マクロ経済・公共政策

軽くなる学歴の重み

上級研究員 小池 理人

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 AIの台頭によるホワイトカラー職の消滅危惧や、人手不足に伴う現業の待遇向上などを背景に、大学不要論をはじめとした学歴と仕事に関する議論が活発化している。本稿では、今月24日に公表された賃金構造基本統計調査を用いて、学歴別の賃金の実態について確認していく。
 まず、額面金額1についてみると、昨今の賃金上昇の影響を受けて、中学卒、高校卒、大学・大学院卒2のいずれも上昇している(図表1)。上昇ペースは、中学卒が最も速く、高校卒、大学・大学院卒と続く形となっている3。中学卒は建設業をはじめとした現業職の比率が高いことから、昨今の人手不足による賃上げの恩恵を大きく受けているものとみられる。
 労働時間についてみると、大学・大学院卒が2019年比で増加する一方で、中学卒と高校卒に減少の動きがみられている(図表2)4。働き方改革関連法によって建設業・物流業などに対象業種が拡大されたことや、人手不足による待遇改善が進展したことなどが大きく影響したものとみられる。
 時給については、これら額面金額と労働時間を用いて算出されることから、中学卒が最も速いペースで上昇しており、高校卒、大学・大学院卒が続く形となっている(図表3)5。中学卒と高校卒は、額面金額の上昇と労働時間の減少が共に作用することで、大学・大学院卒と比較して大きく上昇している。
 以上より、中学卒、高校卒の労働者の賃金は早いペースで上昇しており、同時に労働時間の削減も進展していることが確認された。現業を中心とした人手不足が賃金を押し上げ、労働市場における学歴の重みは過去と比較して軽くなってきていることを示唆する結果と言える。そうは言っても、水準でみると依然として大学・大学院卒の賃金は中学卒・高校卒を大きく上回っている(図表4)。少なくとも現時点においては、学歴不要論のような過激な言説からは、かなりの距離があると考えて良いだろう。

  • 本稿では、一般労働者の「きまって支給する現金給与額×12カ月+年間賞与その他特別給与額」を「額面金額」、「(所定内実労働時間数+超過実労働時間数)×12カ月」を「労働時間」、「額面金額÷労働時間」を「時給」としている。
  • 分類が2019年は「大学・大学院卒」、2020年以降は「大学卒」「大学院卒」と異なるため、2020年以降は人数で加重平均を行い、「大学・大学院卒」の値を算出している。
  • 額面金額の水準は、中学卒が439.1万円、高校卒が473.9万円、大学・大学院卒が672.7万円となっている(2025年)。
  • 労働時間数の水準は、中学卒が2,148時間、高校卒が2,112時間、大学・大学院卒が2,064時間となっている(2025年)。
  • 時給の水準は、中学卒が2,044円、高校卒が2,244円、大学・大学院卒が3,259円となっている(2025年)。

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