シティ・モビリティ

総量規制は地方圏の人手不足に大きな影響
~外国人の「総量規制」の難しさ②~

上席研究員 岡田 豊

東京都以外で日本人が減少する中、全ての都道府県で外国人は増加しており、著名リゾートを中心に、外国人が1割以上を占める自治体が続出している。また、在留資格別に見ると、地方圏では技能実習が多い。技能実習は特定技能への移行を通じて、日本での長期労働の「入り口」となりつつあるため、外国人を全人口の1割程度を目途とする「総量規制」では、技能実習を速やかに、かつ大きく制限する必要がある。しかし、その結果として地方圏の人手不足に拍車をかけるのは間違いなく、三大都市圏のホワイトカラーの地方分散など、難易度の高い地方圏の人手不足への対応策が必須であろう。

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1.はじめに

2025年に入ってから、外国人政策がにわかに注目を浴びるようになった。特に「総量規制」、具体的には、日本人と外国人を合わせた日本全体の人口に占める外国人を1割程度といった上限を定めて制限する政策が浮上している。
 外国人人口については、住民基本台帳に基づく2025年1月1日の人口と2024年の人口動態が総務省から2025年に公表されている。それによると、外国人が調査対象になった2013年以降、外国人人口は新型コロナウイルス感染症の影響等で落ち込んだ時期を除いて増加基調にあり、2024年1年間の増加数は2013年以降では最大となった。そこで、本稿では地域別に見た外国人の動向から外国人の総量規制を考察する。なお、日本全体における外国人の動向については、岡田豊「Insight Plus 総量規制には社会的合意が不可欠~外国人の総量規制の難しさ①~」を参照して欲しい。

2.東京一極集中も外国人増加が寄与

2024年の日本人と外国人について都道府県別増加数を見ると、日本人は東京都を除く46道府県で減少している一方、外国人は全都道府県で増加している(図表4)。また、都道府県の中で唯一日本人が増加している東京都でも、外国人の増加数は日本人の4倍以上である。つまり、日本全体同様に地域別でも、少子高齢化の進展で日本人の減少が進む中、外国人が人口減少を緩和しているといえる。
 これを新型コロナウイルス感染症前の2019年(次ページ、図表2)と比較すると、外国人の存在感の高まりがわかる。例えば、唯一日本人が増加した東京都を見ると、2019年の日本人がプラス68,547人、外国人がプラス25,646人であるのに対し、2024年はそれぞれプラス16,825人、プラス73,807人となっている。東京都において、日本人では少子高齢化の影響で増加ペースは大きく鈍化しているのに対し、外国人は大きく増加しており、東京都の人口増加は主に外国人に依存しているとさえいえよう。
 転入から転出を差し引いた社会増加を見ると、2024年の東京都では、日本人がプラス72,052人に対し、外国人がプラス71,039人と、日本人と外国人はほぼ拮抗している。また、神奈川県、千葉県、埼玉県の社会増減では、外国人が日本人を大きく上回っている。東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)の社会増加、つまり東京一極集中も今や外国人に支えられている。

3.地方圏を支える技能実習

外国人人口を考察する際に用いた総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」では、最新が2025年1月1日現在のデータであるが、在留資格別に分析することはできない。そこで、2025年1月1日現在のデータに近いものとして、以下では主に2024年12月の在留資格別外国人数がわかる出入国在留管理庁「在留外国人統計」を利用する。日本全体の在留資格別外国人数では多い順に、永住者、技能実習、技術・人文知識・国際業務、留学、特定技能となっている。この5つの在留資格について、2024年と新型コロナウイルス感染症前の2019年12月と比較すると、2019年創設の特定技能の増加が最も多く、ついで技術・人文知識・国際業務、永住者と続く。
 次に、制度上は不可分な在留資格である特定技能と技能実習を合計したもの、留学、永住者、技術・人文知識・国際業務の4区分の外国人数(2024年)について、三大都市圏の東京圏、名古屋圏(愛知県、岐阜県、三重県)、大阪圏(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県)と非三大都市圏に分けて見ると(図表3)、特定技能+技能実習では非三大都市圏が圧倒的に多い。一方で、長期滞在可能な在留資格である永住者、技術・人文知識・国際業務では東京圏が多い。

4.外国人割合が非常に大きい自治体では長期滞在可能な外国人が多い

外国人は三大都市圏の方が多いが、外国人割合では地方圏(非三大圏。以下同じ)の自治体が際立つ。図表4は2025年1月1日の自治体の人口(日本人+外国人)に占める外国人の割合について市町村(含む政令指定都市行政区、東京都特別区を含む)別で見た上位20位であるが、日本全体の外国人割合(3.0%)をはるかに上回る自治体が並んでいる。さらには上位20位までの自治体全てで、総量規制で目途とされがちな「1割」を超えている。
 上位20位までのランキングの半分を占めているのは図表4にて赤字になっている著名リゾートである。また、これら著名リゾートはインバウンド急増に対応する形で、外国人割合が大きく伸びている。また、これら著名リゾートは新型コロナウイルス感染症前の2020年1月1日の数値と比べて、インバウンド急増に対応する形で、外国人割合が大きく伸びているのがわかる。

次に、2025年の外国人割合が上位20位の市町村について、外国人全体に対する在留資格別外国人割合を記したものが図表5(次ページ)である。このうち、三大都市圏にある自治体の中では、中国人やフィリピン人の永住者や、韓国人・朝鮮人の特別永住者、日系ブラジル人の定住者に代表されるように、古くからの外国人のコミュニティがあるところが多いため、在留期間が長くなる在留資格を持つ外国人が多いことがわかる。
 また、留学の割合が多い自治体がいくつかあるが、その多くは大学等の高等教育機関が集中している三大都市圏に立地している。日本に来た留学生が卒業後に日本で就職する際に主に取得する在留資格は技術・人文知識・国際業務であるが、この在留資格は資格更新回数に制限はなく、長期滞在が可能である。実際に図表5の自治体で見ると、留学の割合が大きい自治体は技術・人文知識・国際業務も大きい。
 一方、著名リゾートで目立つのも技術・人文知識・国際業務である。インバウンドに人気のリゾートでは外国語を話すことができる人材が必要であるからだ。なお、著名リゾートである恩納村で留学生が多いのは、沖縄科学技術大学院大学が立地しているためである。
 また、著名リゾートのうち8つがスノーリゾートである。スノーリゾートでは、技術・人文知識・国際業務だけでなく、ワーキングホリデーなどに該当する在留資格「特定活動」にて、冬季だけ働く外国人が多い。なお、図表5の市町村別在留資格別外国人割合は年末時点の数値であり、冬季シーズン真っただ中の調査であるため、特定活動が大きくなっている。
このように、外国人割合の非常に大きい自治体では特定活動を除き、長期滞在可能な在留資格の外国人の割合が大きい。

5.「総量規制」は地方圏の人手不足対策とセットで行うべきだが

日本全体における外国人の動向については、「総量規制」を行う場合、長期滞在可能な在留資格、留学、他の在留資格から永住者になる条件を厳しくすることについて強力な規制を設けるのは難しい。また、スノーリゾートに多い、季節変動の激しい特定活動を総量規制の対象にするのはあまり有効でない。スノーリゾートは観光分野にて今後、世界的競争力を高めていくためには、海外の言語に精通した外国人の季節労働にある程度依存せざるを得ないからだ。
 このため、総量規制において有効な政策となると、日本に入国する前の段階で受け入れ人数を減らすことができる技能実習を大きく減らすこととなろう。図表5で見たように、日本全体の外国人割合や総量規制の目途とされがちな「1割」を大きく上回る自治体では長期滞在可能な在留資格をもつ外国人が多いので、技能実習の受け入れを大幅に制限されたとしてもあまり影響がない。その一方、前述のように、技能実習の受け入れの多くは地方圏であるため、地方圏の人手不足が一気に加速する可能がある。技能実習から特定技能に移行した後に転籍可能となるため、地方圏から賃金の高い三大都市圏で職を求める外国人が増えると予想されるからだ。
 このように考えると、技能実習の受け入れを大幅に規制する際、地方圏の人手不足への対応が不可欠である。しかし、地方圏の人手不足に有効な解決策が見当たらないこともあって、技能実習を大量に受け入れているという現実と二律背反に陥ってしまう。

6.おわりに

インバウンドのオーバーツーリズムも相まって、日本における外国人の量的過多が認識されやすい社会経済環境にある中、外国人の「総量規制」が注目を集めているのは間違いない。日本に在留中の外国人を対象に、長期滞在可能な在留資格に強力な規制を設けることは現実的ではない以上、今後、中長期滞在が増えて、コントロール可能な短期滞在が減っていく中、短期滞在者をほとんど受け入れられない状況に陥る可能性があろう。
 岡田豊「Insight Plus 数量制限には社会的合意が不可欠~外国人の総量規制の難しさ①~」で見たように、外国人を「1割」といった目途の範囲内にとどめるためには、今すぐに技能実習を大胆に制限することになろう。今すぐに受け入れ人数を大きく削減できないのであれば、目途とされがちな「1割」に達する時期をあまり遅らせることはできず、かつ目途に達した後に外国人の出入りをプラスマイナスゼロとすることは難易度が高いからだ。
 一方で、技能実習を大幅に規制する際、外国人が担っているブルーカラー分野を中心に地方圏の人手不足への対応が不可欠である。具体的には、地方圏の元気な高齢者にブルーカラーの仕事を担ってもらうだけなく、AIなどで余剰になりそうな三大都市圏のホワイトカラーに地方圏のブルーカラーになってもらうことも考えられる。その際、地方圏のブルーカラーの賃金を大幅に引き上げて、地方圏から三大都市圏へ容易に転籍されないようにするなど、これまでにない強力な対策が欠かせないであろう。
 このように考えると、「総量規制」は政策目標がわかりやすい政策であるが、地方圏の人手不足対策という、難易度の高い政策とセットになっている。総量規制よりは、地方圏の人手不足対策を進めながら、それに応じて技能実習の受け入れる数をできるだけ減少させることで、外国人割合の上昇スピードをできるだけ緩和することが現実的な解であろう。

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