マクロ経済・公共政策

生成AIブームの死角:「第2次」車載半導体不足の構造的リスクと自動車産業

上級研究員 高橋 修平

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 アメリカの株価(図表1)が示すAI関連銘柄の高騰は、世界的な「AIインフラへの巨額の設備投資」という実体経済の動きを強く反映している。 巨大IT企業各社が、データセンター構築などへ競って資金を投じ、AI向け半導体の需要が急増しているからだ。この巨大な需要の波を受け、半導体メーカーが利益率の高いAI向け製品へ生産をシフトした結果、自動車産業にしわ寄せが及び始めている。例えばホンダは、数カ月前に公表した2026年3月期決算で、半導体供給不足に伴う四輪減産等によって1,500億円もの営業利益押し下げ要因があったことを開示したほか、決算資料内では、レアアースと並んで「メモリの供給リスクの顕在化」について警戒感を表明した。その懸念がいま、現実のものとなっている。
 

 2020年代初頭のコロナ禍でも、自動車生産が休止から再開に転じたタイミングで車載半導体が一時不足したが、今回の「第2次」車載半導体不足とも言える事態は、より構造的な2つの要因によってもたらされている。

 一つは、すでに触れたが、半導体業界における「生産リソースの再配分」だ。近年、巨大IT企業や新興のAI開発企業などが、生成AIの開発・利用に必要なAIサーバーを大量に格納するためのデータセンターの建設を活発化させている。こうしたなか、半導体メーカーは、AIサーバーに不可欠な「HBM(高帯域幅メモリ)」など利益率の高い製品群へ生産能力を集中させている。その結果、自動車の制御システム等で今なお主流である旧世代のメモリ(DDR4等)の生産が縮小され、供給不安が生まれている。

 加えて、巨大IT企業は、長期契約や生産ラインへの共同投資といった手段で、半導体メーカーの生産能力を確保している。そのため、自動車業界は、供給の優先順位で劣後し、必要な半導体を安定的に確保できない「買い負け」のリスクに直面している。

 SDV(ソフトウェア定義車両)化やEV化の進展により、車1台あたりの半導体搭載量が増加する中、こうした需給逼迫は自動車メーカーの部品調達コストを押し上げる要因となっている。結果、安定確保が困難になる「量の問題」と、コストが高騰する「価格の問題」の二重苦に陥っているのだ。

 まもなく発表される2026年度第一四半期決算では、為替動向や新車販売台数といった表向きの指標に注目が集まりやすい。しかし、企業の収益力を削る半導体供給の構造変化を見落としてはならない。自動車メーカーはいま、半導体に関する「サプライチェーン危機」ともいえる状況に陥りつつある。こうした中、経済産業省や業界団体が主導する情報共有の仕組み作りが始まるなど、新たな動きもみられる。これまでの部品メーカーとの協業関係をさらに深化させ、自動車メーカー自身も半導体の調達網の再構築に深く関与していく姿勢が求められる。

米国株価(図表1)

(出典)Macrobond 

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