マクロ経済・公共政策

食事補助の非課税枠拡大は人材獲得の鍵となるか

上級研究員 小池 理人

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 2026年4月から、食事の現物支給に係る所得税の非課税枠が月3,500円から月7,500円へと引き上げられた。物価高による影響を受けた対応であり、増加する家計負担を軽減するなど利点は大きい。
 一見地味に思える食事手当だが、実は数ある福利厚生制度の中で従業員の支持が厚い制度であることはあまり知られていない。労働研究・研修機構「福利厚生に関する労働者調査」によると、従業員が必要だと思う福利厚生制度・施策(複数回答可)の中で、「食事手当(31.8%)」は「人間ドック受診の補助(38.8%)」「家賃補助や住宅手当の支給(32.6%)」「慶弔見舞金制度(33.8%)」に次ぐ人気を誇っている(22項目中4位)。
 一方で、人材獲得競争を背景とした賃上げ動向に目を向けると、今年の春闘では昨年に引き続き高い賃上げが継続していると評価できるものの、伸び率は昨年から小幅に縮小している(図表1)。日本商工会議所の小林会頭のコメントによると、多くの中小企業・小規模事業者が依然として、業績の改善を伴わない防衛的賃上げを余儀無くされているという1。イラン情勢を背景としたエネルギー価格の高騰といった経済環境の悪化を考慮すると、今後もこれまでと同様の賃上げを継続することは困難であろう。
 こうした中、人材獲得を目的とした待遇向上策としての福利厚生の役割はこれまで以上に重要になっている。日本経済が物価・賃金共に上昇するようになってから数年が経過するが、所得税の累進税率は依然として変わっていない(図表2)。給与支給額が増加しても、手取りが増えにくい環境下で、非課税枠の拡大によって可処分所得を増やせる効果は大きい。企業にとっては、同じ金額を賃上げに用いるよりも、福利厚生に回した方が効果的な待遇改善を実現できる可能性があり、制度の導入・周知を進めることには一考の価値があると考えられる。

  • https://www.jcci.or.jp/news/comment/2026/0318171500.html

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