「並ばない万博」の不都合な真実
～人気の企業パビリオンの予約には不満一杯～

こうして事前予約にあぶれた者の最後の希望は、入場者にだけ許された当日先着予約となる。入場者は入場後10分たってから当日予約ができるからだ。そのため、この最後の希望にすがろうと、9時入場に殺到する。現段階で、万博への来場予約状況をみると、１日単位ではほぼ「空いている」となっているが、時間帯別でみると「9時入場」についてだけ埋まっている日が少なくないのは、こうした背景もあろう。
　この当日予約は先着順であるため、9時開場後にいち早く入場する必要があるが、9時少し前に入場ゲートに来ても間に合わない。なぜなら、9時前から入場希望者が殺到するからだ。地下鉄利用でいち早く入場するためには、なんと早朝5時台到着の始発便で、大阪メトロ夢洲駅に到着する必要があろう。さらに、その地下鉄利用者を出し抜くべく、地下鉄利用者が殺到する東ゲートではなく、リムジンバスが到着する西ゲートを狙う方法がある。しかも、リムジンバス到着前の7時台にタクシーで西ゲートに乗り付ける方法が裏技として喧伝されるようになっている。これらは「並ばない万博」＝当日予約対策であるが、東ゲートも西ゲートも朝早くから到着し、そこで数時間行列することになる。
　そのうえ、会場入場後のスマホによる当日予約もかなり不毛な戦いとなる。2か月前抽選予約、7日前抽選予約、3日前からの先着事前予約で埋まった枠を除いた、残りの当日枠を奪い合うことになるからだ。当日予約はそもそも、勝ち目の低い戦いといえる。
　さらに問題なのは、当日予約サイトがかなり使いづらいものであることだ。当日予約サイトでは、パビリオンごとに、「赤色×：空き枠なし」「青色〇：空き枠多し」と表示されるが、最も曲者なのが「黄色△」である。「黄色△」とは空き枠が少ないという表示のことだが、わずかとはいえ空きがあるため、その可能性にすがってクリックしてしまう。そして、ようやく確保できたと思った瞬間、スマホ画面には、確保できなかったのでやり直してください、という意味合いの表示が現れる。
　そして、がっかりする暇もなく、当日予約を再度やり直すことになるが、これがけた違いに不評である。空きの有無に関わらず、全てのパビリオンが選択肢に登場し、それらから希望のパビリオンを選んで空きを探すことからやり直しとなるからだ。それを避けるためには、希望するパビリオンがすぐに検索できるよう、予想検索でスマホに覚えさせる必要がある。例えば、「大阪ヘルスケアパビリオン」の空き状況を素早く探すには、「お」の１字入力しただけで自動的に「大阪ヘルスケアパビリオン」が出てくるようにしておけばいいのだが、そこまで頑張るライトユーザーは少なかろう。
　こうして、9時開場後にいち早く入場できたとしても、人気のパビリオンは容易に当日予約できず、黄色△→確保できず→パビリオンの選び直しの無限ループにはまってしまう。今では、この無限ループから逃れるべく、スマホが使いづらい方向けに設置されている会場内の「当日予約端末機」¹がスマホより予約が取りやすい「裏技」と紹介されるほどだ。
　つまり、「並ばない万博」はデジタル予約を前提としているが、そのデジタル予約で希望が叶うわけではない。そして、入場前はデジタル行列に翻弄されたうえ、入場後も当日予約がままならないまま、大屋根リングに上っていても、他の並びなしのパビリオンにせっかく入場していても、当日予約のために何時間もスマホとにらめっこしてしまうのは、「並ばない」以上に不満がたまる。