シティ・モビリティ

外国人に脱東京圏の兆し
~2025年の人口移動における外国人の存在感①~

上席研究員 岡田 豊

人口移動における外国人の影響が拡大している。2025年の三大都市圏別人口移動では、2024年に比べて東京圏の転入超過数が大きく減少し、地方創生本格化前の2014年水準に戻った。その背景の一つには、東京圏の転入超過数において、日本人だけではなく外国人の大幅減少があげられよう。その外国人において、東京圏から見た転入超過数を見ると、名古屋圏、大阪圏だけでなくその他の非三大都市圏への分散が目立ち、外国人には脱東京圏の兆しが見られる。また、外国人は人口移動に占める割合が人口に占める割合よりかなり大きく、今後の人口移動において外国人の存在はますます大きくなろう。
【お問合せ】本件に関するお問い合わせは執筆者:岡田(050-5363-4383)までご連絡ください。

1.はじめに

2025年の人口移動について、総務省統計局から2026年2月に「住民基本台帳人口移動報告」が公表された。この統計について、例年注目を浴びるのは東京一極集中に関するデータであり、公表直後の各種メディアの報道でも、東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)の転入超過が続いていることを理由に東京一極集中は継続しているという捉え方がメインになっていた。
 一方、人口そのものについては外国人に注目が集まっている。2026年2月の総選挙でも外国人政策が争点の一つとなっており、3か月未満の外国人滞在者がもたらすオーバーツーリズム問題と、3か月以上の外国人滞在者に起因する労働問題、移民問題、共生社会づくりなどについて、その「数」抜きに語られることは少ない。3か月以上の外国人滞在者について、2013年途中から在留資格をもつ住民として住民基本台帳に登録されており、外国人人口として定量的に把握できる。
 この中で、本稿では外国人の人口移動に焦点をあててみたい。人口において年々存在感を増す外国人は人口移動にいかなる影響を与えているのであろうか?
 近年の人口移動を振り返ってみれば、2020年からの新型コロナウイルス感染症は人口移動に大きな影響を与えた。日本人は東京圏などの大都市を脱出する動きを強める一方、国外から流入する外国人は一気に減少した。2022年3月頃から、新型コロナウイルス感染症関連の移動規制が世界中で緩和されるようになると、日本でも人口移動は拡大し、外国人の日本流入数は激増する中、新型コロナウイルス感染症で大きく落ち込んだ東京圏の転入超過は増加に転じた。一方、日本人における東京圏の2024年の転入超過数は新型コロナウイルス感染症前の2019年に比べて小さいなど、東京一極集中を巡る議論はやや錯綜している。
 そこで本稿では、総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」の2025年と2024年のデータを基本に、外国人の人口移動について、主に三大都市圏を巡る動向で考察したい。
 なお、都道府県や東京都特別区部等の大都市を巡る人口移動への外国人の影響については、次稿「東京都では外国人が転出超過に転じる~ 2025年の人口移動における外国人の存在感② ~」にて考察するので、参照して欲しい。

2.外国人の転入超過減少が大きく響いた東京圏

日本人と外国人を合計した、東京圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)の2025年の転入超過数(転入数-転出数)は12万3,534人となり、2024年に比べて1万2,309人縮小している。東京圏の転入超過数は2021年の8万441人を底に2024年の13万5,843人まで年々増加していたため、2024年までは東京一極集中への回帰を唱える声が少なくなかったが、2025年は東京一極集中の進行にやや歯止めがかかった形といえる。
 この東京圏の転入超過数について、外国人のデータを見ることができる2014年以降について、外国人と日本人に分けてみよう。まず、日本人の転入超過数は新型コロナウイルス感染症の影響で2020年に大きく低下したものの、2021年を底に反転し、2022年から2024年は増加していた(図表1)が、2025年の転入超過数は2024年を下回った。2015年度から本格化した地方創生の当初の目的の一つが「東京圏の転入超過数ゼロ」であり、2025年の転入超過数はこの地方創生の目標にはほど遠い状況であるものの、地方創生本格化前の2014年の10万9,480人をわずかながら上回っているだけだ。また、東京圏における日本人の転入超過数を少し長期に見ると、リーマンショック後の2011年の6万2,809人にいったん落ち込んだものの、景気回復などを契機に2019年の14万5,576人まで大きく増加していた。これらを考え合わせると、2025年の転入超過数はかなり低い水準といえる。なお、それより過去の水準で2025年の転入超過数に近い数値といえば、1984年(11万2,610人)、2005年(11万4,688人)と、かなり昔まで遡る必要がある。

≪図表1≫東京圏の転入超過数(日本人)

(出典)総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」(各年版)より、SOMPOインスティチュート・プラス作成

また、東京圏の転入超過数について外国人を見ると(図表2)、2014年~2022年は1万以下で推移した。外国人に多い技能実習は転籍の自由がほとんどなく、留学生も学校を変わらない限り移住する可能性は低いことが影響していると推察される。一方、2019年に創設された「特定技能」や留学生が卒業後に日本国内で就職する際の「技術・人文知識・国際業務」はともに転籍可能なため移住する可能性がある。新型コロナ感染症後に増加した外国人において転籍可能な在留資格を持つ者が増えていったこともあり、東京圏の外国人転入超過数では2023年は1万1,713 人、2024年は1万6,506人と大きく増加した。しかし、2025年は1万796人と一転して大幅に減少している。
 このように、日本人と外国人合わせた2025年の東京圏の転入超過数は2024年に比べて▲1万2,309人となっているが、そのうち、日本人は▲6,599人というやや減少、外国人は▲5,710人という大幅減少となっている。東京圏で外国人の割合はかなり低いものの、近年の東京圏を巡る人口移動への影響は小さくないのがわかる。

≪図表2≫東京圏の転入超過数(外国人)

(出典)総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」(各年版)より、SOMPOインスティチュート・プラス作成

3.名古屋圏、大阪圏では外国人の転入超過数が大きく「改善」

2025年における東京圏の外国人の転入超過数が1/3も大きく減少(2024年比)した背景はなんだろうか。そこで、名古屋圏(愛知県、岐阜県、三重県)と大阪圏(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県)の転入超過数を見てみよう。2025年の転入超過数を日本人と外国人を合わせると、名古屋圏は▲1万2,695人で、2024年から6,161人増加(名古屋圏は転出超過なので、転出超過が減少)している。同様に大阪圏は+8,742人で、2024年から6,063人増加している。前述のように2025年の東京圏の転入超過数は2024年に比べて1万2,309人減少したが、同様に名古屋圏と大阪圏が合わせて1万2,224人増加しており、三大都市圏計ではほとんど変化していないのがわかる。
 次に日本人と外国人に分けて見ると、2025年の名古屋圏の日本人の転入超過数は▲9,561人(転出超過)で、2024年に比べて+1,956人(名古屋圏は転出超過なので、転出超過が減少)している(図表3)。外国人を同様に見ると、2025年は▲3,134人で、2024年に比べて4,025人増加(名古屋圏は転出超過なので、転出超過が減少)している(図表4)。名古屋圏の転入超過数では日本人以上に外国人の影響が大きい。また、2025年の大阪圏の日本人の転入超過数は+7,503人で、2024年に比べて4,029人増加している。外国人を同様に見ると、2025年は2024年の▲795人の転出超過から一転して+1,239人の転入超過に転じ、2024年に比べて+2,034人と「改善」している。
 前述のように、2025年の東京圏の転入超過数では2024年比で、日本人は▲6,599人、外国人は▲5,710人となっているが、2025年の名古屋圏と大阪圏と転入超過数を合わせて考えると、日本人は+5,985人、外国人は+6,059人となっている。日本人でも外国人でも東京圏の減少分を補うように名古屋圏と大阪圏で増加しており、三大都市圏計ではほとんど変化していない中、外国人の影響は大きいことがわかる。

≪図表3≫名古屋圏と大阪圏の転入超過数(日本人)

(出典)総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」(各年版)より、SOMPOインスティチュート・プラス作成

≪図表4≫名古屋圏と大阪圏の転入超過数(外国人)

(出典)総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」(各年版)より、SOMPOインスティチュート・プラス作成

4.外国人は東京圏から名古屋圏、大阪圏に加えて非三大都市圏に分散

対名古屋圏、対大阪圏、対その他(非三大都市圏を指す)別に2025年の東京圏の転入超過数を2024年比で見ると、東京圏は日本人でも外国人でも、対名古屋圏、対大阪圏、対その他の全てで転入超過を維持しているが、2025年の転入超過数は2024年により全てで減少している(図表5)。
 このうち、日本人の転入超過数の減少については、対その他が▲2,786人と最も大きいが、対名古屋圏と対大阪圏を合わせた▲3,813人よりも小さい。一方、外国人の転入超過数の減少については、対その他が▲2,694人とかなり大きく、対名古屋圏と対大阪圏を合わせた▲3,016人に近い水準となっている。これらから、2024年から2025年にかけての東京圏の転入超過数の大幅減少は、日本人は東京圏から大阪圏、名古屋圏中心に分散する一方、外国人は名古屋圏、大阪圏に分散するとともに、同程度の規模で非三大都市圏にも分散しているといえよう。

≪図表5≫対名古屋圏、対大阪圏、対その他における、東京圏の転入超過数

(出典)総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」(各年版)より、SOMPOインスティチュート・プラス作成

5.おわりに

2025年の人口移動から見れば、東京一極集中の進行にやや歯止めがかかったといえる。特に、日本人については東京一極集中の是正を大きな目的とした地方創生開始以前に回帰している。その背景には、名古屋圏や大阪圏に対する転入超過数の減少が大きい。一方、日本人と同規模で転入超過数が減少した外国人では、名古屋圏や大阪圏だけでなく、非三大都市圏にも人口分散が進んでいる。そして、2024年から2025年にかけての人口移動における外国人の変化は三大都市圏全てで大きい。この背景には東京圏を中心に進む大都市の地価高騰や円安を背景とした輸出型製造業の活況などが考えられる。
 また、外国人の人口割合は日本全体では3%程度であるが、これまで見てきたように、人口移動における外国人の存在感は非常に大きい。日本人では少子高齢化が進んでおり、人口移動のメインである若い年齢層が減少しているが、外国人では若い年齢層が多くを占めていることも影響している。今後の人口移動においても外国人の存在感は高まる一方であろう。
 2024年から2025年にかけての人口移動における外国人の変化の背景をさらに詳しく探るべく、次稿「東京都は外国人が転出超過に転じる~ 2025年の人口移動における外国人の存在感② ~」では、都道府県や東京都特別区部等の大都市を巡る人口移動への外国人の影響について考察したい。

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