【動画あり】Amazon傘下Zooxの自動運転サービスを体験
~独自車両×Uber提携で拡大目指すも、走行システムの予測精度に課題?/CES2026(3)~
CESの主要テーマであったAI活用やフィジカルAIを体現する製品・サービスの1つが自動運転です。出展企業の1つであったAmazon傘下のZooxが、ラスベガスで試験的ながら配車サービスを開始したことは、CES期間中の注目のトピックの1つでした。
今回は、あわや衝突・・・というヒヤッとした乗車体験から見えた課題やZooxの最新動向をレポートしていきます。このページの最後に主要なシーンをまとめた動画も掲載していますので、是非ご覧ください。
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※画像はいずれも筆者撮影
■利用方法
試験期間は無料で配車 ~今後はUberのアプリと提携~
2026年1月時点の利用条件は、Zooxの専用アプリをダウンロードして配車する必要があり、利用可能時間は毎日 午前11から深夜1時まで、乗車可能なのは8歳以上でペットの同伴や車内での喫煙は禁止事項となっていました。
毎晩、ディナータイムに随所でショーやコンサートが繰り広げられるラスベガスでは、夜の配車ニーズが高いのが特徴です。試験期間中のため、運賃は無料で運行されています。
乗降地点はラスベガスの中心街の一部のホテルと商業施設、娯楽施設に限定されていました。そのため、タクシーのような柔軟性はまだ無く、観光地におけるコミュニティバスのようなサービスでした。今後、乗降地点は随時追加されていくとのことです。
その後、3月に入って、ZooxとUberの戦略的提携が発表されました。2026年夏にラスベガスで、2027年半ばまでにロサンゼルスで、Uberアプリを介した配車が可能になる見込みです※1。
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■特徴は車内のデザイン
運転席を排除した独自設計~動くリビングルームへ、乗客のアメニティを充実~
米国における自動運転の社会実装ではWaymoが先行し、さらにTeslaやMay Mobility、Uberと組んだnuro、新興AVRIDEなど様々なプレイヤーが頭角を現していますが、そのほとんどが運転席のあるSUVやミニバンを改造して自動運転車として利用しています。市販の乗用車をベースに改造したほうが、FMVSS(連邦自動車安全基準)をクリアしやすいためです。
こうした競合がいる中、現状、筆者の目から見たZooxの画期的な点は、米国において、自動運転専用にデザインされたこの独自車両を当局に認めさせた点です。レベル4以上の自動運転の移動サービスでは、利用者は全員が乗客です。Zooxが突破口を開いたことで、今後、米国の自動運転プレイヤーの車両設計の自由度が高まる期待が持てます。走るリビングルームや走るオフィスの追求です。
※参考レポート(2025年9月22日発行)
Zoox、ラスベガスで自動運転タクシーを一般開放
~トランプ政権で追い風、ハンドル・ペダルの無い独自車両をNHTSAが容認~
Zooxの車内には乗客の座席しかなく、2人掛けが向き合った合計4人乗りとなっています。座席の脇には、ドリンクホルダーや充電スペースがあり、夜間には天井が星空のように光る仕掛けも。
さらに、Zooxの車内では、走行状況に関する情報提供がほとんどありません。他社の自動運転車の車内には、速度や走行ルート、センサーが認識した周囲の状況などを表示する液晶が設置されているのが一般的ですが、Zooxにはそのような液晶は存在しません。また、車両の側面から景色は楽しめますが、座席が向き合っているため進行方向の状況は見えにくい設計となっています。
「運転に関する一切のことはZooxに任せて、移動時間は座席で思い思いに過ごしてほしい」という車両設計に込められたコンセプトが感じられます。
座席脇の液晶には「あと●分で到着します」という表示が出ており、よくよく観察してみると、時折小さな文字で「もうすぐ曲がります」といったメッセージが表示されていました。しかし、メッセージが発される際に、音や光によるアラートなどは一切ないため、基本的に乗客は気づきません。この液晶では、好みの音楽を選択したり、エアコンの温度を調整したりすることができます。乗車中は、そのような車室内のカスタマイズのために操作することが主でしょう。
CES2026のZooxブースでは、走行システムの実演を見ることができましたが、実際の車内では、リアルタイムでこのような走行状況、システムの作動状況を乗客が把握する方法はありません。



【Zooxの車内】

【座席脇の液晶】
走行中、小さな文字で「Turning soon(もうすぐ曲がります)」と表示されたのを発見↓↓

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■システムの運転性向と課題
進め!進め!停まりたくないZoox ~駐車場で何度かヒヤリ、他車の動きの予測に課題?~
慎重に運転しすぎると、自動運転車は道路や交差点で立ち往生してしまうリスクが高まります。周囲のクルマの流れに乗るために、米国や中国の自動運転タクシーは総じて、ややアグレッシブな運転性向に調整されています。
ラスベガスの中心地には片側3車線、4車線の広くて平坦な道路が多く、Zooxは道路について難なく走行することができていました。周囲の車両に追い抜かれることや渋滞の原因になることがほとんどありません。時速35マイル(約56㎞)制限の道路であれば、人間のドライバーの中には少々超過して走っている人がいますから、Zooxも上限の35マイルのスピードが出ていたように推察されます。ただし、道路上においても、停車や車線変更のタイミングがやや遅いことがあり、ギリギリのタイミングで急加速、急減速になることがチラホラ。
課題が明らかになったのは駐車場の中です。
Zooxの走行ルートには、商業施設やアミューズメント施設が含まれています。駐車場の中では、誰しも低速で走行していますが、前進したり、駐車のためにバックしたり、歩行者も縦横無尽に歩いていたりと、道路上より複雑な動きをする他物に囲まれていることになります。
駐車マスに駐車しようとバックしている他車がいた際、Zooxは停車して待つという選択をしてくれません。速度を落としながらもジリジリと走行を続け、すり抜けられそうな隙間ができれば、再度速度を上げて走行を続けようとします。

一方、駐車中の他車のドライバーは、1回で駐車マスに止めることができず、切り返して前進してくることがあります。この「切り返しの可能性」をZooxは考慮していないのか、筆者は2度ほどあわや横から衝突・・・という事態に遭遇しました。急ブレーキによって衝突は回避されましたが、こうした点から、他車・他者の行動の予測に課題の残るシステムなのではないかと見ています。図解すると右記の通りですが、このシーンは動画でもご覧ください。
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■今後の事業展開
次はカリフォルニアへ進出 ~より複雑な走行環境へ、システムの高度化に期待~
サンフランシスコの郊外に本社を置いているZooxは、ラスベガスの次はサンフランシスコへの進出を宣言してきました※2。直近のUberとの提携のプレスリリースではロサンゼルスの名前も挙がっています。
ラスベガスの道路は、車線の数が多いうえ平坦です。また、街全体が観光都市であり、観光客は近距離でもタクシーやUber・Lyftを使って自動車で移動するか、整備された歩道や歩道橋を歩いています。横断歩道のある交差点などを除けば、基本的には路上の他の自動車との交錯を事故無く安全に処理できれば良く、自動運転システムにとっては走りやすい環境と言えます。
一方、カリフォルニア州の主要都市であるサンフランシスコやロサンゼルスでは、オフィス街や住宅地が混在しています。自動車の交通量も多い中、住民や通勤者が自転車や電動キックボードなど小型のモビリティを多く利用しています。また、サンフランシスコには急勾配の坂道が多く、見通しが悪い地点が多いのも特徴です。
カリフォルニアでは、周囲の自動車だけでなく、小型のモビリティや歩行者も多い状況で、それぞれの動きを予測しながら安全に走行していかなければなりません。今回、「すり抜けられそうなら、進め、進め!」という運転性向を見せたZooxですが、カリフォルニアでは他車・他者の動作の予測の高度化とそれを踏まえた運転挙動が求められそうです。
■最後に動画をどうぞ!(約4分20秒、音声なし)

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※1 Uber “Zoox and Uber Announce Strategic Partnership”, March 11, 2026
※2 <https://zoox.com/where-to-ride/>(visited March 17, 2026)