シティ・モビリティ

今後、子どもや高齢者も「多極集住」~地域別将来推計人口から見る2050年の地域②~

上席研究員 岡田 豊

国立社会保障・人口問題研究所の地域別将来推計人口によると、年少人口、生産年齢人口、高齢者人口の全てで全国に占める東京圏の人口割合は上昇する。その一方、それらの年齢別カテゴリーの全てで、都道府県における県庁所在地等の地域経済の中心都市の割合が今後上昇するところが多く、「人口ビジョン2100」に記された「多極集住」が進む。「人口ビジョン2100」で期待されているような、多極集住と東京一極集中是正を両立させるためには、地域経済の中心都市が、若年層を引き寄せるサービス業等を創出・拡大し、東京圏に匹敵する賃金を実現する必要があるが、容易ではないであろう。 【内容に関するご照会先:ページ下部の「お問い合わせ」または執筆者(TEL:050-5363-4383)にご連絡ください】

1.はじめに

本稿は、国立社会保障・人口問題研究所から公表された最新の地域別将来推計人口に関するレポートの第二弾に当たる。前回は「今後は東京一極集中以上に「多極集住」へ~地域別将来推計人口から見る2050年の地域①~」と称して、年齢計の地域別人口の動向について概観したが、本稿では、年齢別に分けた地域別人口動向を考察する。

なお、前回のレポートで指摘したように、地域別将来推計人口の推計手法は、これまでの地域別の人口動向が今後も続くと仮定した一種のシミュレーション結果であり、今後の新たな社会経済の変化を反映した予測ではない。また、コロナ禍以降の人口動向は、今回の推計にあまり反映されていないことに留意すべきであることも改めて付言したい。

2.年少人口で東京一極集中や地域経済中心都市への集中が進む

年少(0~14 歳)人口を都道府県別に見ると、少子化の進行により2020年から2050年にかけて全ての都道府県で減少する。日本全体の年少人口は、30.7%減少し、これより減少率が低い都道府県は、東京圏、愛知県、滋賀県、福岡県、沖縄県に限られる(図表1)。特に、90年代後半以降、若い女性の転入超過傾向が鮮明となっている東京圏では、東京都の▲8.2%を筆頭に年少人口の減少率が低い。そのため、年少人口における全国に占める東京圏の割合(年少人口の集中度)は、2020年の28.4%から2050年の33.8%に5.4%ポイント高まる。これは全年齢の東京圏の人口が全国に占める割合の上昇度合い4.4%ポイントより大きい。年少人口の集中度は、名古屋圏(2020年8.4%→2050 年8.8%)、大阪圏(2020年14.5%→2050年14.4%)では共にあまり変わらず、年少人口では総人口以上に東京一極集中が進んでいく。

また、2020年から2050年にかけて年少人口が増加する市区町村は、つくばみらい市、流山市、印西市、東京都区部の10区、武蔵野市、狛江市、御蔵島村、大阪市西区、大阪市北区、中城村の19のみで、東京圏の通勤圏以外ではわずか4つしかない。少子化対策の成功事例としてメディアで喧伝される自治体は数多くあるが、実際に年少人口が増加に転じる事例はほとんどないことがわかる。一方、少子化対策がうまくいかず出生率が低迷する東京都区部において、その半分近くの区で年少人口が増加する。

これらから、年少人口という点では若い女性の数が大きな意味を持つことがわかる。少子化対策で出生率が上昇しても、若い女性の流出が続けば、実際の年少人口の増加、ひいては将来の総人口の増加に結び付きにくいからだ。大都市のように若い女性が多い地域では、一人の女性が生涯に産む子どもの数を増加させる少子化対策が重要である一方、地方圏のように人口減少が進み若い女性が少ない地域では、少子化対策以上に若い女性を引き寄せる対策が重要であろう。

次いで市区町村別に見ると、三大都市圏以外の多くの県庁所在地で年少人口が大幅に減少するにも関わらず、当該道府県に対する割合(人口集中度)が高まっている(図表2)。この背景には、三大都市圏以外の県庁所在地の多くは当該道府県で人口が非常に多く、若い女性の働くサービス業や保育、教育機関の充実度で当該道府県内の他の都市を大きく引き離しているため、今後、若い女性が集中する等があげられよう。

3.生産年齢人口でも東京一極集中や地域経済中心都市への集中が進む

生産年齢(15~64歳)人口を都道府県別に見ると、2020年から2050年にかけて全ての都道府県で減少する(図表3)。特に、三大都市圏と地域経済の中心となる政令指定都市を抱える都道府県以外では生産年齢人口の減少率は大きく、秋田県のように2020年から2050年にかけて半減するところも出てくる。

一方、東京圏では生産年齢人の減少率が低いため、生産年齢人口における全国に占める東京圏の割合(人口集中度)は、2020年の31.1%から2050年の36.3%に高まる。生産年齢人口の集中度は、名古屋圏(2020年9.1%→2050年9.1%)、大阪圏(2020年14.4%→2050年13.8%)となっており、生産年齢人口でも東京一極集中が進む。

しかし、市区町村別の人口集中度では違う特徴が見られる。図表4は県庁所在地の、都道府県における生産年齢人口の割合(人口集中度)を見たものである。東京都区部を除く県庁所在地の多くで生産年齢人口は減少するものの、人口集中度は高まっており、特に三大都市圏以外で人口集中度は大きく上昇する。生産年齢人口の集中度では働く場所の多寡が影響しがちであるが、これらの都市は働く場所という点で当該道府県内の他都市を大きく引き離しているためであろう。

4.後期高齢者も地域経済の中心都市に人口が集中

高齢者(65歳以上)人口を都道府県別に見ると、2020年から2050年にかけて三大都市圏と地域経済の中心となる政令指定都市を抱える都道府県で増加する一方で、約半数の道府県で高齢者人口は減少する(図表5)。また、東京都、愛知県、沖縄県以外の道府県では高齢者人口は2050年までにピークを迎える。

次に、東京圏では高齢者の人口増加率が高いため、全国の高齢者人口に占める東京圏の割合(人口集中度)は2020年の25.7%から2050年の29.9%に高まる。また、高齢者の約半分を占める後期高齢者(75歳以上)では、東京圏の集中度は2020年の25.8%から2050年の29.2%に上昇する。名古屋圏(65歳以上:2020年8.4%→2050年8.8%、75歳以上:2020年8.4%→2050年8.8%)、大阪圏(65歳以上:2020年14.5%→2050年14.4%、75歳以上:2020年14.7%→2050年14.7%)は、全国に占める高齢者人口の集中度はほぼ変わらず、高齢者においても東京一極集中が進んでいく。

ただし、高齢者人口の東京圏への集中度の上昇度合いは、年少人口や生産年齢人口に比べて低い。この背景の一つには、高齢期に定年等で仕事から解放され、生まれ故郷等の東京圏外に移住する人が少なくないことが影響しているように考えられる。そこで、高齢者のうち有業者が多い前期高齢者(65~74歳)を見ると、日本全体に占める東京圏の割合(人口集中度)が25.7%(2020年)から30.9%(2050年)と5.2%ポイント上昇している。これは生産年齢人口の東京圏の人口集中度の上昇度合いとほぼ同じ水準である。都道府県別に前期高齢者の人口増減を見ると、2020 年~2050 年に日本全体の前期高齢者は▲16.5%であり、増加するのは東京圏以外では愛知県、滋賀県、京都府、大阪府、沖縄県にとどまる。

そこで、県庁所在地別人口を前期高齢者と後期高齢者に分けて考察してみよう。前期高齢者については団塊の世代の後期高齢者入り以降、ほとんどの県庁所在地で減少するものの、後期高齢者は全ての県庁所在地で増加する。また、前期高齢者については生産年齢人口と同様に、多くの県庁所在地で人口集中度が高まっており、特に三大都市圏以外の県庁所在地で人口集中度が大きく上昇する(図表6)。

一方、後期高齢者については団塊の世代の加入に伴って、増加するところも多い。しかし、後期高齢者の増減に関わらず、多くの県庁所在地で人口集中度が高まっており、特に三大都市圏以外の県庁所在地で人口集中度が大きく上昇する(図表7)。この背景の一つには、後期高齢者は有業者が少ないものの、医療・介護、買い物等へのアクセシビリティにより県庁所在地等の地域経済の中心都市での居住を選択する者が多いことが挙げられよう

5.「人口ビジョン2100」と今後の地域別人口の関係

2024年1月に発表された「人口ビジョン2100」を作成した民間のメンバーは「消滅可能性自治体」を発表した「日本創成会議」のメンバーが多い。それゆえ、2024年度以降、2014年に開始された地方創生のような形で日本全体と地方の二つの人口減少への対策が大きな政策となることが想起される。実際に、2024年1月の通常国会における総理の所信表明演説では「人口ビジョン2100」に言及された。

この「人口ビジョン2100」では、若い女性の意識をより重視していくことが明記されている点は評価できよう。コロナ禍前は、若者、特に女性の東京一極集中が加速化していたにも関わらず、地方創生では若い女性という視点はあまり重視されなかったからだ。

一方で、地域経済の中心都市や東京圏における若い女性の転入超過は長年進んでおり、それに伴って前述のように地域経済の中心都市や東京圏における子ども世代や生産年齢人口の集中度が高まっていく。出生・育児は、若い世代の所得水準に加え、子どもの教育環境整備と密接に絡んでいる。そのため、地域経済の中心都市や東京圏への若い女性の集中に歯止めをかけるのは容易ではない。

若い女性の地方分散の鍵は、若い女性が働きたい仕事を確保することに加え、リモートワークの拡大や子どもを主なターゲットにしたオンライン教育の普及が必要である。特に後者では、兵庫県淡路市に本社機能の一部を移転させたパソナグループの取り組みが参考になろう。従業員の子ども向けのオンラインの学習塾は、従業員以外の地元住民にも利用希望が高いとされ、今後の動向が注目される。

また、これまで考察してきたように、年少人口、生産年齢人口、前期・後期高齢者人口の全てで多極集住が進んでいる。都道府県に占める県庁所在地の人口割合(人口集中度)が2020年から2050年にかけて最も大きく増加する札幌市を例に考察すると、人口移動がこれまでどおりであれば人口集中度の上昇度合いは7.9%ポイントとなるが、人口移動がない条件でシミュレーションした封鎖人口は2.4%ポイントにとどまる。実際に総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」により2023年の札幌市を巡る人口移動を見ると、札幌市以外の北海道からの転入超過は1万881人であるのに対し、東京圏に対しては2294人の転出超過に留まっている。このように、多くの地域経済の中心都市にとって、東京圏への流出以上に周辺自治体から流入していると推察されよう。

「人口ビジョン2100」では、地域経済の中心都市への人口集中は抑制せず、東京一極集中是正を実現する方針だ。この方針を実現するには、地域経済の中心都市が東京圏にない、若年層を引き寄せるサービス業等を創出・拡大し、東京圏に負けない高い賃金を実現する必要があるが、容易ではないであろう。外国人向けのスノーリゾートで全国一の高賃金を実現している北海道・ニセコの事例は、オリジナリティある地域資源を徹底的に生かしてブランド化に成功したレアケースと思われるが、支店経済といわれ、全国の大都市圏のビジネスモデルが広がっている地域経済の中心都市ではあまり見られない。

次に、「人口ビジョン2100」では、いわゆる移民政策はとらないとして、外国人労働者はできる限り高度人材に限定する方向を打ち出している。しかし、地方分散が進んでいるのは技能実習であって、高度人材ではない。今後、外国人の地方分散を進めるには、外国人労働者には単純労働相当から始まったとしても高度人材に向けた経験を積んでもらう中で、地方経済の中心都市でやりがいのある仕事が見出されることが重要であろう。

6.おわりに

地域経済の中心都市は働く場だけではく、医療・介護、公共交通、買い物といった高齢者の生活環境でも当該道府県内で他の都市に比べて優位にたっており、あらゆる年齢階層が地域経済の中心都市に集中する状況は今後も続く。

一方、東京圏と地域経済の中心都市では賃金の差が大きく、その解消は容易ではない。そのため、東京一極集中を是正するためにはフルリモートワークの拡大による転職なき移住が有力な手法の一つであろう。IT人材等がフルリモートワークを利して全国各地で多様な働き方を実現するだけにとどまらず、移住先での副業・兼業を通じて、移住先の地元企業のビジネスモデル革新に貢献することも期待できる。

最後に、今後は地域経済の中心都市では生産年齢人口の減少が大きな課題である。周辺地域の人口の減少の影響で働く世代の流入が減少するからだ。さらに、団塊の世代が後期高齢者となり、有業者の多い前期高齢者が今後大きく減少する一方、有業者の少ない後期高齢者が大きく増加する。このため、地域経済の中心都市では外国人材への依存度が高まっていくのは間違いない。地域経済の中心都市は、外国人材が単純労働から始まりながらも働きながら高度労働へ移行できる環境を整備することと、その家族も含め共生できる社会を構築していく必要があろう。

PDF書類をご覧いただくには、Adobe Readerが必要です。
右のアイコンをクリックしAcrobet(R) Readerをダウンロードしてください。

この記事に関するお問い合わせ

お問い合わせ
TOPへ戻る