等で議論されることとなっている。全国有料老人ホーム協会(有老協)では二重徴収となる可能性を指摘している。(https://www.yurokyo.or.jp/info/view/6251 アクセス日2026/01/15)