経済問題でもある健康問題
厚生労働省が実施する食生活改善普及運動では、生活習慣病の予防のほか、生活機能の維持・向上の観点から、栄養・食生活の改善の重要性が指摘されている。特に今年度は、「まずは、毎日あと一皿ずつ野菜と果物をプラス」が重点テーマとして掲げられている。実際のデータをみても、日本人の野菜摂取目標が350gであるのに対して実際の摂取量は258.7g、果物摂取目標が200gであるのに対して実際の摂取量は78.1g1と少なく、確かに野菜・果物共に摂取量の増加が求められる状況にある。
しかし、現実には野菜や果物の購入数量は大きく減少している。家計調査をみると、生鮮野菜及び生鮮果物の購入数量は共に水準を大きく切り下げている(図表1)。価格上昇が続く中、家計が野菜や果物への消費を抑制している可能性が考えられる。
厚生労働省が示す野菜や果物の摂取量増加は健康を考える上で重要な行動指針である。一人ひとりが食生活の改善に取り組むことが重要であることは言うまでもない。一方で、物価上昇というマクロ経済の問題が野菜や果物の摂取量を抑制しているとするならば、単なる個人の意識の低さや自己責任で片づけられる問題ではない。
特に懸念されるのは、所得によって健康的な食生活を維持できる度合いに差が生じることである。物価上昇が続けば、経済的に余裕の無い世帯ほど野菜や果物の購入数量を減らさざるを得ず、経済格差がそのまま健康格差に繋がることになりかねない。
こうした格差を縮小させるためには、個人への啓発だけでなく、健康的な食生活を経済面から支える視点も重要になる。食料供給体制の整備や低所得世帯への支援など、経済政策と健康政策とを組み合わせた総合的なアプローチを検討する余地があるだろう。
- 目標値は厚生労働省「健康日本21」、実績値は厚生労働省「国民健康・栄養調査」