【Vol.77】3.ポストコロナ時代の都市とモビリティ~ドイツの都市を巡る一考察~

主任研究員 新添 麻衣

I.はじめに

本稿はドイツの都市に焦点を当て、コロナ禍を経た市民のライフスタイルの変化が、ポストコロナの都市とモビリティにいかなる影響を与え得るのかを執筆時点において集められたファクトから展望してみようというものである。

II.COVID-19の流行と移動規制

感染者の発生状況や感染拡大防止策の概要をまとめた。3月中旬から5月上旬にかけての2か月弱が市民に最も厳しい移動制限が課された期間であったが、制限が緩和された現在もソーシャルディスタンスの確保やマスクの着用などの衛生対策は引き続き求められている。

III.withコロナからポストコロナのライフスタイルへ

都市における三大移動需要である就労、買い物、レジャーについて、コロナ禍の影響による市民のライフスタイル変化を追った。就労面では在宅勤務やWeb会議の導入、プライベートではEコマースの利用のほか、近隣住民の買い物代行といった助け合いにより移動需要の低減が認められた。ただし、食料品の購入では市民はすすんで店頭に足を運んでおり、安全性、新鮮さなどへの志向の高まりから、地産地消に貢献したいと考える消費者の増加が認められた。

IV.ポストコロナの都市とモビリティ

前章のライフスタイルの変化を受けて、外出頻度や移動距離が低減した市民が一定存在することが確認された。自転車や徒歩による移動が増加したことにより都市空間の再配分が起きようとしている。短期的には車道など自動車のためのスペースの、長期的には市内中心部の商業地区やオフィス街の土地利用の見直しに繫がりそうである。また、環境政策の観点からマイカーの代替移動手段となるべく、近年多額の資金を投じて拡充が進められている公共交通機関の重要度が低下する可能性がある。

V.おわりに

ポストコロナ社会では市民の活動がバーチャル空間である程度代替されるため、現実の世界での移動需要に変化が起こることは論を俟たない。居住地密着型でコンパクトかつスマートに暮らすことがポストコロナの都市における1つのトレンドとなり、都心部ではまちづくりの変化も予期される。マイカー主軸から公共交通機関を主軸に転換しようとしていたドイツの都市交通政策は見直される可能性がある。

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