高齢者住まい探しにおける「紹介センター」の現在地 ~透明性と質の確保の取組状況~
入居先を探す高齢者を有料老人ホーム等の高齢者住まいに紹介する事業者は広く「紹介センター」(本稿では以下、「紹介事業者」という)と呼ばれ、高齢者住まい探しにおける存在感を高めつつある。
ただし、一部の事業者では紹介事業の透明性や質の確保という点で課題があるとされている。
2024年秋に、難病の高齢者の入居紹介に対して通常より高額な紹介手数料が紹介事業者に支払われているとの報道をきっかけに、要介護度や医療依存度に応じた紹介手数料が入居後の社会保障費をあてにしたものではないかと問題視する声が上がった1。
本稿では、本年3月に公表された紹介事業者の実態調査報告書を踏まえ、紹介事業の透明性や質の確保の現状と関係が深いとみられる設問の回答結果について取り上げ、解説する。さらに、今後、紹介事業者が高齢者に関わる事業者として健全に発展していくための期待について述べることとする。
1.関連団体や政府の対応
報道を受け、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の事業者団体で構成される高齢者住まい事業者団体連合会(略称:高住連)では、運営している「紹介事業者届出公表制度」(以下、「届出公表制度」)2における紹介事業者の遵守項目の見直し(2025年1月届出分以降)を行った。
厚生労働省は2024年12月6日付で有料老人ホーム設置運営標準指導指針を改訂した3ことに加え、2025年4月以降、「有料老人ホームにおける望ましいサービスのあり方に関する検討会」(以降、「検討会」)を開催し、2025年11月5日に取りまとめを公表した4。
「取りまとめ」では「Ⅱ.現状と課題、1.有料老人ホームの運営及びサービス提供のあり方、(4)入居者紹介事業の透明性や質の確保」の中で「公益社団法人等が一定の基準を満たした事業者を優良事業者として認定する仕組みの創設」など対応の方向性が示されている。

検討会と並行して、2025年度下半期に老健事業(老人保健事業推進等補助金)により紹介事業者の実態把握を目的として「高齢者住まい入居者紹介事業の適切な事業運営に関する調査研究事業」(以下、「本事業」という)が実施され、2026年3月に報告書が公表された5。

2.報告書における注目すべきポイント
報告書によると本事業では有識者からなる検討会を設置し、アンケート(紹介事業者及び有料老人ホーム等の運営事業者)、ヒアリング(紹介事業者)や事例調査を行っている。
以下では、紹介事業者へのアンケート調査結果(n=243)のうち、紹介事業の透明性や質の確保と関係が深い設問の回答結果について、高住連の届出公表制度における「遵守項目」や「対応の方向性」と対比させつつ解説する6。
⑴紹介する施設の範囲
遵守項目の最初の項目であるが、遵守できていない事業者が約6割あり、今後、遵守割合を向上させる取組を高住連及び紹介事業者の双方に期待したい。

⑵紹介手数料の受領に関する説明
上記⑴「紹介する施設の範囲」と併せて、相談者が利益相反の発生可能性を認識し、必要に応じてけん制できるようにするためにも重要な説明事項と考えられるが、アンケートへ回答しなかった事業者がいることを踏まえると、さらに実施率が落ちることも考えられる。

⑶個人情報保護・プライバシーポリシーの公表
プライバシーポリシーの公表は遵守項目であるが、遵守できていない事業者が3割強あること、また個人情報を施設に提供することや、紹介に着手することなどの権利義務関係が書面で明確化されていない事業者が半数弱あることを踏まえると、後にトラブルとなる潜在リスクが放置されている状態ともいえるため、早急な改善を望みたい。

⑷住まい事業者に対する課金形態
検討会のとりまとめにおいて「社会保障費の使途の適切性に疑念を持たれる事案が明らかになった」との記載があること、また遵守項目でも「社会保障給付費をあてにしたとみなされる金額設定は厳に慎む」とされていることから、要介護度や医療依存度に応じた紹介手数料の設定については、見直しの必要性が示唆される。

3.おわりに(今後への期待)
以上の点を踏まえると、紹介事業者が社会からより信頼を得ていくための透明性や質の確保の取組の現在地としては道半ばともいえるが、今後、届出公表制度の運営や2027年度以降に発足する予定の優良な事業者の認定制度等を通じて、透明性や質の底上げの取組が継続されるものとみられる。
近年では、高齢期を迎えるにあたり介護はもちろん、それ以外の資産管理や住まいのあり方について、早めの備えを促そうとする取組が金融機関、ハウスメーカー、高齢者終身サポート事業者などの高齢者に関わる事業者で始まろうとしている8。紹介事業者も高齢者の住まいや生活全般を支える支援の一端を担う存在であることから、今後は他の民間事業者や公的機関とも連携しつつ、高齢者支援事業に携わる関係者の一員として健全に発展していくことが望まれる。その際に透明性や質の向上がますます重要になるとみられることもあり、引き続きの関係者の努力に期待したい。
- 必要に応じて筆者の過去のレポート( https://www.sompo-ri.co.jp/topics_plus/20250805-19572/ )も参照されたい。
- https://koujuren.jp/todokede/ (アクセス日2026/04/23)
- 全国有料老人ホーム協会の次の記事も参照されたい。https://www.yurokyo.or.jp/info/view/5622 (アクセス日2026/04/23)
- https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_56898.html (アクセス日2026/04/23)
- PwCコンサルティング合同会社が事務局。https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/track-record/assets/pdf/health-promotion-business2026-11.pdf (アクセス日 2026/04/22)
- アンケートに回答した紹介事業者の98.8%が届出公表制度への届出を行っていることから、届出公表制度における遵守項目は遵守されるべきという前提で述べる。
- 厚生労働大臣が定める特掲診療科の施設基準等別表第七に掲げる疾病等
- ①Advance Life Planning 調査研究委員会2024 年度 研究報告書(トラスト未来フォーラム)https://trust-mf.or.jp/pdf/other/20250313.pdf ②ALPシンポジウム第2回『人生100年時代、いまから始めるライフプランニング』(2026年2月19日開催)https://www.iog.u-tokyo.ac.jp/news/6415/ など
(いずれもアクセス日2026/04/27)